小笠原諸島・母島ジャイアン ブログ  -GIAN'S HAPPY BLOG-小笠原諸島・母島で自然農&便利屋

小笠原諸島・母島で持続可能な暮らしを目指しています。

その中や暮らしで学んだことを紹介したいと思います♪

オナガミズナギドリ巣立ちシーズン開始!!

2022年11月20日 | 鳥獣保護員 活動
■そろそろ秋だし、準備でもしようかなぁと思っていたら、
突然、夕方に電話が何度も何度も鳴り響きました!!
「ジャイアン、鳥!!」
おお!
今年は11/16開始と少し早いじゃないか!
「オッケー!今向かいます!」
段ボールを用意して、さっそくその鳥を保護しました。

小笠原に秋の訪れを感じさせる風物詩。
そう、オナガミズナギドリの巣立ちシーズンの始まりです☆

この記事を書いている今日も、すでに5羽のオナガミズナギドリを保護しました。

こちらは停まっている車の下にちょこんと座っているオナガミズナギドリ。
気付かずに踏まれる前に通報していただいて助かりました!!


■さてさて、そんなオナガミズナギドリさん。
カツオドリと並んで小笠原を代表する海鳥の一種です。
ははじま丸航路でもカツオドリと並んでよく見られます(真冬以外)。

日本では小笠原諸島のみに繁殖していて(外国の太平洋の島々には沢山います)、
母島列島では南崎半島部や属島(無人島)で多数繁殖しています。

この11月中旬がこの鳥さんの巣立ちシーズン。

巣穴の中で育って初めて飛んだ時に、
まだまだ経験の浅い巣立ち個体が人間の集落に不時着する場合が多いです。

元々灯りに向かってしまう習性があるようで、
集落の灯りに寄せられて、道路などに不時着します。
場合によっては電線や建物に激突して亡くなってしまう場合もあります。

これは学校前の電柱に激突して亡くなってしまったケースです。

長い羽根でグライダーのように飛ぶのは大得意なのですが、
急旋回が苦手で、よけきれない場合があります。

また、そのままふわっと道路に着陸して、
いつでも飛べるのにボーっとしていたりします。

そうしていると車に轢かれたり、
ネコに襲われたりしてしまうので、
一晩段ボールに保護して、
翌朝に海で飛ばす活動をしています。

父島では通称アイボこと小笠原自然文化研究所
母島では東京都鳥獣保護推進管理員の僕と環境省母島事務所のメンバー、さらには都レンジャー、
日中の窓口として母島観光協会が協力してくれています!
本当にありがとうございます☆


今年は11/16から毎日保護、放鳥をしています。
時々、島の子供達や観光の方、
友人などに出逢ったり声かけたりで、
一緒に放鳥をしたりします。

この機会になんと50m以上も海に潜ってしまう、
小笠原ならではの海鳥の存在を知ってもらいたいです(#^.^#)

人の住んでいない世界では、
こうした影響は関係がないのですが、
人がこの大自然にお邪魔して暮らしているので、
出来る限り人間の影響で野生動物が命を落とすのを防げればと思っています。


■先日、「24時間チャレンジ八丈太鼓」というイベントがありました。
これはもう13回も続いているみたいなのですが、
母島の小笠原太鼓同好会が参加するのはオンラインが発達したコロナ禍の2年前からだったと思います。

いつもこの11月中旬に行われていて、
見事オナガミズナギドリの巣立ち期と合っていて、
今年もなんと4羽のオナガミズナギドリが
素晴らしい太鼓を聴きに降りてきました(^^♪

4羽とも無事に保護されて、翌朝に無事に野生復帰しました。
良かった♡

この太鼓イベントは去年も小笠原は入港日に実施されていて、数羽のミズナギドリを保護した記憶があります(#^.^#)
八丈の友人がコメントをくれたり、
逆にうちの娘と同い年の子がカッコよく叩いていたりで、
700㎞くらい離れているのに、なんだか不思議な時代だなぁと感じていました♪


■オナガミズナギドリ、今日の段階で今シーズン23羽を保護しています。
多いときは1シーズンに200羽近くを保護したこともあり、
まだまだ始まったばかりなので、
僕にとってお酒の飲めない休肝シーズンにもなります(#^.^#)

何羽も放鳥していて、不思議に思うことがあります。

大体の飛べる野鳥は、
箱から出した瞬間に一目散に飛び去って行くのですが、
ミズナギドリの仲間は、何故かボーっとしていたり、いつまでも飛ばない場合があります。

別に羽を痛めている訳でもないのに、です。

野生動物なのに、なんかどこか抜けている感が否めなくて、
そこがまたなんだか愛らしいミズナギドリちゃんです。

基本水面や地面を助走して離陸するのですが、
風の向きとタイミングがマッチしていると、
その場で一気に飛び上がります。

でもこんなに飛ぶまでに結構、目の前でボーっとしていたりするんです(#^.^#)

場合によっては海面をず~っと泳いでいって、
岩場に隠れる子もいます。

その場合は犬散歩中の飼い主が見つけて、
通報して来てくれたりします。


■僕は母島で2013年から東京都鳥獣保護員をしていて、
島のみんなはだいたい鳥で何かあると、僕に連絡が来るようになっています。
本当にありがたいことです(#^.^#)

僕以上にみんなが真剣に取り組んでくれるので、
いつも色んな学びがあります。

島の子供たちは匂いでミズナギドリを見つけますからね☆

匂いと言えば、
ミズナギドリの仲間は鳥にしては珍しく嗅覚に優れているそうで、
集団営巣地(コロニー)などで自分の子供を見つけるのに、
匂いがかなり重要な役目を果たしているそうです。

そして24時間、繁殖のとき以外はずっと海上で暮らしているタイプなので、
もちろん飲む水分は真水ではなく、海水。
保護してお世話する時も飲ませる水分は基本海水です。

ウミガメの涙と同様に、
ミズナギドリは鼻の穴から鼻水のように塩分を排出するそうです。

まさに海に特化した鳥ですね!
一応巣穴も掘れるので、
一見お間抜けそうに見えて、
意外と陸、海、空、地中とオールマイティ―に使えるすごい鳥なんです♪


ミズナギドリの巣立ちが終わったら、
今度は父島母島両島のガジュマルのイリュミネーションが点灯されます。
(ミズナギドリの巣立ちを配慮してもらっています)

そう、小笠原のクリスマスは
ミズナギドリが運んでくれているかも知れません♡

それまではこうして夜間や早朝に、
ふと足元にミズナギドリがいるかも知れません。

そんな時は村内の掲示板などに連絡先を書いてありますので、
飛べない鳥を見かけたら、日中、夜間問わずにご連絡を下さい!!



