ロシアが電子線とサイバー戦を一体化した新しいハイブリット戦を実行したことが報じられた。
ハイブリット戦は2014年に起きたロシアのウクライナ軍事介入(クリミア半島併合)時に行われたとされ、先ず電子戦でウクライナの軍用通信網を無力化し、次いで代替手段としてウクライナ軍が使用した携帯電話に偽の指示を送り付けてウクライナ軍をロシア軍が待機している場所に集結させて攻撃・殲滅するというものであったらしい。また、兵士の持つ携帯電話の位置情報を基に攻撃したともされている。これまでは、主として電子戦は軍に対して、サイバー戦は兵站を担う社会インフラ等の後方に対して行われるものとされていたが、サイバー戦の対象を戦闘員にまで拡大したことで、画期的な戦術とされている。偽情報を敵に信じさせることは「偽電」としてこれまでも行われていた。有名なところでは、ミッドウェー海戦で日本が大敗したのはアメリカの偽電に踊らされたことが、大きいとされている。既にミッドウェー海戦の前にアメリカ海軍は暗号解読によって、帝国海軍が大規模な作戦を準備していることを察知していたが、解読した電報では「攻撃目標は「AF」」とされているのみであるために、攻撃目標が何処か分からなかった。AFを陸軍と共同する南方地域とするもの、北方からの侵攻を防ぐためのアリューシャンとするもの、真珠湾への2次攻撃とするもの、等々の判断に分かれ、真珠湾攻撃で生き残った虎の子の艦隊を何処に配置すべきか迷っていた。そのためアメリカ海軍は、ミッドウェー基地から「浄水装置故障」の偽電を暗号化しない平文で発信した。すると海軍軍令部は連合艦隊に対して「AFでは飲料水が不足している模様」という情報を打電したために、アメリカ海軍は次の攻撃目標はミッドウェーと確信して、空母の避退等の処置を取り勝利したとされている。また、反戦ビラを撒いて銃後の厭戦気分を醸成したり、東京ローズに兵士の戦意を挫く放送をさせたり、等の宣伝戦は各国で行われていたが、ロシア軍のように直接戦闘員を誘導するものでは無かった。アメリカ軍の特殊部隊では兵士一人一人をインカムで繫いで指揮官がタイトにコントロールする方法が採られているが、この領域が敵に侵された場合は集団戦闘ができなくなることも予想される。既に中国軍もロシア軍と同程度のハイブリット戦術を実戦配備しているとも報じられているので、日本も対抗策を早期に整備する必要に迫られているように思う。
日常生活でも、偽サイトに誘導されて金銭を窃取されたり、風聞や誤情報を信じる以上に拡散に手を貸す等、ネット上の情報は無条件に・盲目的に信頼するという人が増えている。訓練を受けた兵士であっても軍の指揮管制が無力化されて行き場を失った場合には、唯一残された通信手段での指示に従うことは当然であろう。対抗策がどのような物になるべきかは思いもよらないが、軍事通信網のセキュリティと抗堪世の強化は早期にお願いするものである。