日産のトップであるカルロス・ゴーン氏が逮捕されて数日が経過した。
逮捕容疑は、ゴーン氏と№2の所得隠し・日産社資産の私的流用の背任行為とされているが、フランスでは全く別の見方をしていることが相次いで報じられている。日産の経営母体とも称すべき提携先のルノー社の最大株主であるフランス政府がルノーに倍する日産の企業規模と販売実績を失いかねない事態と認識していることが原因で、ゴーン氏の擁護以上に氏の逮捕はルノー社による日産の吸収合併をを懸念する日本の謀略、とまで論調する向きもあるらしい。もともと社会主義色(社会民主主義)の強かったフランスでは他の西側国以上に国営企業が多いと認識していたので調べてみると、フランスはもとより他の国々でも考えていた以上に国営企業が多いことが判った。NHKと国立の大学・病院、一時的に政府の監督を受けている東京電力くらいしか思いつかない日本に比べて、エネルギー・交通・通信等の社会インフラ分野では各国が国有若しくは国営の機関を持ち、国民の生活基盤を支えている現実を知ることができた。NHKや国立大学を見ても、国は許認可権と財政支援によって穏やかな統制をするだけで経営に直接関与することは無く、株主として利益を還元させることもない。NHKにしても、聴取料の徴収を認めているだけで、放送内容が国の意見である必要もない。韓国を始め外国が日本の世論と政府見解を読み違える原因の一つが、NHKが国を代弁する国営放送と捉えていることにあるのかも知れない。フランスの例に戻れば、ルノー社を始めとする国営企業からは法人税の他、株主としての配当も歳入に組み込まれていると思うので、日産の離反によるルノーの不振は歳入減に直結する事態であり、国家がルノー社とゴーン氏擁護を主張するのは仕方のないところと思わざる獲ない。
ゴーン氏の逮捕を契機として各国の国営企業の実情の一端を調べてみての所感であるが、諸外国の実情を見る限り、かって政府の規制と3公社5現業の存在が民需と競争力を削ぐと社会主義政党までも主張して、その殆んどを民営化した選択は正しかったのだろうかと考えてしまう。