もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

日田市中津江村

2022年06月13日 | 社会・政治問題

 ネットで、中津江村の今昔を読んだ。

 記事は、2002年のサッカー・ワールドカップ日韓大会のカメルーン選手団のキャンプ地誘致の顛末を紹介する内容であったが、2005年の平成大合併で中津江村が日田市に吸収合併された後にも「日田市中津江村」とされていることに興味を持った。
 翻って我が寒村・郷里を眺めると、1954(昭和29)年に同じく寒村の隣村と合併して縁も所縁もない名称となり、更には2005年には隣接する市に吸収されて、二度目の村名は大字としてかすかに残るものの、最初の村名は痕跡すら無い。
 中津江村にあっては、カメルーン選手団のキャンプ地になったことで村名が流行語大賞に選ばれるほどの知名度を持ったために、日田市中津江村という市町村名がダブルという全国でも珍しい以上に、多分ないであろう地名表示となったものに思える。
 しかしながら、Wikipediaで中津江村の来歴を眺めると、1875(明治8)年に野田村と栃原村が合併して栃原村、梅野村と中西村が合併して合瀬村がそれぞれ成立。さらに1889(明治22)年に栃原村と合瀬村が合併して中津江村が誕生しているので、江戸時代の行政割から見れば4つの村の集合体であるらしい。それらの4つの地名は大字・小字となって残されているようであるが、ご先祖様の痕跡・遺徳・愛着を受け継ぐとともに、地域のアイデンティティを地名に残すためには「寿限無」的にならざるを得ないようである。
 そういえば、鹿児島県志布志町の支所は「鹿児島県志布志市志布志町志布志二丁目1番1号」であり、句読点やスペースを入れないと余所者には判読不能であると「マツコ・デラックス」の番組が紹介していた。

 邪馬台国探しの原点である魏志倭人伝を読み解くに際しては、記述された地点を現在の地名に比定する方法が一般的であり、そこそこの説得力を持っているが、弥生の大合併以前には「吉野ヶ里」は不弥国・投馬国はたまた邪馬壱国と呼ばれていたのかもしれないし、纒向遺跡の由来である旧磯城郡纒向村一帯が邪馬壱と呼ばれていたのかもしれない。
 地名については、織田信長が稲葉山城下の井ノ口を岐阜と改めたように為政者が人心を一新するために改名したり、天変地異を忘れるために住民が自然発生的に呼称を変更することもあったことだろう。近代の合併でもキラキラ志向や簡略化という利便性のために歴史を無視した・味も素っ気もない命名に奔ったことからも、弥生時代の地名が後世まで残されていない可能性は大いに考えられる以上に、残されていないほうが自然であるように思える。
 そんななかにあって、日田郡中津江村を日田市中津江村としたことには商業的価値重視以上の含蓄があったのかもしれないが、住民が履歴書に日田市中津江村と書いたら、多くの人事担当者は誤記と判断するのではないだろうか。と要らぬ心配。


ウクライナでの機雷戦

2022年06月12日 | 軍事

 ウクライナ事変での機雷戦が報じられている。

 ウクライナとロシアの双方が、機雷敷設は相手国の所業と応酬しているので、現時点ではどちらの国が敷設したのかは不明であるが、黒海に機雷が存在するのは間違いないように思える。
 素人観では、ロシアの黒海艦隊の自由度を制約するためであればウクライナが敷設したものであろうし、ウクライナの海上輸送を止めようとするものであればロシアが敷設したものであるように思えるが、黒海艦隊に巡航ミサイル搭載潜水艦が追加配備されたとの報道を見れば、敵の機雷敷設海域に潜水艦を増派することは合理性を欠くために、機雷の敷設海域と安全な可航水路を把握している側、すなわち機雷を敷設したのはロシアと観ることが可能であるように思う。
 一部の報道では、敷設された機雷は「浮遊機雷」とされている。
 浮遊機雷とは文字通り海面を漂う機雷であるが、海潮流や風向によってどこにあるか把握することができないために、場合によっては敷設側の艦船が触雷する危険がある。さらに中立国の艦船にも被害が及ぶ可能性があるので、浮遊機雷の使用については「自動触発海底水雷の敷設に関する条約(1907年ハーグ第8条)で、敷設後1時間で自沈若しくは無効とするように定められている。しかしながら、ハーグ条約に則った浮遊機雷の戦術的使用であっても、敷設日時が公表されることが無いために、ホルムズ海峡でイラン革命防衛隊が浮遊機雷を使用したとの情報があった際には、長期にわたって商船航路が閉鎖されたことがある。
 また、浮流機雷という言葉があって浮遊機雷と同義的に使用され、web辞典等にも同じ物とされているが、浮流機雷は計画的に構築した機雷原海底の重錘にワイヤ(係維索)で繋がれている係維機雷のワイヤが切れる等で海面を漂流している機雷を指している。海面を漂っている機雷であるので同じ物とも云えるが、戦術的には大きく異なるものである。

