もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

機密資格法制化を急げ

2022年06月20日 | 防衛

 政府が機密資格法制化に重い腰を上げたことが報じられた。

 機密資格の制度化は5月に成立した「経済安保推進法」に盛り込むことができなかったが、来年の通常国会に同法改正案として成立を目指す構えとされている。
 日本は国家反逆罪や防諜法を持たない先進国では稀有な存在で世界からスパイ天国と認識され、日本を通じて流出した友好国の一般・軍事情報も少なくないとされている。そのため、アメリカからの武器調達に関しても最先端バージョンは拒絶されて型落ち品しか取得できないケースも囁かれ、テロ情報などは「日本に伝えたら世界にアナウンスするのと同じ」ともされている。
 政府・自衛隊・警察における秘密保持がこの程度であれば、民間企業における秘密保全意識は極めて薄いのではないだろうか。
 自衛隊では、最先端兵器の管理・運用に従事するためには審査を経て資格を得ることが必要で、一蓮托生が建前の自衛艦にあっても有資格者にのみ立ち入りが許可され、有資格者以外は立ち入ることができない区画が設定されている。近年は、民間企業でも枢要な区画や建物全体を電子扉等によって局外者を隔離していることも増えているが、中で勤務する社員にも電子扉(秘密取扱資格)を付けている会社は多くないだろうと思っている。
 政府の考える「機密資格」が「どのようなものになるのか」、「どれほどの範囲」に設けるのは、今後の調査・検証・検討に俟つとされているが、「スパイ天国」の汚名返上のためにも実効性のあるものにして貰いたいものである。

 一般的な資格審査について考えれば、報じられているように係累、親族、交友関係、金銭感覚、飲酒嗜好・・等にも及ぶ幅広い身体検査となるのだろうと思える。
 早速にも「プライバシーの侵害」「個人情報の窃取」「思想・信条の自由侵害」・・・の声も聞こえるが、それらの諸々が国益に優先するものではなく、逆に言えば「それらは国家が存立してこそ保証されるもの」である。もし、それらの要因が国益に優先すると考えるならば、機密資格が要らない職業と生き方を選択すれば良いだけのことである。
 訪問・愛読するブロガーは、これらに対する欲求の高い人を「獅子身中の虫」と記されるが、国家機密の中枢から「獅子身中の虫」を排除することが強靭な国家建設と日本的文明維持には不可欠であることを思えば、機密資格の法制化はそれらのための第一歩であると考える。

 しかしながら、厳格な法制下にあっても、ゾルゲ事件は起き、プロヒューモ事件は起き、スノーデン情報漏洩事件は起きたことを思えば、一般市民も、中国人に水源地を売らない、慰安婦強制連行の火付け役にはならない程度の節度を身に着けることが必要であるように思う。


低金利政策転換では

2022年06月19日 | 与党

 本朝のフジTV番組で、各党党首の揃い踏みを見た。

 興味を持ったのは、冒頭で議論された「日銀の低金利政策維持の是非」についてである。経済については平均以下の知識・理解力しかないので、それらのことについてはこれまで耳と口を閉じていたが、今回の各党の主張が異なることを見るだけで、「恐らく正解は誰にも判らないだろう」ことだけは理解できた。
 低金利政策が導入されたのは、景気刺激策であると同時に、政策導入以前に世情を賑わした銀行による「貸し渋り」「貸し剥がし」によって、零細・中小企業の倒産が相次ぎ、時として黒字倒産すら起きたことに対する弱者救済策でもあったのではないだろうか。
 番組中、維新の松井代表が「大阪市は中小企業が多く、低金利政策の放棄は彼等にとって死活問題」と述べたことも、「貸し渋り」「貸し剥がし」の再来を恐れてのことであろうと勝手に推測した。
 現在の物価上昇が、低金利政策に起因する急激な円安によって引き起こされた面はあると思うが、それ以上にサプライチエーンからの中国切り離しがボディーブローのように効いてきたことと、ウクライナ事変による物流の混乱によってエネルギーと農産物が高騰したことによって引き起こされたものではないだろうか。
 であるとするならば、低金利政策の見直しだけで即効的に円安と物価高騰が解消されるとは思われず、円高による輸入食品の値下がりによって物価が安定するには更に長時日を要することになって、市中金利の上昇による零細・中小企業者の苦難の方が先に来るようにも思える。

