■2017年3月23日、母島の集落全域で多くの方が
「なんか、くさやを焼いてるにおいがするな~」と思ったはずです☆
しかし、その匂いの発信源は脇浜に眠っていた、ある生き物だったのです!!
4年前に埋めたコビレゴンドウクジラ!!
そう、2013年4月27日に母島の南京浜でコビレゴンドウが座礁(ストランディング)しました。
その時のブログの記事にも書いています。
骨格標本にするために脇浜に埋めたあのコビレゴンドウをついに掘り起こす日がやってきたのです☆
この一つ下までの写真は2013年の時のものです。
埋めるのに日が暮れるまでかかりました。
去年、確認した時はまだまだ腐敗途中で、断念したとのこと…
今回はどうなるか掘ってみないと分かりません。
今回は前回の教訓も生かし、
重機を投入しての作業となりました。
これがすごい助かりました!
重機ってやっぱりすごい!!
OWA(小笠原ホエールウォッチング協会)母島支部の母島観光協会、クラブノアのスタッフの他、
声掛けで集まった島の有志による掘り起しが始まりました!!
■掘ること1時間、
ちらちら隠れていたブルーシートが全貌を表し、
ついに全体像が見えてきました。
※ブルーシートでくるんだのは、骨格標本として回収するために小さな骨などを紛失しないようにするためです。
おそるおそるめくってみると…
…とここまでさらっと来ていますが、
この段階でかなり香ばしい状況になっていました(笑)。
でも、腐敗したウジ虫がわくような悪臭ではなく、
ほんのりくさやに似た、匂いでした。
やはり4年も経過すると、色々ある意味、熟成して、
発酵してきているのだと思います。
※写真提供 小西さん
僕も妻もちょうど風邪をひいていて鼻が詰まっていたので、
「大好きなくさやみたいだね♪」と言って臭いは気になりませんでした(笑)。
わずかに黒い皮膚が残っている部分もありましたし、
尾びれ付近は立派な筋肉の筋が残っていました。
それ以外はほとんどが肉が溶けてドロドロ状態(笑)。
写真ではミイラっぽく見えますが、
実際はウエットで生々しいです(#^.^#)
頭骨付近の骨は少し骨自体が腐敗して崩れており、
当初は骨格標本は厳しいかもという空気が流れていました。
しかし…
■父島の研究者、
内地の専門家に写真を送り、
電話で話しながら進めていきます。
しかし、僕らと同じくボランティアで参加しているHさんが、
目をキラキラさせて、
「ほら~これが肩甲骨♡きゃあ~背骨~♡♡」
と形が完全に残っている骨を見つけては盛り上がり(笑)、
見事、午後からすべての骨を洗浄し、
骨格標本として収集する方針に決まりました!!
写真の右側に見えるのが頭骨の下あごの部分になります。
本来は潜ってイカなどを採取する種類の歯鯨の仲間です。
立派な顎を持っています。
骨格を見てみると、
なるほどやはり魚類とは全然違います。
内臓と呼吸器系を包む立派なあばら骨の部分。
そして5本指の骨がある胸びれ部分。
この指の骨が歯の次に細かくて探し出すのに苦労しました。
腐った肉の中に潜む数々の骨に触れながら、
海から陸に進化した哺乳類が再び海に戻る、遠い時間の流れとドラマを思い描きます。
きっと考古学ってこういう気持ちになるものなのかなと思い、
少し面白さに気付くことができました♪
■せっかくの機会なので、普段なかなかお目にかかれないコビレゴンドウについて調べてみました。
ゴンドウクジラ属はイルカとして扱われる種が多く属するマイルカ科に分類されるそうですが、
形態的に口がバンドウイルカみたいにあまり長く突出していないので、
イルカとしては扱われず、
クジラとして扱われることが多い様です。
ゴンドウイルカと呼ばれることもあるそうです☆
※ちなみに「イルカ」とは4m以下の小型のハクジラの総称です。
漢字で書くと「巨頭鯨・五島鯨」と書くらしく、
和名の由来「ゴンドウ」は五島が変化したものではないかとのことです。
「ゴンドウ」=「巨頭」という頭の大きいクジラの意味もあるそうです。
コビレゴンドウは英名で「 Short-finned Pilot Whale」と呼ばれています。
直訳するとヒレの短い水先案内人。
う~んロマンチックですね♡
水族館で飼育されることもあるみたいですが、
比較的外洋性で野生の生態は分からないことが多い印象があります。
小笠原の海域では外洋に行けば比較的見かける種類のようです。
普段よく見るハシナガイルカやザトウクジラと違って、
外洋に多い個体だから普通に暮らしている私達には中々お目にかかれれないのですね。
(沖で見ても分からない可能性も多々あります☆)
今回の個体は体長約3.5mと小柄なので、若い個体だと推定できます(大人は雄で約5.5m)。
2000m以上も潜る事がわかっているマッコウクジラに比べると、
どれぐらい潜れるものなのでしょうか?