■最後にオナガミズナギドリの放鳥の様子を見て、
テイクオフ!ってことは?と思い、
Instagramのリール動画でトップガンのテーマ曲の音源を探したら、ありました!
合わせてみると、なかなか合っているいると思いませんか?
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第13回 24時間チャレンジ八丈太鼓 Part2
母島は03:45:53からです☆

ミズナギドリが運ぶ、島のクリスマス♪

2016年12月17日 | 鳥獣保護員 活動
■12月中旬、ようやく11月中旬から続いていたミズナギドリの不時着が落ち着きました。
今年は約50羽のミズナギドリを保護し、そのほとんどを無事に放鳥する事が出来ました。

例年だとほとんどが小笠原を代表する海鳥、オナガミズナギドリが不時着します。

国内では小笠原諸島でのみ繁殖が確認されている、
「ザ・小笠原のミズナギドリ」の代名詞ですね(笑)。

多い年では200羽近くシーズンで保護したこともあります。


しかし、今年はなんとシーズン開始頃はオオミズナギドリの方が多く不時着しました!

オナガミズナギドリに比べて、一回り大きく、頭部の霜降り模様が特徴です☆

オオミズナギドリは現在、小笠原諸島では繁殖が確認されていません。
(石門の鍾乳洞からは多くのオオミズナギドリの骨が出てきているので、
昔はかなりの数が繁殖していたと考えられている)

しかも、父島ではほとんど不時着せず、母島で約20羽も保護しました!

伊豆諸島の御蔵島が一番近い繁殖地なのですが、
それなら父島でももっと不時着するはず…。

それなのに母島が圧倒的に不時着数が多いということは…
もしかしたら母島の属島で繁殖しだしていて、個体数が増えてきているのかも知れません!


う~ん、自然の流れや力というものは、
人が届かないところで確実に作用し、常に流動的に息吹いている…
そんな神秘を感じさせてくれました♪



■そして、集落にはミズナギドリが運ぶ島のポスターを張りました。

オナガミズナギドリの巣立ちがほぼおわりました!!
不時着鳥の回収や連絡、ライトダウンに
ご協力くださったみなさま、ありがとうございました♪

【母島列島のオナガミズナギドリは
鰹鳥島や南崎で 子育てをします。

夏に産卵し、冬にヒナ鳥が巣立ちます。

光に飛び込む習性があり、
特に巣立ち時には、街灯りに迷い、不時着します。

夜間回収やライトダウンでヒナ鳥が救われています。

今年は50羽程度の不時着鳥を保護・回収することができました。
残念ながら激突の影響で命を落とした個体もいます。

すべての巣立ちが終わるのは12月中旬から下旬。

小笠原のクリスマスはオナガミズナギドリが
運んでくるのかもしれません♪】

ミズナギドリの季節

2016年11月05日 | 鳥獣保護員 活動
■小笠原の秋と言えば、ミズナギドリ類の不時着があります。

ミズナギドリは繁殖以外をずっと海の上で過ごす海鳥です。

※写真はシロハラミズナギドリです。

巣立ったばかりのミズナギドリが街の明かりに寄せられて、
集落に不時着します。

本来であれば、そのまま翌朝には沖に飛んでいくのですが、
現実には車に轢かれたり、
ネコに襲われたりしてしまいます。
野生動物が人為的な理由で命を落とさないように、
この時期は夜間は保護し、
翌朝放鳥を行っています。


■今回の保護個体はアナドリさんです。

しかも頭部に産毛が残っているモヒカンちゃん。

低気圧が接近し、随分と荒れた日の夕方に集落で保護されてきました。
天気が落ち着く翌朝に放鳥を試みます。


凛々しく立つのですが、
なかなか飛んで行ってくれません。

登校前の次女も時間が迫り、
学校に行ってしまいました。


意を決して海に出たものの、
少ししたら羽のはっ水がうまくいかず、
溺れてしまい、再回収…

ずっと海の上で暮らす海鳥にとって羽のはっ水は特に大事なファクターです。
この個体はまだ巣立てる状態ではなかったのですが、
荒天で飛んできてしまったと予想されます。

水没による体温の低下を防ぐためにドライヤーで乾燥し、
翌朝リトライ。

うん、今度ははっ水もうまくいってる。
潜るし、いい感じだ。

30分くらい岸と水面と海中と羽繕いを繰り返し、
ようやく離陸し、
無事に沖に飛んでいきました。

めでたしめでたし。


■他には母島では割と珍しいカワウが来ていました!

なぜ海の上にウミウではなく、カワウなのかと僕も含め、多くの人が思いますが、
どうやら分布の違いがあろようです。

見た目的には良く似ていて、
口元後ろの形が小さく三角なのがウミウ。
今回の様に大きく四角なのがカワウだそうです。

東京湾でよく見るウはほとんどがカワウ。
北海道でよく見るのはほとんどがウミウ。

日本の鵜飼で知られて使われるのはウミウ。
中国の鵜飼で知られて使われるのはカワウ。


島のカツオドリたちと何やら話をしています。
お互い、渡りの旅の話でもしているのでしょうか?

眺めていると、すぐに海中から出てくるカツオドリと違い、
15秒くらいは海中に潜って魚を捕まえているカワウ。
さすがですね~

■また集落内でオガサワラカワラヒワの若鶏を発見!!
と思ったら、これは渡り鳥のマヒワだそうです!(11/12訂正)

母島ではオガサワラカワラヒワより珍しい渡り鳥のマヒワ☆

ちなみにオガサワラカワラヒワの♂はこちらです。

似ていますが、やはり決定的なのは頭部の黒い模様ですね。

オガサワラカワラヒワは現在のところ固有亜種で
母島列島と火山列島(南硫黄島など)でのみ繁殖が確認されています。

小さくて存在が地味ですが、
実は今現在小笠原で最も絶滅が心配されている鳥のひとつです!

