「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

妄想性パーソナリティ障害 (3)

2008年11月27日 21時09分36秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
(前の記事からの続き)

 妄想性パーソナリティ障害の人と 付き合うときは、

 適度な距離を保ち、 深い感情移入を 避けることが必要です。

 親密な関係になると、 逆説的な反応が起こってきます。

 トラブルが起きても、 決していさめようとしたり、

 闘おうとしてはいけません。

 頭を下げて、 法的な力に 助けを求めることです。

 関わるのが逃れられない場合は、 中立的な立場を維持し、

 目立たない存在で あり続けるのが賢明でしょう。

 偏執的なエネルギーというものは、

 抵抗勢力がなくなると 案外萎えてしまうものです。

 相手を力によって 支配しようとしても、 心を支配することはできません。

 逆に 相手の気持ちを 尊重しようとすれば、

 求めなくても 周囲から大切にされるでしょう。

 それがこの障害の 回復へのポイントです。


 このタイプの人が示す、 他人の言動の裏まで 読み取ろうとする傾向は、

 他者の気持ちを 鋭敏に察知し、 気配りする能力に通じます。

 実際、 交渉や政治的な駆け引きに 長けていることがあります。

 法曹関係や役人, 管理職, 政治家に向いています。

 妄想性パーソナリティ障害の人の 権力指向は、

 父親に愛されなかった、 あるいは 恐れていたことに由来しています。

 愛という 不確かなものの代わりに、

 秩序や階級, 法というものに 関心を示すのです。

 非常に 反抗的にもなりますが、 強い忠誠心を抱きます。

 仕える相手を 間違わなければ、 ひとつの長所となり、

 厚い信頼を勝ちえます。

 妄想性パーソナリティ障害が回復して、 バランスを取れるようになった

 「妄想性パーソナリティ・スタイル」 については、 下記をご覧ください。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/48153669.html

〔 「パーソナリティ障害」 岡田尊司 (PHP新書) より 〕
 
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妄想性パーソナリティ障害 (2)

2008年11月26日 22時38分28秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
(前の記事からの続き)

 硬さと傷つきやすさも 妄想性パーソナリティ障害の特徴です。

 柔軟性がなく 冗談も通じません。

 些細なことで 攻撃されたと受け取り、

 プライドを傷つけられて 怒りを感じ、 執念深い 怨みを抱きます。

 妄想性パーソナリティ障害の人は 人生の中で必ず、

 人間の恐ろしさというものを体験し、 不信感の原点となる 体験をしています。

 屈辱的な体験や 虐げられた体験が 影響していることも多いのです。

 また、 過度な秘密主義でもあります。

 プライベートなことや 出自に関することに過敏で、

 はっきりした答を避けます。

 愛情を信じられないため、 権力や力で 人間関係を理解しようとします。

 権力者に 妄想性パーソナリティ障害が多い とも言われます。

 絶対権力を手にした 万能感と、

 裏切りによって 失脚する不安が 心を蝕んでしまいます。

 独裁者や ワンマン経営者だけでなく、

 カルト教団の教祖が 妄想性パーソナリティ障害であることもあります。

 麻原彰晃がそうであったと 言われています。

 しかしながら、 このような 危険な人物ばかりではありません。

 多くの 妄想性パーソナリティ障害の人は、 とても律儀で、

 責任感が強く、 きちんとしています。

 強い 「秩序愛」 を持っており、 家族を大事にします。

 しばしば 気分の波を伴い、

 行動的な時期と 意気消沈して反省的になる 時期があります。

 人の目を 過剰に気にし、 評価してくれる人がいると 能力を発揮しますが、

 非難を受けると 迫害されたように 思い詰めてしまいます。

 対人的な不信感から、 人付き合いを避けて 引きこもること少なくありません。

 こうした傷つきやすさは、

 幼いころの不遇な体験に 根ざしていることが多いものです。


〔 「パーソナリティ障害」 岡田尊司 (PHP新書)
  「人格障害の時代」 岡田尊司 (平凡社新書) より 〕

(次の記事に続く)
 
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小泉毅容疑者が 妄想性人格障害? 