コビゴンの謎は深まるばかりです☆
Youtubeにはコビレゴンドウの群れが悠々と泳ぐ動画がアップされていました。
なかなか力強い太い筋肉を感じさせる美しいフォルムをしていますね♪
■そうこうしているうちに作業を進めていきます☆
ということで午後からは骨を大きく部分に分けながらネットに入れ、
海で洗浄するという作業に入りました。
※写真提供 小西さん
最初はまだ赤い血も残る腐った肉を海で洗ったら、
サメたちが集まって大変なことになるかもと思いましたが、
脇浜のネムリブカ達、とっとといなくなりました(笑)。
新鮮な死肉を好むのですね☆
※写真提供 小西さん
何度も何度も海と陸を往復します。
海の洗浄で腐った肉が落ちて、
立派なあばら骨が見えてきました。
■今回の掘り出し作業で一番気になった骨が幾つかあります。
まずはこの骨です。
この地味な形の骨は、退化した骨盤と後肢の骨格です。
海から陸に上がった哺乳類が、再び海に戻り、骨盤と後肢の骨格は著しく縮小しました。
今は皮膚の中に埋もれたまま肢として役に立つことはないその骨を、この手で確認することがでいました。
腐った肉の塊の中からクラブノアのスタッフの方が見つけてくれ、歓声が上がりました!!
あと僕がひそかに気になっているのが顎の下にある骨です。
このブーメランみたいな骨。
これは舌骨と言って、海中でイカなどの獲物を吸い込むための強力な筋肉の為の骨だそうです。
コビレゴンドウをはじめ、ハクジラの多くの種類の歯は捕獲、ホールドする為程度のもので、
実際は吸引して捕食する方法がメインと考えられているそうです。
今回発掘にあたって調べて特に気になった部位でした♡
そして極めつけはやはり大きな頭骨です。
この写真は裏返して、下から見ている向きになります。
上から見ると、
鼻の孔のような穴が口の先の方からこ頭の上の噴気孔(呼吸孔、鼻孔)に伸びています。
そしてメロンと言われる、歯鯨に特徴的な頭にある大きく膨らんだ油が詰まっている部分が平らに凹んでいます。
ここの器官を使って、超音波(エコロケーション)で地形を感じたり、仲間と会話したりしていると言われています。
あとこれは耳骨。
イルカの耳骨はその形から「布袋石」と呼ばれ、古くから珍重されてきました。
これもそれによく似ている気がします。
あとは5本だけ回収できた歯です。
4年前、ストランディングしている時から歯はかなり抜けていて、
少なかったので、5本だけでも見つかって良かったです♪
ハクジラは歯が生え変わることはないそうなので、これは相当年を取ったメスであることが分かります。
最後にまだ腐りきっていいない肉の部分と皮の部分に細かな骨が残っている可能性も否定できないし、
今回完全に洗えたわけではないので、
ネットに小分けしたまま、また砂の中でしばらく待つことになりました。
■掘り始めてから、埋め戻すまでになんと6時間!!
臭いは凄まじかったですが(笑)、
今回は人は生まれつき、どの分野にも向き不向きというのがあるのだなぁということがわかりました♪
(植物好き、動物好き、鯨類好き、骨好き、探索好きなどなど)
鯨類好きの僕はとても楽しかったです!
そして、妻は僕より楽しそうでした(笑)!!
お蔭様で、こうして
本当に貴重な体験をすることができました♪
普段なかなか島でも見ることのできない、
コビレゴンドウという小さなハクジラに興味を持つことができました!
どうもありがとうございました☆
次掘り出すときには、かなり楽になっているハズです(*^_^*)
みなさん本当にお疲れ様でした!!
追記
→この続きは2018年12月の全身骨格組み立て大作戦の記事をどうぞ!