 本日の産経新聞は、来る参院選における9党の公約を見開き2面で掲載している。自分の投票先選択の主たる基準は、憲法と安全保障であるが、経済政策に関しても勉強してみようかと思っている。
 しかしながら、経済の専門家ですらバブル崩壊やリーマンショックを予測できなかったように、生き物のような現代経済を正確に予測し、治療薬を知悉している人はいないであろうことから、自分にとって経済は「不可解!。解からん!」で終わりそうな気配濃厚以上に、確実であるようにも思えるが。


細田議長の文春砲提訴に思う

2022年06月18日 | 与党

 細田博之衆院議長が、女性記者へのセクハラ疑惑を報じた週刊文春(文芸春秋社)に2,200万円の損害賠償や謝罪広告の掲載などを求め、東京地裁に提訴したことが報じられた。

 細田議長のセクハラ疑惑に対しては、永田町では「あの人ならば、もしや?」という空気もあったようであるが、疑惑が真実かどうかは分からない。
 自分は報じられた当初から、記事が匿名(全国紙政治部女性記者)の伝聞を基としており、かつ直接被害を訴える人が明らかでないことから「眉唾の可能性あり」と思っていたが、市井では事実と取り沙汰され、立憲民主党でも議長不信任要求の根拠の一つに挙げていたと理解している。今回の提訴を好意的に観れば、細田氏が法廷・白日の下に審理されることを厭わない姿勢を示したもので、やや細田議長有利の感が否めない。
 また、週刊文春編集部が「国権の最高機関のトップである議長が公の場で一度も説明しないまま提訴に至ったのは残念。記事には十分自信を持っている」とコメントしたとされているのも、おかしな話である。文春は、この記事によって何を伝え・訴えたかったのだろうか。考えられるのはただ一つ「議長の公の場での説明による混乱」であり、自社の記事が「その発火点になることで、売り上げを期待する」ことに過ぎないように思える。
 数年前に、自分自身を明かした#MeTooで社会的地位にある人のセクハラを追及することが大きな潮流となり、日本でも勇気ある女性が声を挙げたことがあったし、その風潮を否定するものではないが、俎上に上げられた著名人は社会的信用を問われるとともに社会人としての存在すら否定されることを考えれば、今回の伝聞を基にした議長攻撃は#MeTooとは似て非なるものに思える。

 かっては女性擁護のために、匿名による告発や痴漢被害などは「100%真実」とすることが定着していたために、少なからぬ痴漢冤罪者を出したが、現在ではそれらに対しても客観的に捉えるように修正されつつあると思っている。
 件の「全国紙政治部記者」が真に社会正義を求めるジャーナリストであるならば実名を明かして告発すべきであり、文春が社会公器の自覚を持っているならば情報提供者を説得して実名報道すべきであると思う。遮蔽物の陰に身を潜めて発射する文春砲では、命中もままならずの無駄弾に過ぎず、却って社会を混乱させることだけを期待した空砲にも思える。

 女性からは総スカンを食らうであろう無駄弾を一つ。
 フランス艶笑小咄では、小間使いから性被害の相手と名指し逮捕された老紳士が、疑惑が晴れた後も「犯人は自分」と云い募る様がある種の悲哀を込めて語られる。
 細田議長は1944(昭和19)年生まれの78歳である。自分を含めた大方の同世代は既に排尿機能さえ覚束ないと思うが、そんな中でのセクハラ疑惑は細田氏にとっては「男の勲章」とすべきかもしれない。