2008年11月25日 23時23分15秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 元厚生次官を殺害したという 小泉容疑者が、

 妄想性人格障害だと言う 人がいるようです。

 こういう事件があるたびに、 専門家が直接 診察したわけでもないのに、

 どうしてTVなどで こういうことを軽々しく 公言するのでしょう。

 パーソナリティ障害への偏見を 助長するばかりです。

 本当に発言には 慎重になってほしいと思います。


 この機会に、 妄想性パーソナリティ障害について 書いてみたいと思います。

 妄想性パーソナリティ障害は  「人を信じられない障害」 と言えます。

 常に 裏切られるのではないかという 猜疑心に駆られています。

 彼にとって 人と親しくなるということは、

 疑いと苦しみの 始まりでもあります。

 多くの場合は 生真面目で 引っ込み思案だったりしますが、

 攻撃的な行動に 出てしまうこともあります。

 親しい人を 信用できないため、

 監視したり 行動を全て把握したいという 衝動を覚えます。

 パートナーが いつか裏切るという 確信を持っていて、

 詰問したり、 浮気の証拠をつかもうと 躍起になります。

 その結果 関係が悪くなり、 本当に相手が 離れていってしまったりします。

 愛情と憎しみが 表裏一体で、

 境界性パーソナリティ障害や 自己愛性パーソナリティ障害以上に

 執拗なストーカーになる 場合もあるといいます。

 人口の0.5~2%に 見られるといい、 決して稀なものではありません。

 妄想性パーソナリティ障害の人は 孤独で傷つきやすく、

 人に心を開くのに 臆病です。

 しかし一旦 心を開き始めると 執着し、 相手を独占したくなります。

 根拠の薄い思い込みが 裏切られると、 今度は 逆恨みに向かってしまいます。

 殺すなどと強迫し、 本当に 実行に移されてしまうこともあります。

 自分が 迫害されている被害者だと 思う故に、

 加害的な行動に 出てしまうのです。

(次の記事に続く)

〔 「パーソナリティ障害」 岡田尊司 (PHP新書) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の診断基準 (4)

2008年08月28日 21時30分03秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55685455.html からの続き)

 以上に挙げた 特徴のうち、ひとつやふたつだけなら 思い当たる人もいるでしょう。

 また一時的に、何かのトラブルや 挫折などがあったときには、

 誰でもいくつかが 当てはまるかもしれません。

 しかしそれらは 通常範囲の反応であって
(「ボーダーライン反応」 と呼ばれることもあります)、

 境界性パーソナリティ障害と 診断が付くには、

 以上の項目の5つ以上が 持続していることが必要条件です。

 心の病の多くは、レントゲンなどの検査で 確定することができません。

 そこで止むを得ず、症状の有無のチェックという 診断基準が用いられます。

 ただし その症状も、本当は 何かの症状が中心で、

 他の症状は そこから二次的に出てきていると 考えられるべきでしょう。

 つまり、ひとつひとつの症状は 独立した別個のものではなく、

 何らかの有機的な つながりがあるはずです。

 境界性パーソナリティ障害の中心症状は、

 「見捨てられ不安としがみつき」 である という考えが有力です。

 根本に 「見捨てられ不安としがみつき」 があって、

 その他に 診断項目のいくつかがある というのが本質的でしょう。

 境界性パーソナリティ障害の 行動パターンをイメージ化すると、次のようになります。

「いつも 人から見捨てられるのではないか という不安があり、

 ちょっとしたことで その不安が実現化するという 思いにとらわれてしまい、

 感情が不安定になる。

 自殺のそぶりをしたり キレたりすることで、見捨てられることから 脱しようとする。

 境界性パーソナリティ障害の人にとっては、それまでどんなに 信頼していた人でも、

 自分を見捨てるのではないかと 思った瞬間に、

 一気に価値が下がって 罵倒の対象となる。」

 そして 周囲からは見えにくいですが、

 本人の中では 空虚感やアイデンティティの障害に 常に悩んでいることが多いのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の診断基準 (3)

2008年08月27日 22時20分24秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55671059.html からの続き)