おまけにYoutubeにあった大量の群れのコビレゴンドウ(ヒレナガゴンドウではないと思います)と泳ぐ動画です☆
いつか沖で逢えるといいな~
「なんか、くさやを焼いてるにおいがするな~」と思ったはずです☆
しかし、その匂いの発信源は脇浜に眠っていた、ある生き物だったのです!!
4年前に埋めたコビレゴンドウクジラ!!
そう、2013年4月27日に母島の南京浜でコビレゴンドウが座礁(ストランディング)しました。
その時のブログの記事にも書いています。
骨格標本にするために脇浜に埋めたあのコビレゴンドウをついに掘り起こす日がやってきたのです☆
この一つ下までの写真は2013年の時のものです。
埋めるのに日が暮れるまでかかりました。
去年、確認した時はまだまだ腐敗途中で、断念したとのこと…
今回はどうなるか掘ってみないと分かりません。
今回は前回の教訓も生かし、
重機を投入しての作業となりました。
これがすごい助かりました!
重機ってやっぱりすごい!!
OWA(小笠原ホエールウォッチング協会)母島支部の母島観光協会、クラブノアのスタッフの他、
声掛けで集まった島の有志による掘り起しが始まりました!!
■掘ること1時間、
ちらちら隠れていたブルーシートが全貌を表し、
ついに全体像が見えてきました。
※ブルーシートでくるんだのは、骨格標本として回収するために小さな骨などを紛失しないようにするためです。
おそるおそるめくってみると…
…とここまでさらっと来ていますが、
この段階でかなり香ばしい状況になっていました(笑)。
でも、腐敗したウジ虫がわくような悪臭ではなく、
ほんのりくさやに似た、匂いでした。
やはり4年も経過すると、色々ある意味、熟成して、
発酵してきているのだと思います。
※写真提供 小西さん
僕も妻もちょうど風邪をひいていて鼻が詰まっていたので、
「大好きなくさやみたいだね♪」と言って臭いは気になりませんでした(笑)。
わずかに黒い皮膚が残っている部分もありましたし、
尾びれ付近は立派な筋肉の筋が残っていました。
それ以外はほとんどが肉が溶けてドロドロ状態(笑)。
写真ではミイラっぽく見えますが、
実際はウエットで生々しいです(#^.^#)
頭骨付近の骨は少し骨自体が腐敗して崩れており、
当初は骨格標本は厳しいかもという空気が流れていました。
しかし…
■父島の研究者、
内地の専門家に写真を送り、
電話で話しながら進めていきます。
しかし、僕らと同じくボランティアで参加しているHさんが、
目をキラキラさせて、
「ほら~これが肩甲骨♡きゃあ~背骨~♡♡」
と形が完全に残っている骨を見つけては盛り上がり(笑)、
見事、午後からすべての骨を洗浄し、
骨格標本として収集する方針に決まりました!!
写真の右側に見えるのが頭骨の下あごの部分になります。
本来は潜ってイカなどを採取する種類の歯鯨の仲間です。
立派な顎を持っています。
骨格を見てみると、
なるほどやはり魚類とは全然違います。
内臓と呼吸器系を包む立派なあばら骨の部分。
そして5本指の骨がある胸びれ部分。
この指の骨が歯の次に細かくて探し出すのに苦労しました。
腐った肉の中に潜む数々の骨に触れながら、
海から陸に進化した哺乳類が再び海に戻る、遠い時間の流れとドラマを思い描きます。
きっと考古学ってこういう気持ちになるものなのかなと思い、
少し面白さに気付くことができました♪
■せっかくの機会なので、普段なかなかお目にかかれないコビレゴンドウについて調べてみました。
ゴンドウクジラ属はイルカとして扱われる種が多く属するマイルカ科に分類されるそうですが、
形態的に口がバンドウイルカみたいにあまり長く突出していないので、
イルカとしては扱われず、
クジラとして扱われることが多い様です。
ゴンドウイルカと呼ばれることもあるそうです☆
※ちなみに「イルカ」とは4m以下の小型のハクジラの総称です。
漢字で書くと「巨頭鯨・五島鯨」と書くらしく、
和名の由来「ゴンドウ」は五島が変化したものではないかとのことです。
「ゴンドウ」=「巨頭」という頭の大きいクジラの意味もあるそうです。
コビレゴンドウは英名で「 Short-finned Pilot Whale」と呼ばれています。
直訳するとヒレの短い水先案内人。
う~んロマンチックですね♡
水族館で飼育されることもあるみたいですが、
比較的外洋性で野生の生態は分からないことが多い印象があります。
小笠原の海域では外洋に行けば比較的見かける種類のようです。
普段よく見るハシナガイルカやザトウクジラと違って、
外洋に多い個体だから普通に暮らしている私達には中々お目にかかれれないのですね。
(沖で見ても分からない可能性も多々あります☆)
今回の個体は体長約3.5mと小柄なので、若い個体だと推定できます(大人は雄で約5.5m)。
2000m以上も潜る事がわかっているマッコウクジラに比べると、
どれぐらい潜れるものなのでしょうか?