知床遊覧船事故の責任に思う

2022年06月17日 | 社会・政治問題

 国交省は事故船の運航会社の「知床遊覧船」に対し、16日付で事業許可を取り消した。

 運航会社の桂田社長は、処分に先立つ「聴聞」に陳述書を提出し、大意「責任は国にもある。事故責任を事業者だけに押しつけるのは、国に対する世論の批判を回避するための見せしめだ」と不服を申し立てたと報じられている。
 これまでの報道では、桂田社長の運航管理者としての虚偽申請、運航当日に運航管理者が不在、通信設備故障、定点報告未実施と運行記録未記入、等の杜撰な管理態勢が指摘され、さらには、同業者に先駆けての営業開始や、漁師も出港を見合わせる海象下に出港を強行した事なども報じられている。
 にも拘わらずに、桂田社長が「国の責任」とする根拠は何であろうかと考えれば、「自分と会社のルール無視を見抜けなかった責任」との思いだろうか、はたまた一部識者から出された「国の安全管理体制不備」なる意見に乗っかって活路を見出そうとしたものであろうかと見るが、大方の賛同は得られないものだろう。
 国が示す「基準」は、原発のように事故が起きれば致命的被害が予想されるものに対しては最高の基準を示すが、零細企業まで参入する業種に対しては最低基準である場合が殆どではないだろうか。
 希望的見方とされるかもしれないが、遊覧船業界にあっても良心的な業者は、国の安全基準を超える態勢で運航に当っているものと思いたい。そんな中にあって、最低基準さえ守らなかった桂田社長が「国の責任」を云々することには、限りない不快感を持つものである。

 かっては、国の基準と許認可制度が官民の癒着、新規参入による自由競争を阻んで独占・寡占状態を産むとともに、零細資本の参入を困難にしているとの主張から、世を挙げて規制撤廃に取り組んできたが、それを求めた背景には日本人の遵法意識や商道徳が健全であるとの信仰があったものと思っている。
 しかしながら、今回の当事者の言、申請量を超える熱海の盛り土、日本各所での産廃違法投棄、多発するコロナ給付金詐欺の世情等を見ると、性善説に立った行政は限界に近付いているように思える。


高市・小川政調会長

2022年06月14日 | 与党

 日曜日のフジTVの番組に、自民の高市早苗・立民の小川淳也両党政調会長が出演し、当面の政策を開陳した。

 政策の是非・優劣については、支持者によって判断が異なるので置くとして、両議員の存在感については高市氏が小川議員を圧倒していたように感じた。もし、総理大臣を直接選挙で選び、両議員が党を代表して立候補し、この番組をテレビ討論と仮定するならば、高市氏に地滑り的支持が集まるであろうと思った。
 高市氏は、質問に対して端的に、時に数字を織り交ぜて政策を訴えるのに対して、小川氏においては結論に至る背景や過程の説明が冗長で、時として場違いの政権批判を滲ませるという、予算委員会の質問に近い対応であった。
 当初は劣勢であったケネディが大統領選に勝利したのは、世界初のテレビ討論でのケネディの若さと話術に対して老練ニクソンの横柄な態度の対比が大きかったとされる。
 高等小学校の学歴しかない田中角栄氏が選挙民の心を掴んだのは、誰でも理解できる平易な言葉での演説であったとされるとともに、大臣として東大出の官僚を薬篭に入れ得たのは一度説明を受けた数字と報告を全て記憶していたこととされる。
 政治家に必要な資質を考えれば、高邁な志向と高潔な人格は勿論であるが、自分レベルをも納得させる話術と質問に対して逡巡なく即答できる資質も不可欠で、さらに欲を言えば自分レベルより高度な知識を持つ聞き手に対してはさりげなく・嫌味なく数字を織り交ぜることができることではないだろうか。

 通常国会も15日に会期末を迎えるが、今回政府が提出した61法案のうち既に58法案が成立し、立民が内閣・衆院議長の不信任案提出を断念したこともあって、残る3件も成立する見込みと伝えられている。平成8年以来の政府・与党完全勝利の陰には、重要法案につぃては野党提出の対案も同時審理したために、野党が審議拒否できなかったことが大きいとされるが、立民が対案型政党への脱皮に失敗したことも大きい様に思う。過去、政権攻撃を文春砲を使用したスキャンダル攻撃の一手に依存していたこともあって、所属議員の政策立案力は対案策定のレベルにまで育っていなかったのではないだろうか。加えて、政策の要である小川政調会長を始めとする首脳の表現力では、野党を結集することができなかったように思える。
 維新幹部が「夏には盆踊り、会期末には不信任案」と嘆いたとされるが、旧態依然の姿勢・戦術に対して「言い得て妙」と思える。