今年で連載28年をむかえる歴史ギャグ漫画『風雲児たち』(みなもと太郎・著)をご紹介。現在までに、『風雲児たち』が全20巻、『風雲児たち~幕末編~』が10巻(以後続刊)出ています。
主に幕末をテーマに描き綴られているこの作品。横山光輝『三国志』と同時期・同誌に連載していたこともある、隠れロングセラー作品なのです。
テーマである“幕末”をより深く掘り下げるために、なんと関ヶ原合戦までさかのぼってしまったため、序章の段階で約20年の歳月を要してしまいます。このため、その密度たるや超濃密。一歩間違えると読むほうにも相当な覚悟が必要なのだけど、作者の独特で軽快なギャグセンスのおかげで、ストレスなくサクサク読めます。
主人公の設定はなく、そのときそのときでメインキャラが変わります。徳川家康、石田光成、保科正行、平賀源内、田沼意次、杉田玄白、前野良沢、林子平、高山彦九郎、工藤平助、最上徳内、松平定信、大黒屋光太夫・・・。なんか「幕末と全然関係ない人物ばかりやん」という声も聞こえてきそうな面子ですが、これが後々にズバズバと幕末の複線として生きてきて、歴史の因果関係のおもしろさが堪能できます。
その後もシーボルト、伊能忠敬、遠山金四郎、高野長英、江川太郎左衛門、高島秋帆、鳥居耀蔵、大塩平八郎らが活躍する通称「蘭学鳴動編」、阿部正弘、勝海舟、大村益次郎、シーボルト・イネ、西郷隆盛、大久保利通、佐久間象山、吉田松陰、ジョン万次郎、坂本龍馬、新撰組らが躍動する「風雲児幼年編」~「幕末編」と続きます。
画像はそれぞれ幕末編10巻から引用。
テンポがよく、キレがあり、それでいてマニアックなギャグの数々が作品の間口を全開にしているのだけれど、徹底的な資料の調査による斬新な切り口もこの作品の特徴です。マイナー人物にスポットを当て、また歴史の通説にも平気でメスを入れて行きます。これがいちいち歴史好きのツボを刺激しまくるのです。
歴史好きはもちろん、そうでない人にも、胸をはっておすすめできる作品なり。
現在はリイド社刊の雑誌「COMIC乱」にて連載中。
●『風雲児たち』ワイド版(全20巻/リイド社)
●『風雲児たち幕末編』(10巻以後続刊/リイド社)