フランスからの独立を問うニューカレドニアの住民投票結果が報じられた。
最終結果は、独立反対56.4%、賛成43.6%と僅差ではあるがニューカレドニア住民はフランス特別区として留まる道を選択した。しかしながら、1853年にフランスが植民地として以来170年余りも経過していることもあり、当初は反対意見が70%近くに達するとみられていたために民族自治の要求の根深さに驚くものである。また、住民投票結果が公表された後には独立賛成派の一部住民が暴徒化した騒動も併せて報じられていることから、西太平洋の覇権を目指す中国の影をも窺えると考えている。近年、価値観の多様化に依るのであろうか、イギリスのEU離脱に見られるように意見が拮抗する重要施策を国民投票や住民投票、いわゆる直接民主制で決するケースが増えたように感じる。直接民主制は、利点として民意を定量的・直截的に把握・反映できる反面、それ自体がポピュリズムの極致であることから長期的な国家戦略構築には阻害要因となる懸念性が指摘されている。現にイギリスのEU離脱においては離脱賛成派が予想すらしていなかった関税や国境の問題が顕在化して海外企業の撤退による景気減速が既に始まっており、国民投票をやり直すべきとする意見すら出ている。このことは、政府が離脱に対するメリットとデメリットを網羅した正確なバランスシートを投票者に提示しなかったことが主因であり、EUへの拠出があれば福祉予算が賄えるとの賛成派指導部が流した偽情報が大勢を決したとされている。尤も賛成派指導者は離脱決定直後に表舞台から引退してしまったが。このように、良かれ悪しかれ2分した意見に決着をつけるためには直接民主制に依ることが最善であると思う。憲法改正案の承認しか国民投票制度(直接民主制)がない間接民主制の日本では、憲法改正に対して40年以上もの不毛な議論が続いている。改憲派・護憲派の双方が民意は我にありと主張し、世論調査も実施者の色合いによって微妙に異なっている。憲法改正や国民投票を議論するために衆議院に設置された憲法審査会も、昨年(平成29年)6月以降活動した形跡もなく、国家の理念を内外に示す憲法よりも片山さつき議員の看板の方が国家の大事と考える代議士(衆議院議員のみならず参議院議員も含む。)の政治姿勢に飽き足らなさを感じる。
日本でも、国民の請願によって国民投票できる直接民主制の拡大を図るべきではないだろうかと愚考するものである。まず改憲の内容よりも改憲の必要性の有無を問うことから始めるべきで、若し改憲が必要となった場合には国会は国民投票にかけるべき改憲案を国民に提示することが求められる。そうなれば、1年余も憲法審査会を放置するような怠慢は許されなくなると思うのだが。弱腰の政府と怠慢な野党議員の尻を蹴って、不毛の議論に決着をつける意味からも直接民主制(国民投票)の機会を拡大することが必要と思うのだが。