もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

APEC首脳宣言なしに思う

2018年11月19日 | 中国

 APEC首脳会議が、首脳宣言(共同宣言)を出せずに閉幕した。

 予測されていたとはいえ、議長国の首相が共同宣言を出せなかったのは「部屋にいた2人の巨人の所為」と公言する程、米中の隔たりは大きかったものと思われる。しかしながら、米中双方が今回の会議を評価していることから、米中は今回の会議自体を来るべき習主席の訪米・首脳会談の前哨戦若しくは瀬踏みと捉えていたものと思う。また、カーター前大統領の訪中等の動きも併せて鳥瞰すれば、関税戦争の落し処について水面下では何らかの進展があったのかも知れない.日本の外務省やメディアは重要会議後に共同宣言が出されることが会議の成功または重要問題の進展と捉えるのが一般的で、今回も同様の趣旨で成果が無かったとする報道もあるが、合意できなかったことにも相手国の姿勢と問題の隔たりを双方が共有できたという大きな成果があるのではないだろうか。外交と会談の成果を誇示したかった鳩山一郎・河野一郎コンビが、性急に1956年(昭和31年)10月19日に署名した日ソ共同宣言が、日本の主張を不明確にし、領土交渉を不毛なものにした経緯もそのことを示しているように思う。それはさておき、今回のAPEC首脳会議は日本にとって大きな収穫もあった。それは韓国首脳との会談・接触を断って、徴用工問題に対する明確な姿勢を韓国に伝えたことである。会談あるいは交渉に応じることは、何らかの解決策を双方で見出す努力に応じたものと解され、今回の安倍総理の処置は首脳会談で不快感を伝える以上のシグナルになったものと思う。また、国際会議の場で台湾代表に台湾への紐帯感を伝えたことも見逃せない成果であると思う。先のASEANでは一定の存在感を示し得た中国であるが、以後の世界的な中国の新植民地主義警戒感の広がりから、マレーシア・スリランカ・モルディブ・バングラディシュで対中依存警戒の機運が高まり、中国の一帯一路事業の縮小・破棄が相次いでいる現実を踏まえれば、中台関係に一歩踏み込で台湾擁護の姿勢を打ち出したことは賢明な選択であったと思う。

 その一方で、3兆円規模の対中スワップ協定締結に傾いていることは解せないことである。一帯一路構想による新植民地主義を警戒しつつ、その原資にもなり兼ねないスワップ協定を急ぐ戦略が凡人の自分には理解できないことである。安倍総理も、弱腰外交の根源である等方位外交の呪縛から抜け出せないのだろうか。