 浮流機雷・浮遊機雷のいずれであっても、機雷の発見や触雷を避けるためには長期にわたる警戒監視が必要となり、ウクライナ事変収束後にまで被害が及ぶる可能性がある。
 終戦から10数年も経った海上自衛隊の創設期にあっても、冬季の北西風によって日本海側にソ連からの浮流機雷漂着が相次いだために、掃海艇部隊は母港を離れて新潟港に冬季常駐するという「さくら作業」が行われていたと聞いた記憶がある。
 湾岸戦争でも、終結後に海上自衛隊を始めとする掃海部隊が機雷の除去に当ったことも記憶に新しい。

 


文芸春秋の筆禍賠償に思う

2022年06月11日 | 社会・政治問題

 東京地裁が、文芸春秋社に対して110万円の損害賠償を命じたことが報じられある判決

 いきさつは、令和元年に文春オンラインがタレントで医師の木下博勝氏のセクハラ疑惑を報じたことに対して、木下氏が名誉棄損と損害賠償1100万円を求めて提訴していたものである。
 判決では、記事の真実性は認められないと断定しているので、素人観には木下氏の完全勝利であるように思えるが、賠償額を請求額の1/10に減額査定したのは何故であろうかとの疑念が湧く。
 裁判所の判断については、刑法犯では検察の求刑を、民事訴訟においては原告の申し立てをそれぞれ下回るのが一般的である。刑法犯については改悛の情など諸々の情状を酌量し、民事判断においては被告・原告双方の瑕疵を案分・相殺するのであろうことは理解できるが、今回のように記事がフェイクであると断定したにも拘わらず、請求額を減額するのはいかなる根拠に依っているのだろうか。
 乱暴に言えば、検察や原告の請求をそのまま認めるのは裁判所・判事の沽券にかかわるという驕り若しくは独りよがりがあるのではないだろうか。
 2000年に公開されたハリウッド映画「エリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ主演)」は、大手企業から史上最高額の和解金を勝ち取った弁護士を描いた実話であるが、判決に際して陪審員は請求額に数倍する懲罰的賠償を加えるよう評決している。
 自分も、今回の文芸春秋社の筆禍においては、請求額に数倍する賠償判決が必要と思う。筆禍被害が後を絶たず、さらには文春砲なる言葉が闊歩する背景には、不確かな、伝聞による、眉唾な、情報であっても、それを記事にすることで得られる利益が、訴えられた場合に予想される賠償額の数倍であるというメディアの損得勘定が見て取れる。この「筆禍賠償額が雀の涙」の風潮は、国民にまで伝播してSNSにおける誹謗多発現象を育ててしまったように思える。
 一罰百戒の言葉があるように、裁判所の判決は犯罪者の贖罪以上に、同種犯罪抑止も期待していることを考えれば、筆禍を起こした企業がつぶれるほどの賠償が適当と思える。こう書けば「厳罰化はメディアを委縮させて言論・報道の自由を損なう」の常套句が聞こえそうであるが、自由には責任を伴うことを思えば加害者擁護に他ならないと思う。

 裁判官に対しても一言。
 近年、保釈した被疑者の逃亡や逃亡後の犯行が相次いでいるが、保釈を決定した判事の名前、保釈判断の根拠・適否、は明らかにされないし、折に触れて当事者の説明責任を求めるメディアも判事に舌鋒鋭く説明を求めることもしない。
 また、保釈中の逃亡については幇助者を含めて処罰規定が無いと聞いているが、それもあってだろうか保釈中のゴーン被告の逃亡に手を貸したであろう広中弁護士は指弾されることもなく、本人も小便を掛けられた蛙ほども動じていないように見受けられる。