母島列島の属島で繁殖し、
年々母島で見られる頻度と数が減っています。

日本本土のカワラヒワより、
ハワイに系統が近いらしいカワラヒワ。
現在は固有亜種ですが、
近い将来固有種に変わるかもしれないそうです。

人が持ち込んだネコやネズミの影響で、
人知れず絶滅にひんしている野生の生き物が存在する。

大自然は時に人の暮らしを根こそぎ奪い取るほどの猛威を振るうときもあるし、
こんなにも儚く、不安定な側面も持ち合わせています。

何が正解かもわからないし、
何ができるかも模索中ですが、
いつも沢山の感動と癒し、
そしてパワーをくれるこの大自然になにか恩返しができないか考えています。

釣り糸の絡んだカモメの受難

2016年02月06日 | 鳥獣保護員 活動
■母島・沖港周辺に久々にカモメが飛来してきました。
たぶんセグロカモメの幼鳥か冬羽だと思います。

でもよく見ると片足が変色し、釣り糸が絡まっています。

小学年生の子供たちがカモメの異常に気付いて、
大人経由で連絡をくれました。
どうもありがとう!

何度か捕獲して除去しようと試みましたが、
鳥自身は片足は壊死していますが、
飛翔はできて飛んで逃げていきました。
(鳥獣保護員は捕獲が認められています)

その後、夜遅くに漁港で捕獲することができました。


足の骨が露出するほど釣り糸が食い込んでいます。


なんとか糸は除去しましたが、壊死した足はもう2度と戻りません。


その後は餌もよく食べてくれました。

保護した鳥は自力で食べれない場合が多く、
強制給餌の場合が多いですが、
こうして自力で食べてくれると鳥に対してもストレスがなくて理想的です。

そのまま回復するかと思いましたが、
残念なことに翌日、落鳥してしまいました。

小笠原で保護された、
人の手に捕まるほど衰弱してしまった渡り鳥は
ほとんどが落鳥してしまいます。

極度の衰弱と脱水、
餓死寸前の状態ではもう栄養を吸収できる状態ではないからです。

今回は更に足の傷からの感染が疑われました。

■釣り人のポイ捨てや
切れてしまってそのままの糸は
なかなか自然に還らずに
こうして少なからず野生動物に影響を与えています。
とても悲しいことです。

後日詳しく報告しますが、
母島の東港でクジラが漁具に絡まり、
救出するという事例もありました。

※人が関わるには命がけのとても危険な状況です!
同じような場面に遭遇したら、勝手に対応せず、
OWA(小笠原ホエールウォッチング協会)等、関係機関に連絡をして下さい!


人の暮らしが自然界に与える影響を考えさせられます。

少しでも人為的な理由で野生動物が命を落とすのを減らせればと考えています。

年数回、地域の団体主催で海岸清掃が行われます。


こうした活動はとても大切に思います。


大勢の参加者のお陰で北港と南京浜があっという間に綺麗になりました。

本当にお疲れ様でした!


綺麗な夕日を眺めながら、人と自然の関わりを思います。


樹にはおサルさんもいましたが(笑)。

夕焼けが夜の帳に呑み込まれていく様を家族と過ごす。
お金では買えない幸せなひとときです♡

いつも思うことですが、
大自然に比べて人は本当にちっぽけだと思います。


でもそんなちっぽけな人間は
自然環境を根底から覆してしまうほどの
怖さを秘めています。

奢らず、
謙虚に、
共に生きたいものです☆


母島 渡り鳥が増えてきました!!

2015年11月05日 | 鳥獣保護員 活動
■ここ1ヶ月、なかなかブログを更新することができませんでした。
様々なイベントで忙しかったり、
プライベートで色々あり、記事を書く気になれなかったり…

そうこうしている間に渡り鳥たちがどんどん増えて来ました。
鳥達の頑張りに触発されて、ぼちぼち久々の記事を書こうと思います☆


■こちらは台風接近直前に保護したヒドリガモ(アメリカヒドリかも?)。

長距離の渡りで疲労して飛べなくなっており、
路上で保護しました。

2日間、餌をよく食べて、台風の風が落ち着いてきたので野外に放鳥しました。
無事に生き延びて、また渡って巡ってほしいと思います。


背中の筋が特徴的なタシギ。


母島で見るのはめずらしいオオハシシギ。
シギ・チドリの類はよく似ていて判別に苦労します!


今年は珍しくユリカモメが母島にやってきました♪


■こちらは母島のとある水場で溺れかけていたキンクロハジロ 幼鳥(スズガモ幼鳥かも)。

保護してみたものの、すごいことに、
ボサボサで飛べなくなっていた羽を1晩で復活させた羽繕い。

あの大きな嘴で、どうやって器用に修正するのでしょう?

この写真、同一個体とは思えませんよね~
凄い表情の差があります(笑)。


その後、自ら箱を飛び出すほど元気になり、無事に放鳥に成功し野生に還りました☆


オオバンも見かけるようになりました。
足の指の水かきがとても特徴的な鳥です。
オオバンはカモというよりクイナの仲間です。

■少し前、とある畑のキュウリネットに羽が絡まって動けなくなっているアマサギがいると通報がありました。


その後、保護して無事放鳥することができました。

サギ類やカツオドリは保護する時、こちらの目を狙って突いてきます。
僕は普段眼鏡をしているので少しマシですが、保護する立場の皆さんは注意が必要です。


この表情、何が言いたいのかな~(笑)。


無事に飛んで行くことができました。

保護から放鳥まで見守ってくれていた次女も応援します♡

アマサギは現在10羽くらい見かけますね!



■他にはちゃんと冠羽があるキンクロハジロ。


オナガガモ♀


ヒドリガモもたくさん見かけます。


川に来ているカモ(ヒドリガモとシマアジ)をスケッチする土曜日午後の次女☆
「カモかわいい♡」
お陰で畑にローゼル収穫するのが遅れ、脇浜で遊ぶ時間が少なくなっちゃったけど、こんな時間も幸せです♪


■それにしてもどうして鳥は大きなリスクを背負ってまで渡ることを選択するのでしょう?
キョクアジサシなんて、北極から南極まで渡ってしまう鳥までいます。
(ハト位の大きさで1年で北極から南極に渡るのです!!飛行距離は4万km!!!)