コビゴンの謎は深まるばかりです☆
Youtubeにはコビレゴンドウの群れが悠々と泳ぐ動画がアップされていました。
なかなか力強い太い筋肉を感じさせる美しいフォルムをしていますね♪
■そうこうしているうちに作業を進めていきます☆
ということで午後からは骨を大きく部分に分けながらネットに入れ、
海で洗浄するという作業に入りました。
※写真提供 小西さん
最初はまだ赤い血も残る腐った肉を海で洗ったら、
サメたちが集まって大変なことになるかもと思いましたが、
脇浜のネムリブカ達、とっとといなくなりました(笑)。
新鮮な死肉を好むのですね☆
※写真提供 小西さん
何度も何度も海と陸を往復します。
海の洗浄で腐った肉が落ちて、
立派なあばら骨が見えてきました。
■今回の掘り出し作業で一番気になった骨が幾つかあります。
まずはこの骨です。
この地味な形の骨は、退化した骨盤と後肢の骨格です。
海から陸に上がった哺乳類が、再び海に戻り、骨盤と後肢の骨格は著しく縮小しました。
今は皮膚の中に埋もれたまま肢として役に立つことはないその骨を、この手で確認することがでいました。
腐った肉の塊の中からクラブノアのスタッフの方が見つけてくれ、歓声が上がりました!!
あと僕がひそかに気になっているのが顎の下にある骨です。
このブーメランみたいな骨。
これは舌骨と言って、海中でイカなどの獲物を吸い込むための強力な筋肉の為の骨だそうです。
コビレゴンドウをはじめ、ハクジラの多くの種類の歯は捕獲、ホールドする為程度のもので、
実際は吸引して捕食する方法がメインと考えられているそうです。
今回発掘にあたって調べて特に気になった部位でした♡
そして極めつけはやはり大きな頭骨です。
この写真は裏返して、下から見ている向きになります。
上から見ると、
鼻の孔のような穴が口の先の方からこ頭の上の噴気孔(呼吸孔、鼻孔)に伸びています。
そしてメロンと言われる、歯鯨に特徴的な頭にある大きく膨らんだ油が詰まっている部分が平らに凹んでいます。
ここの器官を使って、超音波(エコロケーション)で地形を感じたり、仲間と会話したりしていると言われています。
あとこれは耳骨。
イルカの耳骨はその形から「布袋石」と呼ばれ、古くから珍重されてきました。
これもそれによく似ている気がします。
あとは5本だけ回収できた歯です。
4年前、ストランディングしている時から歯はかなり抜けていて、
少なかったので、5本だけでも見つかって良かったです♪
ハクジラは歯が生え変わることはないそうなので、これは相当年を取ったメスであることが分かります。
最後にまだ腐りきっていいない肉の部分と皮の部分に細かな骨が残っている可能性も否定できないし、
今回完全に洗えたわけではないので、
ネットに小分けしたまま、また砂の中でしばらく待つことになりました。
■掘り始めてから、埋め戻すまでになんと6時間!!
臭いは凄まじかったですが(笑)、
今回は人は生まれつき、どの分野にも向き不向きというのがあるのだなぁということがわかりました♪
(植物好き、動物好き、鯨類好き、骨好き、探索好きなどなど)
鯨類好きの僕はとても楽しかったです!
そして、妻は僕より楽しそうでした(笑)!!
お蔭様で、こうして
本当に貴重な体験をすることができました♪
普段なかなか島でも見ることのできない、
コビレゴンドウという小さなハクジラに興味を持つことができました!
どうもありがとうございました☆
次掘り出すときには、かなり楽になっているハズです(*^_^*)
みなさん本当にお疲れ様でした!!
追記
→この続きは2018年12月の全身骨格組み立て大作戦の記事をどうぞ!
おまけにYoutubeにあった大量の群れのコビレゴンドウ(ヒレナガゴンドウではないと思います)と泳ぐ動画です☆
いつか沖で逢えるといいな~