もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

軽減税率を考える

2018年11月09日 | 与党

 消費税率が10%に引き上げられるに際して、主として食料品に課税される消費税率を現行の8%に据え置くための軽減税率の導入が現実味を帯びてきた。

 朝野を挙げて消費税率引き上げ是非が問われていた2・3か月前の状況から、軽減税率の導入の是非・軽減税率制度設計の適否に論点が移り、最早消費税率引き上げの是非は争点ともならない事態となっている。邪推すれば困難から国民の目を逸らすために、より大きな困難を提示するという古典的ではあるが普遍的な手法に従った財務省のシナリオかと思うところである。軽減税率は既に多くの国々で実施されており、種々の問題はあるものの社会的弱者や低所得者保護のために存続されている制度であり、いかなる困難があろうとも導入しなければならない制度であると思う。いや、素直に書けば「極め付きの貧者」である自分としては、導入してもらわなければ餓死又は栄養失調の危険性すら懸念されるところである。軽減税率導入反対者の意見を要約すると、”軽減税率は貧者保護ではなく富裕層優遇である””対象品目が解り難い””喫食場所の違いによる税率が不明確”という点に集約されるのではないかと考えている。第1点の富裕者優遇であるが、同じ物を買った場合に払う消費税の所得に対する割合は富裕者に有利であるが、分限者と貧乏人が同じグレードの物を買うことは無く、不公平感は消費税が無い場合でも同じである。かって「貧乏人は麦を食え」と云った日本の宰相、「パンが無ければケーキを買えばいいのに」と云ったマリー・アントワネットと同じ思考であり、理論として成立しない。2・3点目の不明確とする意見であるが、諸外国で何とかしていることから、日本で克服できない問題ではないのではないだろうか。いや、日本人の緻密さと民度の高さを発揮して克服できるし、解決して欲しいと思うところである。軍隊組織の幕僚が作戦や対応策を考えるときに『適合性』『受容性』『可能性』の3点から検討することが求められる。このうち最も重視されるのは、この作業が目的達成のために必要で有効かという『適合性』であり、可能性を第1に考えることは厳に忌避すべきと教えられる。消費税率の引き上げは福祉政策拡充のために・提言税率は弱者保護の精神から見て『適合性』は極めて高く、他の選択肢はないのではないだろうか。

 いま種々の困難(可能性)さを挙げて提言税率導入に反対する政治家・ジャーナリストは、適合性を論じる前に可能性を優先する保守的かつ退嬰的な人物で、国民の幕僚として失格であると思うのだが。