こちらはセグロアジサシの幼鳥です。
衰弱して飛べなくなり、保護しました。

他にはハシボソミズナギドリは3万2000km、
母島でも見かけるムナグロやホウロクシギは2万km。

ほんとに凄いなと感心します。

きっと渡りの途中で命を落とす鳥も少なくないはずです。
母島で保護される渡り鳥のほとんどは餓死寸前の衰弱個体がほとんどです。
うずくまって動けないで保護されたときはもう手遅れの場合も多いです。

留鳥として1年を通してその地に留まる事を選んだ鳥。

死亡するリスクは高くなりますが、
季節の変化に伴い、餌資源を求めて長距離を渡ることを選ぶ鳥。

同じ鳥でもスタンスはかなり違く感じます。


…そういえば、地元仙台に残った友人もいますが、こんな小笠原まで渡ってしまった東北人(自分です)もいるワケで(笑)。
そんな部分にも答えが眠っているのかも知れませんね☆

■映画で「WATARIDORI(邦題)」という作品があります。
これはジャック・ペラン監督による、渡り鳥をテーマとしたドキュメンタリー映画です。

撮影期間3年、世界20か国をロケし、
100種類を超える渡り鳥の壮大なる旅の軌跡を、制作費20億円をかけ完成させた驚異の映像です。

飛翔する鳥に限りなく近づくことにこだわった命がけの撮影映像が、
CGなどでは描ききれない真実の驚きと感動を呼びます。
DVDでは制作ドキュメンタリーも付いていて、
そちらもとても見応えがあります♪

英語版はYoutubeにありました。
よかったらどうぞ↓
Winged Migration ( 2002 )

母島 マガン保護物語

2014年12月15日 | 鳥獣保護員 活動
■10月中旬、天然記念物でもあるマガンが5羽以上母島に飛来しました(初記録は2013.10月)。
そのうちの1羽が飛べない状況で保護し、1か月の試行錯誤の飼養の末、無事に野生下に戻ることができました。

母島で水鳥を1か月近く保護飼養して、無事に放鳥できた珍しい例ですし、何よりも保護個体の野生に還るプロセスがあまりに素晴らしかったので、この場で報告したいと思います。



■マガンは冬季、宮城、新潟、石川県などに飛来する渡り鳥です。
全長72cm。翼を広げると1.4mほどになる大型の水鳥です。

湖、沼や池でねぐらし、水田で落穂や、草の種子、葉などを食べています。

国の天然記念物にも指定されており、環境省レッドリストでは準絶滅危惧種に指定されています。
母島では去年10月、初確認され、今年で2例目で1度に7羽以上の飛来の情報を得ています。

そんな母島ではレアなマガンが去年に続き2回目の飛来で不時着したのです…。

■まずは10月12日、学校のグラウンドに不時着したマガンの連絡が入り、
飛べなくなったマガンを保護することになりました。



保護時は右尾翼が下がり気味で随分と大人しい印象でした。
保護時は数メートルは低空飛行をできるが、足も悪い印象ですぐ転んでしまいます。

保護時の体重は1362g。
幼鳥ですが、体重は低目ではないかということでした。

大型の水鳥という事で飼養する場所から課題となりましたが、
母島で共に傷病鳥獣の保護の活動をしてくれているKさんの使っていないシャワールームをお借りすることになりました。

この時点ではあまり餌も食べず、
まずは体重を1.4~1.6kgまで増やし、痛めた羽を回復させ、共に来ている野生個体の群れに帰すことを目標に保護を開始しました。

水鳥は陸で世話をしていて、自分の体重で足を痛めてしまうケースが良くあります。
それを防ぐために柔らかいバスマットを使う工夫をしました。


当初は何を与えていいか分からず、試行錯誤しました。
関係者に色々聞いて、色々試してみました♪
野生個体同様の島のイネ科の葉や穂を与えてみると、
大喜びしてバクバク食べることが分かったので、
毎日せっせとイネ科の雑草や畑の陸稲を与えていました。

餌はその後、
すりつぶした穀物を与えてみたら、見事に食いつくようになり、
麦やヒエ、陸稲や玄米を中心に給餌していきました♡
野生鳥の保護で一番苦労するのは給餌です。

自力で食べれない鳥に強制給餌するのは人にも鳥にもストレスが多くなってしまいます。

このマガンの場合は自力で食べてくれるのがとても助かりました♪


保護後、環境に慣れてきたので
1日1回は衣装ケースを使って水浴びを行いました。
水鳥にとっては水浴びはとても重要です。
頭からザブンザブンと鳥の命でもある羽の手入れを入念に行います。

サブン!と水に飛び込み、浴びる様はさすが水鳥と言ったところです♪


しかし、ふと見ると傾眠傾向が続き、
コンディションが悪いことを物語っていました。

衛生状態を保つ為、シャワー室での静養はとても有効でした。
糞やごみをすぐに流せますからね♪

それでも野生復帰できることを願って、日々お世話をしていきました。
(Kさんにお世話になりっぱなしでした!)

そんな中、中の平の畑では野生個体が1羽残っているのを発見しました。

どうにか、この個体と引き合わせてあげたいと思っていました。
保護個体が飛べるようになるまで待っていてくれるといいのだけれど…。


■保護して5日目の10月17日。
体重は上がったり下がったりでしたが、ほぼ安定し、
翼の落ちもなくなったので、一度野外で放鳥に挑戦してみました。




場所は当初野生個体を何度か見かけた脇浜。
しかし、いくら待っても飛びません。
ずっと仁王立ちをしては横の林の中に入り込む始末…。

少し走らせてみるとすぐに転び、
羽ばたいても体を浮かすことはできません。
まだ時期が早かったことを痛感し、保護飼養を継続することになりました。
体力、飛翔能力、足腰に課外があるようでした。


その後は餌は順調に食べ、少しずつ体重も増えて来ました。
保護当初になかった威嚇もするようになってきて、
少しずつ元気になってきた印象です。

そして今度は野生個体がうちの畑に登場!!