ノルウェー王女とシャーマン

2022年06月09日 | 欧州

 ノルウェー王室のマッタ・ルイーセ王女が、交際中のアメリカ人シャーマンと婚約したことが報じられた。

 王女は、第4位の王位継承順位にあり、私生活では2016年に離婚して今回は2度目の結婚となるそうである。
 結婚相手のシャーマンはハリウッドセレブを中心に多くの信奉者がいるとされるが、王女自身もスピリチャル(霊感?)な能力があるとしていることから、意気投合したものであろうか。
 高貴な女性と霊的男性の結びつきと聞いて、短絡的に称徳天皇と弓削道鏡、アレクサンドラ皇后と怪僧ラスプーチンが浮かんだが、そのいずれもが政情を混乱させ、ラスプーチンに至ってはロシア帝国崩壊の原因となったとされている。ノルウェーの現状・政体から云って、王女の結婚が直ちにノルウェーを混乱させるとは思えないが、相手がシャーマン(霊媒師)と聞けば、何やらの曲折の予感がする。
 オーム真理教の男性信者があれほどの荒唐無稽な犯罪を引き起こしているので、男の一端に連なる者として大きな口は叩けないが、上記3件には「女性の占い好き・神秘性好き」要因があるのではと思う。その性向が理解できない男性は、道鏡とラスプーチンが女性の崇拝を得て大きな政治権力を握る陰に、納得しやすい下ネタ都市伝説を作り上げて、1件落着としていたようである。
 ウイキペディアでは「シャーマン」を、《トランス状態(通常とは異なる意識)に入って、超自然的存在である神や精霊、死者と直接接触・交流・交信する役割を主に担う役職。呪術者・巫女・祈祷師のこと。》《シャーマニズムは原始宗教の一つである》と解説し、日本の例として、過去の卑弥呼や神功皇后を例挙するとともに、現代のアイヌの「トゥスクル」、下北半島恐山の「イタコ」、沖縄県周辺の「ユタ」もシャーマンに属するとされている。

 超常現象や心霊現象のTV番組があると、コッソリ録画して深夜に一人で観る自分としては、エスパーやシャーマンなどの特殊能力を持つ人は存在するであろうと思っており、宗教の預言者も面壁9年の思索で悟りを得た達磨大師よりも多くの教義を極めて短時間で会得していることを考えれば、超常からの啓示を受けた可能性も完全に否定できないように思っている(教義を信じはしないが)。
 英国エドワード8世に王冠を捨てさせたシンプソン夫人、ヘンリー皇子を篭絡したメーガン妃といずれもがアメリカ人であることを思えば、ルイーセ王女の将来に危うさを感じるのは自分だけではないだろう。
 遠い異国のことはさて置いても、我が皇室もなになら時代の波に曝されているの危惧はあるが。


骨太の方針を読んで

2022年06月08日 | 防衛

 閣議決定された「骨太の方針」を読んだ。

 これまで多くの自由主義国家と自民党政権が推し進めてきた「新自由主義的小さな政府」の希釈・修正を目標とし「岸田ドクトリン」と位置付けられることを期待してのもので、記述された全てが今すぐ実現するものではないが、製造業とITを強靭化してサプライチエーンからの中国切り離しを達成するために頑張って欲しいものである。
 特に、市場原理に期待していたために悪化した脱炭素推進や経済格差の是正・解消のため、民間に対して政府が一定の関与に踏み切らざるを得ない現状では、「ある程度の大きな政府も已む無し」と考えざるを得ないものの、枝野構想ほどには関与して欲しくないと思っている。
 外交については、附則的扱いではあるが台湾に言及したことは評価できるものと思う。日本最西端の与那国島は台湾島から約110kmで、台湾有事にあってはそれこそ短距離ミサイルの射程圏内にあるのみならず、台湾人にとっては最も近い避難先であることを思えば当然に心しておかなければならないと思う。
 安全保障については、来年度予算の積み上げについて、防衛費を概算要求の枠から除外したことも大きいと思っている。防衛費については常々「世界〇位の額」と取り沙汰されるが、多くの国と違って日本の防衛予算は自衛隊員の「人件・糧食費45%」、民間に償還される「基地対策費10%」を含んでいるために、真の防衛費は半額であるとされてきた。今回の措置によって新装備の取得や弾薬備蓄が可能となるために、ミサイル防衛力や継戦能力向上の緒に就けると思っているが、これらは単年度で実現できるものではなく、少なくとも数年は継続して欲しいものである。

 政府の「骨太方針」が閣議決定された背景には公明党(山口那津男代表)の軟化・転向もあると囁かれている。改憲と防衛費増額には慎重と云うよりも反対の同党であるが、究極のポピュリズム・風見鶏政党であればウクライナ事変を契機とした突風に敏感に反応しただけで、本質は変わらないように思える。
 香港式による中国への同化・吸収を目指すとしていた台湾国民党であるが、親中では統一選挙を戦えないとの思惑から親米姿勢を示すために代表団をアメリカに派遣したものの、アメリカ政府は冷淡で閣僚はおろか主要官僚にも面会できていないようである。
 政党要件の維持を賭ける瀬戸際社民党は「戦争反対・9条改憲阻止」で今回の参院選を戦うとしている。
 政争・政局しか眼中にない立憲民主党は、細田衆院議長不信任を国会に問うとしているが、文春砲のスキャンダル疑惑報道のみでする不信任案提出には維新・国民民主は棄権する可能性が高く、もしかすると反対に回るかもしれな様相を見せている。
 世界の変化に対して、真剣に幹逢う人、形だけでも何とか追随しようとする人、変化が無いものと振舞う人、従来に固執する人、まさに十人十色の生き様を見せてくれる。