もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

APECでの中国とポートモレスビー攻略作戦

2018年11月18日 | 中国

 APEC(アジア太平洋経済協力会議)での、米中代表の演説が報じられた。

 アメリカはペンス副大統領が、中国は習近平主席が、それぞれの持論を展開して激しい応酬になったと伝えられている。特に、習近平主席の「(一帯一路構想には)地政学的な目的は無く、債務の罠なども無い」「(知的財産権の保護)科学イノベーションは少数の人の金儲けの道具となるべきでない」には笑わせられた。一帯一路構想は中華思想実現のために近隣諸国の中国化と東・南シナ海を中国原潜の安全な隠れ場所にするための軍事拠点確保をを目的としているのは自明の理で、アフリカに対する市場開拓のための投資とは全く異なることは国際社会で認知されていることであり、地政学的な新植民地的侵略行為である。知的財産権保護に関しては「先端技術後進国の中国が、西側の技術先進国から盗むのは当然である」との居直り強盗的な発言に他ならない。更に習主席は「冷戦に勝者はいない」とも述べているが、習のカーテンで冷戦と新植民地的侵略を仕掛けたのは中国自身であることを忘れたかのようである。APECでの中国の言動はさておき、APEC開催地のポートモレスビーは大東亜戦争で日本が大敗して多くの日本人が散華した地であることは報じられていない。米豪遮断と絶対国防圏構築のため設営したニューブリテン島のラバウル基地を安全なものとすべく行われたのが、ポートモレスビー攻略作戦である。不幸なことに地図さえ無い人跡未踏のスタンレー山脈を越えてオーストラリア軍が守備するポートモレスビーを攻略せんとする作戦は兵站の頓挫と、米軍のソロモン諸島ガダルカナル島への侵攻が始まったことから失敗し、以後の米軍の飛び石作戦を許してしまう端緒となった地である。激戦後70年を経た因縁の地で、日米豪が歩調を合わせて中国の覇権に対処している現状を、泉下の英霊はどのように感じているのだろうか。おそらく安倍総理に国威発揚のための無言のエールを送っているものと思いたい。パプアニューギニアやソロモン諸島で戦った陸軍部隊には、ソ満国境から抽出された部隊が少なくないが、ソ連の後継であるロシアから平和条約交渉の加速化がポートモレスビーで持ちかけられたのも、何やら因縁めいて見えるところである。

 願わくば、拙文をお読み頂いた諸兄におかれては、太平洋の地図を開かれてニューブリテン島ラバウル、パプアニューギニア島ポートモレスビー、ソロモン諸島ガダルカナル島を見直していただいて、諸悪の根源とまで酷評される日本帝国陸海軍が、遥か本土を離れて酷暑炎熱の地で帝国の存亡を賭けて白人優位社会に挑戦した気概を発見して欲しいと願うところである。