次女が大喜びでした♪

しかし、いつ渡りに戻ってしまうか分からないので、
気持ちが焦ります。
早く保護個体を野生に帰さなければ、と。


■早期の放鳥が難しいと分かったので、課題となった部位の回復に意識を集中させていくことになりました。
ここで特に気になったのは左右の足の違和感でした。

左右の踵の付き具合に差があり、
ときどき片足立ちするようになったのです。

10月末 餌の喰いつきも日々良くなり、体重は1.6kgとなりました。
しかし、ここで更に足の負傷に気付くことになりました。
バンブルフットです。


バンブルフットというのは、本来飛んだり水上で過ごしている鳥がずっと止まり木や陸に立っていて足に負荷がかかり、
人間で言う褥瘡のような状態になってしまう疾患の事です。

悪化が進むとその傷口から感染し、立てなくなるケースもあります。
それを未然に防ぐためにバスマットを使用していましたが、
それでも長期の飼養で足に故障が出てしまいました。
今度は人工芝を使い、その対応にあたってみました。

もう一刻の猶予もなくなってきました。

野生個体は前浜や旧ヘリポートで見かけることができました。

気持ちが焦ります。

■11月1日、体重も上がり1.7kgを超えました。
威嚇も激しくなり、羽の力の目安でもある背中の谷間もしっかりしてきました。
足も回復傾向にあるように思えました。

今度は旧ヘリポートで再度放鳥を試みるも飛べずに失敗でした。
それからは毎日評議平グラウンドで毎日1~3時間、野外リハビリとして運動を続けました。


毎日少しずつ進化していきました。
今日はとべない。
翌日は50m。
翌々日は100m。
50m×3。
最後はグラウンド1週旋回。

次女もその成長を一緒に見守ります♪


「今日もちょこっと飛べたね~」と大喜びの次女。

野生個体の近くで野外リハビリができればと思っていましたが、
いつもそのタイミングではうまく出会える機会がありませんでした。
気持ちは焦る一方で、毎日の放鳥時にみせる成長に、
日々確かな手ごたえを感じていました。
お別れの日は近いと感じて来ました。

足の状況からは、もうネコや交通事故の危険のないダムに強制放鳥する考えでいました。

ずっと毎日つきっきりでお世話をしてくれたKさんです。
野外リハビリの回収時の様子ですが、マガンに対する愛情がほとばしっています♪

この人の存在なしでは今回のマガンの保護→放鳥成功はありえませんでした!
ほんとにありがとう!

■運命の11月9日。
なんと旧ヘリポートで野生個体と遭遇させることができて、
見事に放鳥に成功しました!

別れは踊るべきスピードで急にやってきたのです。


ここ1週間、放鳥に向けて連日評議平グラウンドで野外トレーニングを試行をしていました。
日に日に飛べるようになってきて野生復帰も近いかと思っていました。
そして、旧ヘリでなんと野生個体を発見したのです!!
なんという絶好の機会!!

ずっとこの時を待ち望んでいたのは僕だけでなく、
マガン自身もそうだったと思います。

早速その近くに放鳥してみました。
すると、久々の再会に戸惑いながらも鳴きながら寄り添っていき、
2羽で採食を始めました。

その後は2羽がシンクロするように動き→羽ばたいたりと仲の良い様子でした。

突然、近くにいたムナグロが何かの拍子に飛び立つと野生個体が東方向に飛び立ちました。

それに合わせるようになんと飼養個体も飛びましたが、
なぜか野生個体と反対の御幸の浜方向へ!?

その後、野生個体は旋回してきて、飼養個体を探すように旋回し、
鳴きながら御幸の浜へ飛翔していきました。

急な野生個体との遭遇で、一気に野生のスイッチが入ったのかと考えられます。
以外なほどサッパリしていて呆気に足られてしまいましたが、
無事に飛び立ったので嬉しい気持ちでした♡

■しかし、その後はしばらく2羽のマガンを見かけることがなかなかありませんでした。
野生個体はその旧ヘリの遭遇の夕方には前浜で確認しています。

1か月も満足に飛んでいない飼養個体はどこかで落ちてしまったのでしょうか?
心配が募ります。

毎日野生個体ばかり見かけるのです。


■しかし、その心配も杞憂に終わりました。
11月16日、前浜でついに2羽が一緒にいるのを目撃しました。
1週間ぶりの発見!!

無事に生きていてくれたのか!


この時の感動は言葉では言い表せないほどです♪


長い飼養期間を経て、無事に野生復帰することができました。

最後のあまりにあっけない別れでしたが、
人馴れによる野生復帰の難しさを心配していました。

それがこうも逞しい姿を見せつけられると、
そんな心配は無用でした。
彼らの野生に還るパワーを感じられずにはいられません。

無事に多くの本体の群れに戻って行ければと思います。

この保護には多くの皆様の協力があって成り立っています。

Kさんはもちろん、
動物病院の先生方、
父島の自然文化研究所の皆様、
多くの情報を寄せてくれる母島の皆様、
そして飼養場所の提供とお世話をかってでくれたKさん。
本当にありがとうございました!

こうして無事に保護、放鳥、野生復帰確認できたことは
とても素晴らしく、嬉しいことでした。

野生生物と地域の皆様から多くの学びを頂きました。
この場を借りて、お礼をお伝えします。
どうもありがとうございました。

無事に野生下に戻ったマガンは昨日も母島の前浜で見かけています。
無事に北の群れに帰れることを願ってやみません。

2014秋、小笠原ミズナギドリシーズン到来!!

2014年11月26日 | 鳥獣保護員 活動
■今年も巣立ったばかりのミズナギドリが集落の灯りに寄せられて、不時着するシーズンとなりました。
(毎年11月中旬~12月中旬)
そのままにしておくと、車にひかれたり、ネコに襲われる可能性があります。

【町や道路で飛べずにうずくまっている野鳥を見つけたらご連絡下さい!!】
【注意!!】※怪我をしている・死んでいる鳥には触れず、連絡をください!