○ 「うつろなこころ」

《慢性的な空虚》

 うつ病に見えることもあり、共通点もあります。

 けれども、性格の強い偏りである 境界性パーソナリティ障害と、

 脳内の化学物質の変調である うつ病とは、別のものと考えられています。

○ 「アイデンティティ障害」

《同一性障害.著名で持続的な 不安定な自己像、または自己感》

 自分の価値観や 目標が定まりにくく、

 例えば 志望する進路や職業が 突然変わるということがあります。

 アイデンティティ障害に 関連したこととして、あるときから突然に、

 親が不当な 育て方をしてきたとして、親を責めることがあります。

 また、アイデンティティ障害は、解離性同一性障害 (多重人格) や

 性同一性障害という形で 現れることもあります。

○ 「一過性“精神病”」

《一過性のストレス関連性の 妄想様観念、または 重篤な解離症状》

 周囲の人に対する 被害妄想が出ることもあります。

 多くは勘繰りに近いもので、

 人との繋がりを 強く求める裏返しとして 解釈できますが、

 ときには 統合失調症かと思われるような 妄想も見られます。

 ただし それはあくまでも一過性で、精神病ではありません。

○ 「対人操作性」

 これは DSM-Ⅳ-TRの診断基準には 入っていませんが、

 境界性パーソナリティ障害の 大きな特徴と言えます。

 場面や相手によって 巧みに言葉を使い分け、虚実も取り混ぜて、

 あたかも 自分が被害者であるような 印象を、いや確信を 持たせるものです。

 「対人操作性」 があまりにも巧妙なため、周囲は 操作されていることに気付かず、

 その集団がガタガタになって 初めて分かるということも 少なくありません。

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55695997.html
 
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境界性パーソナリティ障害の診断基準 (2)

2008年08月26日 20時39分31秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55659571.html からの続き)

○ 「めくるめく信頼と罵倒」

《理想化とこき下ろしとの 両極端を揺れ動くことによって 特徴づけられる、

 不安定で激しい人間関係》

 相手を無条件で 尊敬するかと思うと、

 手のひらを返したように 罵倒するということが繰り返されます。

 「対人評価の極端な変動」 と 言うこともできます。

 境界性パーソナリティ障害の人は 初対面の人に対して、

 1~2回会っただけで 全幅の尊敬を 抱いてしまうことがあります。

 その人を理想化し、そばにいてほしいという 強い欲求が生まれます。

 けれども 常にそばにいることなど できるはずがないので、

 境界性パーソナリティ障害の人は 見捨てられ不安が 急激に強くなってしまうのです。

 すると、それまでの理想化が 一気に崩れ落ちて、攻撃や罵倒という 言動になります。

○ 「ムードスイング」

《顕著な気分反応性による 感情不安定性

(通常は2~3時間持続し、2~3日以上 持続することはまれな、

 エピソード的に起こる 強い不快気分,いらだたしさ,または不安) 》

 「ムード」 は気分・感情、「スイング」 は揺れです。

 感情の変化を意味する 日常用語的な 「躁うつ」 と 区別するために、

 この言葉を使います。

 感情の不安定さは、境界性パーソナリティ障害の 大きな特徴です。

 躁うつ病と 間違われることもありますが、一番大きな違いは、

 気分が突然 変動しているように見えても、

 そのきっかけには 「見捨てられ不安」 があることです。

 もうひとつの違いは 持続時間です。

 躁うつ病の気分変動は、週あるいは 月の単位ですが、

 境界性パーソナリティ障害では 2~3時間から、長くても2~3日です。

○ 「キレる」

《不適切で激しい怒り、または 怒りの制御の困難

(しばしば癇癪を起こす,いつも怒っている,取っ組み合いの喧嘩を繰り返す) 》

 境界性パーソナリティ障害の 不安定な感情は、

 しばしば怒りの爆発という 形を取ります。

 家族など身近な人に 向けられることもあれば、

 執拗なクレーマーのような 形を取ることもあります。

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55685455.html
 
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境界性パーソナリティ障害の診断基準 (1)