もし夜間の外出時やグラウンドでのスポーツ時、
ミズナギドリが不時着していましたら、
休日・夜間を問いませんので連絡をお願いします。(連絡先は村の掲示板に貼ってあります)
この時期は夜間や早朝の足元、運転にはお気を付け下さい。


ミズナギドリにつきましては去年のブログの記事を参考にしてみて下さい(*^。^*)

■ミズナギドリ、と言ってもカモメなどに比べて、本土ではあまり馴染の少ない鳥かも知れません。
それもそのはず、今多数母島や父島に不時着しているオナガミズナギドリは外洋性の海鳥で、
普段はずっと海の上で暮らしています。

10m以上潜って魚やイカを捕食するダイバーのような海鳥です。

地上に降りるのは繁殖の時のみ。
母島列島では南崎や属島で繁殖しています♪

毎年、春と秋のミズナギドリ類が巣立つ時期は、巣立ったばかりのヒナ鳥が集落の灯りに寄せられて不時着します。
陸の小鳥などと違い、その場で上に飛び上がるのはとっても苦手なミズナギドリは、
慣れない陸の上で右往左往している間にネコや車の被害に遭ってしまう場合があります。

何百kmもいとも簡単に飛べる飛翔能力を持つために翼がグラインダーのように長く、急旋回が苦手です。
集落の灯りに寄せられてきて、建物や看板、電線に当たって落ちてしまうのです。

鳥獣保護員として、島の一員として
そんな人為的な理由で野生動物が命を落とすのを可能な限り減らそうと、
夜間にミズナギドリを保護し、翌朝放鳥するという活動をしています。

明るくなってから海辺で放鳥すると、スッと沖に飛んで行って、無事に彼らの住む世界に戻っていけるのです。


■今朝は我が家の子供達も放鳥に参加してくれました♪

せっせと鳥の入った箱を運んでくれます。


姉妹で力を合わせ、オナガミズナギドリちゃんを箱から出していきます。
時々噛む個体や、人間を追いかけてくる個体もいます。
鳥だって色んな性格があるんですね~☆


箱をそっと砂浜に横にします。

すると自分から出てきます(怖がって逆に戻ってしまう子もいます。)。

ときどき、開けた瞬間に自分で飛び出してくる元気な個体もいます☆


あとは自分で飛び上がるのを待つのです。


上に放り投げる放鳥の仕方もあるのですが、
その方法だと鳥がまだ飛ぶ気持ちに至ってない場合は羽を痛めてしまったり、
地上に落ちて打撲や怪我をする恐れがあります。

可能な限り、自分自身の第一歩を大事にしてあげたいのです。

さすが海鳥。
海に入ると落ち着いて、スッと飛び上がっていく個体が多いです。

ゆっくりと海上で羽繕いをしてから飛び立つ子もいます。

しっかりと沖に飛んで行くのを見守ります。
時々、堤防や木、障害物に当たって沖に行けない個体がいるからです。

でも朝日がまぶしいので姉は手で、次女は姉を陰に(笑)鳥を見守ります。

無事に飛んで行けました。
めでたしめでたし♡

うちの娘たちも飛んで行くそうです(笑)♪


■先日月ヶ岡神社のお祭りの夜は祭の灯り+悪天候で
今期最大のオナガミズナギドリ不時着数、なんと16羽でした☆

車の段ボール↑、これ全部オナガミズナギドリ×16です(笑)。

祭り明けの翌日は祝日と言うこともあり、せっかくなので村民の皆さんに呼びかけて、
ミズナギドリ放鳥会を脇浜で行いました♪

大人も子供の幼児もが参加してくれ、
島の周囲で暮らすミズナギドリと触れ合い、知る事が出来たと思います♡

最初はおっかなびっくりな子供達(もちろん大人もw)。
でも無事飛んで行くととっても嬉しそう!!(←特に大人)

その顔を見て僕もとっても嬉しかったです(^O^)

放鳥は原則的に砂浜に置いて、
鳥自身が自分で選んだタイミングで飛ぶ方法を採用しています。

いきなり上に放り投げる方法は、心構えできていない個体にとっては怪我や事故の発生につながってしまいます。
みんな優しく、そっと砂浜に置いてくれました。

すぐ飛ぶ子、
海に入ってから飛ぶ子、
なぜか陸の方に戻ってくる子、
色々でしたね~♪

そんなこんなで、
保護した個体はすべてみんなの手で脇浜から沖合へ飛んでいきました☆

参加してくれた皆様、どうもありがとうございました!

■こうして本土では見ることも触ることもなかなかできないミズナギドリ達の存在。
いつも嵐の時も海の上で暮らし、ひたむきに生きるその存在。
島に人が住む前は繁殖期になると、島の全域に営巣していたでしょう。(古い地層から様々な海鳥の骨が見つかっています)

雨で流れていく一方の島の大地の栄養は、
この海鳥たちの死骸や糞で海の栄養を島の大地に戻す大きな循環の流れがありました。

しかし、私たち人間が海洋島に住むことで、様々な外来種としての脅威が増えていきます(猫やネズミ、犬など)。
そして、それが海と島の大きな循環を断ち切ってしまったのです。

有難いことに私たちはこうして海鳥の存在を触れて知っていくことができます。
そこに大きな本来の海洋島の循環を知り、自分たちに何ができるかを考える大きなきっかけをもらっていると思うのです。

自分のスタンス次第で自然からのメッセージを聞く心が開かれていきます。
鳥獣保護員として人と野生生物の間で色んな学びを得られ、それを島の皆さんで共有できれば嬉しいです☆



母島2013年 ミズナギドリの記録

2013年12月30日 | 鳥獣保護員 活動
◆今年の秋~冬に母島で不時着したミズナギドリのまとめを報告したいと思います。
2013年はかつてないほどの数のミズナギドリが人の暮らしの明かりに寄せられ不時着しました。(11月21日~12月9日の期間でした)
その数はなんと208羽!

オナガミズナギドリが184羽。
オオミズナギドリが23羽。
シロハラミズナギドリが1羽という結果となりました。

写真で1回り大きい頭の白い個体がオオミズナギドリです。

保護した中で残念なことに命を落としてしまったオナガミズナギドリが11羽、保護して飼養の後無事に飛べたオオミズナギドリが2羽となっています。
光に飛び込む習性があり、特に巣立ち時には、街灯りに迷い、不時着します。
そうすると普段ずっと海の上にいる彼らはすぐに飛び立てない場合も多く、
ネコに喰われてしまったり、車に轢かれたりしまったする危険があります。

鳥獣保護員として、人の暮らしの影響で命を落とす野生の生物の被害を最小限にしようと夜間の回収を実施しました。
沢山の島のみなさんもライトダウンや回収、発見の連絡と協力をして頂きました。

昼間はフィールドや畑で集落に不在の僕に変わって母島観光協会が受け付けて下さいました。
連絡が入るとダンボールを持って直接回収に行ってくれたりしているのです。

お陰さまで未曾有の不時着の数でしたが、大きな被害とならず、数多くのミズナギドリを無事に放鳥することができました。
本当にありがとうございました!

◆母島列島の、オナガミズナギドリは鰹鳥島などの属島や母島本島では南崎等で繁殖・子育てをします。
有人島で現時点で繁殖が確認されているのはとても希なケースのようです。

夏に産卵し、冬にヒナ鳥が巣立ちます。
産卵前には1ヶ月間オスメスが並んで巣穴でぼ~っとする謎の「ハネムーン期」なんてのもあります♪
10m以上も潜って魚やイカを捕食するダイバーのような海鳥です☆


巣立ち直後なので、こんなアフロくんの様に産毛が残っている可愛い個体も数多くいます♪
アフロの他には胸毛くん、モヒカンくん、ヒゲヒゲや股間だけ毛深いマッスル派と随分と楽しませてくれます。

ちなみにこのアフロくんは随分と気性が荒かったので「具志堅用高」と名前が付きました(笑)。

鳴き声は様々ですがこんな鳴き声を記録できました。

まるで子供の玩具のラッパみたいです(笑)。

◆一方、小笠原では年に1羽ほどしか不時着しなかったオオミズナギドリも23羽と多数、不時着しました。

オオミズナギドリは北海道から八重山諸島で繁殖してる大きめなミズナギドリです。

小笠原ではとても珍しく、今年は色んな珍事件を発生させました。
なんと地中のパイプの下にハマっているのを発見なんてのもありました。

伊豆諸島の御蔵島では山中に繁殖し、島の食文化の中にも取り入れられています。

今回は貴重なオオミズナギドリの鳴き声の撮影にも成功しました♪

なんとも変な楽器のような鳴き声です。


今回は様々な事情で2羽ほどすぐに飛べないオオミズナギドリがいて、鳥獣保護員として少しの期間飼養しました。

中でも4日ほど羽の油が少なくて水に浮けなかった個体を放鳥したときは何とも言えない感動がありました。
その子とは放鳥のときには僕の股の下に来るほどの関係になりました(笑)。

そんな可愛いオオミズナギドリも野生化に戻らなければいけません。(実際、海鳥の餌やりはかなり大変です)

放鳥は基本的に砂浜にそっと置いてやり、自分で飛ぶ心の準備が出来てから自ら飛び出します。
多くの日は上に放り投げて舞い上げて飛ばすのをイメージしますが、あの方法は羽の筋肉を痛めてしまったり、うまく飛ばずに地面に激突して怪我してしまったりするので、最後の手段以外はやらないほうがいいようです。

待っていると、気の長い子でも30分位で飛び立ちます。

これはオオミズナギドリの放鳥シーンです。
お散歩中の島民のすぐ横を飛んで沖へと飛んで行きました。

本来は地面からは直接飛び上がれないなどと言われていましたが、200羽近く放鳥してみるとそうでもないように思えます。
うまく軽く飛び上がっていけるようです。
軽い向かい風があるのがベストのようです。

※様々な事故や怪我の可能性もありますので、もしご覧の皆さんが不時着した鳥を保護した場合はその地域の自治体の鳥獣担当者にご連絡下さい。
小笠原の場合は父島はNPO法人小笠原自然文化研究所(通称・アイボ)、母島は母島観光協会か僕まで連絡を下さい。
状態の確認、計測、記録をしてから飛翔可能な個体は放鳥します。


◆島に暮らす人たちにとっても、海鳥が落ちてくるこの時期は季節的なイベントになりつつあります。
特に子供たちの発見力と好奇心はとても素晴らしいです♪
我が家の子供たちも数多くの放鳥を手伝ってくれました。

夜間に回収したミズナギドリはダンボールで朝まで保護します。
数が多い日は15箱以上も並べて放鳥します。

我が家の4歳の次女は初めのうちは調教しそうなほどでした(笑)。


しかし、時々噛み付いてくる気性の激しい個体を見るうちに怖くなって来たらしく、逃げるようになってきました。

これは怖くなって姉の背中に逃げるようになった次女です(笑)。

それでもやはり鳥は大好きらしく、盛んに付いて来ます。
飛んでも海面に降りた個体を心配そうに駆け寄っていったりします。

個体によっては海面上で羽繕いをし直して、ゆっくりして飛ぶ心と体の準備をする子もいます。
最後は自力で飛んでいくのです。

朝の放鳥は子供にとっても楽しいイベントのようです♪

島の子供たちも回収、放鳥と多く関わってくれました。


それぞれ、自分で保護した個体を箱から出して放鳥します。


噛まれるととても痛いので手袋は必須です!

島に来た高校の修学旅行生にも放鳥を見学してもらったりしました。



そんなこんなで今年のミズナギドリも無事に巣立ち期を終えることができました。
こうして少しでも人の暮らしの影響で命を落とす野生動物を減らせたら嬉しいです。

本当にありがとうございました。

また春にはシロハラミズナギドリなど、小型の冬繁殖のミズナギドリが不時着します。
新種として報道された小型の「オガサワラヒメミズナギドリ」の繁殖も冬と言われています。
そんなとても珍しい個体との遭遇の可能性もあるわけです♪

母島で落ちて困っている鳥を見かけたらお気軽に母島観光協会や僕まで連絡を下さい。
よろしくお願いします。

◆ついこないだまでのそんなに遠くない昔、小笠原という海洋島は海鳥の宝庫でした。
そこでは海に流れた栄養は海鳥たちが地上へ戻す循環が形成されていました。
糞や骸へと形を変えて栄養が島の大地へと戻り、豊かな大地となるのです。

人の暮らしの影響で断ち消えたその循環は容易に取り戻せないでしょう。
新たにその循環の中に人の暮らしを経て、真の海洋島の循環が形成されることを願ってやみません。

今回の保護を通してそんな大きないのちの流れも感じさせてくれました。
私たちはその大きな自然の恵みの中で生きている、そんなことを感じさせてくれる島の秋冬の海鳥達の生命の躍動に触れた気がします。



オナガミズナギドリの巣立ちがほぼ終わりました!!