2008年08月25日 22時02分38秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

 林公一 (保健同人社) 」 で、

 DSM-Ⅳ-TRの BPD診断基準を、簡易な言葉で言い換えて 説明しています。

 《  》 内に DSM-Ⅳ-TRの診断基準の 文言を記しながら、

 それを紹介します。
 

○ 「見捨てられ不安と しがみつき」

《現実に、または想像の中で、見捨てられることを避けようとする、

 なりふり構わない努力》

 「見捨てられ不安」 は、

 境界性パーソナリティ障害の 最も中心的な 症状と言えます。

 境界性パーソナリティ障害の 多くの症状は、

 この見捨てられ不安が 元になっていると考えられます。

 境界性パーソナリティ障害の人は、人との繋がりを 強く求めていますが、

 それが断たれることは、

 “誰もいない 広大な砂漠に、たった一人で 放り出されたような感覚”

 と表現されます。

 「しがみつき」 は、この不安から 逃れるための行動です。

○ 「自殺リピーター」

《自殺の行動,そぶり,脅し,または 自傷行為の繰り返し》

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 リストカット,過量服薬など、あらゆる形で 自傷行為を繰り返します。

 「自殺リピーター」 は、

 境界性パーソナリティ障害の症状で 最も目立つものかもしれません。

 周囲の気を引くための 狂言自殺に見えることも 多いですが、

 自分を傷つけることで 落ち着いたり、生を実感するなど、

 自殺リピーターの心理は 複雑です。

 なお、自殺は 素振りに見えることが 大部分ですが、

 実際に命を落とすことも 10%くらいあります。

○ 「自己破壊的行為」

《自己を傷つける可能性のある 衝動性で、少なくとも ふたつの領域にわたるもの

(浪費,性行為,物質乱用,無謀な運転,むちゃ食い)》

 薬物依存,セックス依存など、やめずに続ければ 破滅に繋がりかねない行為を、

 どうしてもやめられないことです。

 アルコール依存,ギャンブル依存,過食,浪費(買い物依存),

 極めて危険なスポーツへの耽溺 などもあります。

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55671059.html
 
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パーソナリティ障害の自己治癒援助 (3)

2008年08月19日 21時54分17秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55569804.html からの続き)

 2冊目は、「境界を乗り越える -- 

 境界性パーソナリティ障害からの 回復プログラム」 (パクストン) です。

 これはシンプルな 自己学習プログラムです。

 毎日検討される 項目を記します。

○自分を大切にすること

・自傷行為をしないか

・自殺や自傷のことを 考えないか

○対人関係で 境界を構築すること

・対人関係での問題がないか

・人が去るのを 引き止めないか,見捨てられる恐怖がないか

○同一性を保つこと

・穏やかな中庸を わきまえた活動をするか

・自分の感覚が保持できるか

○回復力

・気分が穏やかで 安定しており、怒りをコントロールできるか

・生活の質を高める 対処法の訓練をする
 

 以上の中で 問題があるものに対して、対策を講じることが 課題です。

 「自分を大切にすること」 に問題があれば、

 自傷行為の要因の中から 自分に当てはまるものを選び、

 それに対処したり、周囲の援助を求めたりします。

 「境界を構築すること」 では、対人関係で 境界を明確にしながら、

 周りの人と関わって、親密さを確認したり、見捨てられる不安に 対応したりします。

 「同一性を保つこと」 では、

 自分をコントロールできる力があると 信じることが重要です。

 自分や人を信じないことの デメリットが指摘され、それを乗り越えるために、

 自分のありのままを 受け入れること,また 他者への信頼が 必要だと説かれます。

 さらに、悪いイメージを消す訓練や、安全な場所をイメージする 訓練をします。

 それらは、「周囲に潜む (と妄想される) 短剣から

 自分を守る 魔法のマントのイメージ」 だといいます。

 「回復力」 では、強い感情への 対処法が紹介されています。

 以上 これらの課題に対して、どのように対応したかを記す

 「境界を乗り越える日誌」 を 毎日を付けることが 勧められています。

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
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パーソナリティ障害の自己治癒援助 (2)

2008年08月18日 21時08分02秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55557192.html からの続き)

 「怒れるこころ -- 境界性障害と嗜癖性障害の 克服のために」 に

 記されている、回復のための技法です。

○心を安らげる,自助技能を使う

・リラックスする (ゆっくりと深く呼吸する などの呼吸法)

・ストレスを 葛藤なしに客観視 (視覚化) する

・ストレスに勝つ 自分をイメージする

・実行して実績を上げる

○自分を肯定する,自己嫌悪から逃れる

 次のようなスローガンを唱える (自分で スローガンを作ってもよい)

・私は 自分の生き方を 咎められることはない

・私は 自分を変える責任がある

・私は 自分の内面の苦しみに 触れることができると 気分がよくなる

・自分は善良だ,きっとうまくいく

○コントロールの決意

・もう危険なことをしない と決意する

○技能の強化

・上記の技能を 繰り返して強化する

○自分と他者に 公平であること

・自分と他者を 公平に扱う

・自分を大切にする

・他者の依頼をうまく断って 自分を守る練習をする

○回復への決意

・自分は絶対あきらめない と決心する
 

 対人関係の技法は、次のことが 取り上げられています。

・自分と他者に 公平であること

・対人関係をコントロールされる 恐怖に着目する

・対人関係における 行動,感情,要望の三つを 統合して表明する

 また、ライフスタイルの修復も 勧められています。

・経済状態の改善

・運転免許の取得

・体の健康の保持

・友人や愛している人との 関係改善

・職業で成果を挙げること

・指導者,サポートしてくれる人を 集める

(続く)

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
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パーソナリティ障害の自己治癒援助 (1)

2008年08月17日 21時41分05秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) で、

 自己治癒を援助する 本を紹介しています。

 BPDの治療に 最も強い影響力を持つのは、

 患者本人であるという性質から 生まれてきたものだと述べています。

 そのうち2冊を ここに紹介してみます。

(あくまでも 参考のためのものです。

 ここに書く 簡単な抜粋だけをもとに、個人で学習を実施することは、

 効果がないだけなら まだしも、逆効果になっても 責任が持てませんので。)
 

 1冊目は、「怒れるこころ -- 境界性障害と嗜癖性障害の 克服のために」

 (サントロ,コーエン) です。

 この本は、BPDの原因は 生育過程の問題だとしています。

 子供の発達を妨げる 養育環境で、感情的な苦痛が繰り返され、

 成長後に 否定的な考え方や 不適切な行動が 生じるとされます。

 BPDの病理は、子供のときの外傷体験 (トラウマ) に、

 生まれつきの弱さが 加わったものだとしています。

 そこから回復するために、

 自己嫌悪の原因である トラウマを思い起こすことが 求められています。

 トラウマを否認していると 自己欺瞞に陥ってしまうので、

 辛くても 真実を受け入れることの 必要性が説かれます。

 次に、トラウマが 自分にどのような影響を 及ぼしてきたか、

 そして そのときの体験に どれだけ自分が捕らわれてきたかを 吟味します。

 影響の大きさが 認識されて初めて、そこから自由になり、回復に向かい、

 周囲とも 折り合っていけるといいます。

 そうすると、自分を傷つけた人たちは、悪い人ではなく、

 むしろ 自分と同じような被害者だと 考えられるようになっていきます。

 これらを学習するための、以下のような 技法を挙げています。

(続く)

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
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BPDの人の身体接触欲求 (2)

2008年08月16日 21時27分16秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55533836.html からの続き)