2013年12月10日 | 鳥獣保護員 活動
■メリークリスマス♪
オナガミズナギドリの巣立ちがほぼおわりました!!
と同時に島ではクリスマスイリュミネーションの開始です♪
小笠原のクリスマスはオナガミズナギドリが運んでくるのかもしれません☆



今年は母島に不時着した巣立ち鳥が本当に多く、なんと200羽を超えました(例年の5倍以上!)
11月下旬~のオナガミズナギドリ巣立ち期では、多くの島民の皆様からの発見、ご連絡を頂きました。

お陰さまで、たくさんの巣立ち鳥を、無事、海へ戻すことができました。
ありがとうございました☆


■母島列島の、オナガミズナギドリは鰹鳥島や南崎で子育てをします。
夏に産卵し冬にヒナ鳥が巣立ちます。
光に飛び込む習性があり、特に巣立ち時には、街灯りに迷い、不時着します。
夜間回収はライトダウンでヒナ鳥が救われています。

南島の営巣センサス調査(事業者:IBO)では巣立ち100%を確認したそうですが、センサス外の巣ではまだ巣立ちが遅れた個体が待機しているようです。
すべての巣立ちが終わるのは12月中旬から下旬。
しかし、巣立ちのピークはもう乗り越えたと言って大丈夫なようです。


鳥類初心者の僕が11月に鳥獣保護員となった瞬間に信じられない数の鳥が不時着しました(過去最高らしいです)。

同時に鳥類保護のパートナーの翼くんも傷病鳥獣を扱える資格を持ったばかり。
※ちなみにうちの次女のマリアが母島で一番大好きなお兄さんです♡

母島の2人のデビューには十分すぎるほどの経験を積ませていただきました(笑)。
本当に毎晩、どうもありがとうございました。

まだ完全に巣立っていない個体が落ちてきますが、その時は昼夜問わずまた連絡を下さい。
よろしくお願いします。

東京都鳥獣保護員@宮城雅司


オナガミズナギドリの巣立ちが始まりました。

2013年11月22日 | 鳥獣保護員 活動
■今月11月1日より東京都鳥獣保護員となりました。

今年の春に前任の急な転勤により不在になっていた母島の鳥獣保護員。
まだ全然鳥の知識は低いのですが、島民の傷病鳥獣の受け皿を作りたい強いおもいで鳥獣保護員になることを決心しました。

鳥獣保護員とは鳥獣保護法を違反する密猟などを監視し、野生の傷病鳥獣が持ち込まれた場合の対応などをする仕事です。

毎年、11月中旬頃からはオナガミズナギドリなどが巣立ちとなり、まだ経験の浅い若鶏が集落の明かりにに落ちてくる季節となります。
母島での鳥の落鳥や飛来、事故などがありましたら連絡を下さい♪

昼間は母島観光協会が受け付けてくれています。
夜間・休日は僕が受け付けます。

まだまだ不慣れな分野ですが、母島の島民と野生生物の暮らしのために役立てれればと思います。
どうぞ、よろしくお願い致します。


■オナガミズナギドリとはインド洋、太平洋に生息する中型の海鳥の仲間です。
日本には繁殖のため主に小笠原諸島、硫黄列島に飛来します。
母島では南崎で現在も繁殖を確認しています。
有人島で繁殖している場所はかなり稀なんだそうです。

全長は38-46cm、翼開張97-105cm、体重0.3~0.45kg。

繁殖のときに巣作りするとき以外は一生を海上で過ごします。

とくに巣立ちの時期の若鳥は、日没後に明かりに集まる習性があり小笠原の集落に飛来します。
長く飛ぶのは大得意なのですが、急旋回や急上昇は苦手なので人工物に激突し、落下するのです。

自然界ではそのまま飛べる個体は翌日までには飛ぶのですが、集落の場合は車や猫との接触の危険があります。
人の暮らしの影響で死ぬ野生動物を極力減らしたいと思っているので、落ちた個体は回収し、ダンボールに入れて安静にし、翌朝海岸で放鳥することにしています。

人間のちょっとした努力で救われる生き物がいるのなら、その努力をしたいと思っています。


■この2晩で、オナガミズナギドリを18羽保護しました。

夜のグランドのナイターの上では20羽ほどがぐるぐると回っており、その中の数個体がライトに激突して落下したり、ふんわりと降り立ってきます。
こうなるとオナガの巣立ちの時期がついに来たといった感じです♪


昨晩ナイターの照明に激突した1羽は朝までは元気だったのですが、放鳥前にぐったりとして息を引き取りました。脳挫傷かも知れません。

人の暮らしがあたえる自然への影響というのをダイレクトに考えさせてくれました。
私たちに何ができるのでしょうか?

■保護した翌日には浜で放鳥をします。
我が家の次女Mさん、そちらでも大活躍です♪
オナガミズナギドリの入った箱を浜まで運んでくれます。

砂浜まで行ったら、箱から出してそっと砂浜に置きます。

自力で飛び立つのを待つのです。

大体は5分から~30分で沖へと飛んでいきます。
海から行く子やいきなり飛ぶせっかちさんと個性派様々です♪


中にはこんなモヒカンみたいに産毛が頭部に残っている個体もあります(笑)。

無事に沖に飛んでいく姿を見て、次女もホッとしています。

傾向としてはわずかにお腹に産毛が残る個体もあったり、茶髪やお腹が灰色の個体もあったりと様々な若鳥達でした。
南島からの報告ではもう半分が巣立ったようです。



■今晩は母島は月が丘神社のお祭りの予定です。

子供たちは待ちに待ったお祭りで大喜びです♪
が、さらに雲が低いことが予想されます。
すると雲が人の明かりを反射し、沖から見るとボウっと明るい塊に見えるようです。
そこに海鳥が間違って飛来してくるのです。

というわけで、今晩もかなりの数の海鳥が落ちてくると予想されます。
日没後の飛来にご注意ください。

※母島で集落に落ちて困ったいる海鳥を見かけたら連絡を下さい。
夜間でも構いません。
日中は母島観光協会にお願いします。
噛まれる危険がありますので、素手で触らないでください!

よろしくお願いします。

東京都鳥獣保護員@宮城雅司(ジャイアン)