 BPD患者が 治療の場面で 身体接触欲求を訴えたとき、

 治療者はそれに 直接応える代わりに、

 その欲求の背後にある 辛い気持ちを癒す 手伝いをすることが求められるでしょう。

 患者が 内面の空虚感を埋め合わせるために この欲求が出てくるとすれば、

 他の有意義な方法で 埋め合わせを探していくのです。

 例えば 治療のなかで、身体接触欲求の代わりに

 「自分は何者か、何ができるか」 などの 同一性の葛藤が出てくれば、

 自分のイメージや位置づけ,他者の意味などを 検討していきます。

 自分のペースを 取り戻せるようになれば、徐々に安定していき、

 身体接触欲求も訴えなくなって、社会的に自立していくこともできます。

 治療者が 患者の身体接触欲求に応えて、

 手を握ったり 母親のように抱いたりすることは、

 治療的な意味がある一方、多くの異論もあります。

 身体接触によって 患者は一時的に満足し、その快感におぼれるため、

 病因を探って改善することが 妨げられるといいます。

 このようなジレンマは、重症の患者の場合 特に問題になります。

 欲求を制止すると、人間的な暖かさなど 必要な要素が失われてしまうので、

 治療の制限設定はかえって 治療を妨害することもあります。

 従って、制限を設定することと 欲求を満たすことの バランスが必要です。

 そのジレンマを乗り越えるために、共感などの 感情的な対応も重視されます。

 子供のレベルになっている 患者に対して、

 理性的な解釈をする前に 感情的な受容をします。

 患者の現実感の乏しさや 孤独感を認め、共感することによって、

 内的世界の欠損に対応する きっかけがつかめます。

 そうして その先の、理性的な交流に 引き継いでいきます。

 患者と治療者との 現実味ある関わりを育んで、

 患者が 「対象を発見して、自己を見いだす」 ことを 実現していくのです。

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
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BPDの人の身体接触欲求 (1)

2008年08月15日 21時54分16秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) に、

 BPDの人の 身体接触欲求について述べられています。

 ボーダーの人は 治療者や身近な人に対して、

 身体接触欲求を訴える 場合があるといいます。

 心子も 主治医に陽性転移を起こしたとき、それがありました。

 身体接触欲求は特に 女性に多く見られるそうです。

 BPDの身体接触欲求は、

 発達早期の依存欲求が 満たされなかったことによると 考えられるでしょう。

 身体接触欲求の背景には、患者の内的状況があります。

 彼らは孤独や空虚感に 苦しめられているのです。

 空虚感は 内的な欠損感が問題です。

 「抱いてほしい」 と訴える患者には、

 次のような 対人関係の特徴が あるということです。

・対人関係で 不信感や被害念慮を抱きやすいが、強く対象を求める。

・周囲への訴えや要求が 強烈で切実。

・対人関係が不安定で、安定した親子関係や 友人関係の体験がない。
 

 接触感覚のなかでは、性的な感覚が 特に問題になるでしょう。

 性的感覚は自己の喪失、自己の感覚の危機を もたらす可能性があります。

 身体接触欲求、空虚感を満たすために 行なわれる性的乱脈は、

 プラスの効果を 生じにくいものです。

 苦しみを一時的に 棚上げにする以上の 効果はありません。

 発達論的には、身体接触は自立の停滞を 意味することがあります。

 母親への接触欲求が 幼児の自立の 反動となる場合です。
 

 接触体験は、自らの皮膚 (外界との境界) を 感じることによって、

 自他の境界や 自己の内面を再確認する 効果が期待できます。

 反対に、相手から 自他の境界を侵害される 恐れもあります。

 特に 境界があいまいな BPDの人の場合、

 接触体験によって 自他境界が不明確になり、

 自分が見失われる恐怖が 起きやすくなります。

 身体接触に対応するには、とりわけ慎重さが求められます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55544581.html

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
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ボーダー患者による 著作の特徴 (2)

2008年08月10日 21時31分26秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55464694.html からの続き)

 一方、拙著 「境界に生きた心子」 の読者から いただく文面や、

 ネットで見られる ボーダーの人の書き込みなどは、とても苦しみに満ちて、

 どうしていいか分からないと 困惑されたものが非常に多くあります。

 それに対して 前記の著作は、人生の重荷を負うといった 悲壮さがなく、

 発病は自分自身の 生き方やあり方に 結びついているものであり、

 必然的に陥った 人生の苦境として捉えられていると、林氏は述べています。

 これは 著者が回復してから 書かれたものであるということも、

 大きく関わっているのではないでしょうか。

 十二分に自己を省みて、客観的な視点で

 過去を見つめることが できるようになっていたのではないかと思います。

 「思春期病棟の少女たち」 は 著者の退院後 25年を経ており、

 郷愁などを持って 描かれたかもしれないとも推測されます。

 なお、僕が 「境界に生きた心子」 を書いた際には、

 一般に理解されにくい ボーダーの人の 心の中の苦しみを、

 読者に理解してほしいという 大きな目的のために、

 それを強調して 描いたところがありました。

 心子の苦悩や深刻さは、読んだ人にも 痛いほど伝わっているようです。

 もっとも僕自身も、彼女と死別した直後は、まだまだ 生々しい苦節を引きずっており、

 人に伝わるものが 書けるようになるまでには、3年ほどかかったのでした。

〔参考文献: 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) 〕
 
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ボーダー患者による 著作の特徴 (1)

2008年08月09日 22時41分20秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) の中で、

 ボーダー患者自身が執筆した 著作について述べられています。

 映画 「17歳のカルテ」 の原作となった

 「思春期病棟の少女たち」 スザンナ・ケイスン (草思社) や、

 「魂 (こころ) の穴」 山口麗子 (文芸社) など、

 5冊の著書を 例に挙げて検討したものです。

 これらの本の 記述の特徴として、著者の体験の独特さや 病理性が強調されておらず、

 自身の経験を病的なものと あまり見ていないと言っています。

 他の精神病患者が、自らの特異な体験を 書き留める目的で 書かれた本とは、

 対照的だということです。

 ボーダーの著者の記述には 辛さや苦しみの感覚が乏しく、

 深刻さを感じさせない 淡々とした表現が しばしば見られるとしています。

 自分の問題行動や 病的な状態を、

 生活の延長線上 -- 人生の流れの中に 位置づけているように感じられると。

 「魂の穴」 は 僕も読みましたが、

 夫の浮気のシーンを 目撃するなど 衝撃的な体験などのわりに、

 確かに インパクトが薄い印象を 持ったことを覚えています。

 これは 林氏が述べているように、

 離人感や脱現実感が 生じていた可能性も 影響しているかも知れないとも思えます。

 精神病や身体疾患の 患者の闘病記は、

 病にいかに立ち向かったか という姿勢で書かれているのに対し、

 ボーダーの人の著作は、病気と闘う構えが 前面に出ることは少ないといいます。

 それは病を 異物と見るのではなく、自分の振る舞いとして 身近に体験され、

 自分自身の心の問題だと 捉えているからではないかと 記されています。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55475839.html

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害と 解離性同一性障害

2008年07月12日 20時59分23秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 境界性パーソナリティ障害と 解離性同一性障害 (DID) は、

 深い関連性があると 言われています。

 DIDがBPDを 合併する比率は 23~70%とされており、

 心子も広義のDIDであると 解釈されました。

 DIDでは、防衛機制としての解離 〔*注〕 と、

 BPDの 「分裂機制」 (スプリッティング) 〔*注〕 とが、

 様々なレベルで 作用しています。

 両者は 別の全く概念ですが、

 解離と分裂の間には 連続性があると指摘されています。

〔*注: 防衛機制としての解離というのは、耐えがたい苦痛から 逃れるために、

 その苦痛から 意識を切り離してしまい、別の意識 (人格) が作られることです。

 分裂 (スプリッティング) は、100か0か、白か黒かしかない、

 中間がないという BPDの極端な二分思考です。〕

 BPDでも、DIDに類似した現象として、

 「かのような人格」 (As if personality) が記されています。

 その場に合わせて 様々な人格を 無意識に演じわける、BPDの特徴です。

 DIDとBPDは、ともに 人格の統合性に 問題がある病態ですから、

 両者の間に 近縁性があるのは 当然といえるかもしれません。

 
 解離状態の治療は、抑圧された記憶を 回復することが主眼です。

 そのために、外傷体験を意識化する精神療法,

 抑圧を解除して 記憶を呼び戻す催眠療法,睡眠薬や抗不安薬などが 行なわれます。

 その次に、蘇った記憶や外傷体験を 人格に再統合し、

 外傷体験にまつわる 感情の反応を 受け止める作業が必要となります。

 心子も 主治医の森本先生から、同様の治療が必要だと 言われていました。

 例えば、以下のようなモデルがあります。

1.交代人格と それぞれよい関係を結び、安全感を育む

2.外傷体験を回想し、それに対する 悲哀の作業を進める

3.交代人格に代表される 人格の様々な側面を 統合する

 自分の心の状態を把握し、自分自身のあり方を 見つめるという、

 BPDに準じた治療を することができます。

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
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