政府が機密資格法制化に重い腰を上げたことが報じられた。
機密資格の制度化は5月に成立した「経済安保推進法」に盛り込むことができなかったが、来年の通常国会に同法改正案として成立を目指す構えとされている。
日本は国家反逆罪や防諜法を持たない先進国では稀有な存在で世界からスパイ天国と認識され、日本を通じて流出した友好国の一般・軍事情報も少なくないとされている。そのため、アメリカからの武器調達に関しても最先端バージョンは拒絶されて型落ち品しか取得できないケースも囁かれ、テロ情報などは「日本に伝えたら世界にアナウンスするのと同じ」ともされている。
政府・自衛隊・警察における秘密保持がこの程度であれば、民間企業における秘密保全意識は極めて薄いのではないだろうか。
自衛隊では、最先端兵器の管理・運用に従事するためには審査を経て資格を得ることが必要で、一蓮托生が建前の自衛艦にあっても有資格者にのみ立ち入りが許可され、有資格者以外は立ち入ることができない区画が設定されている。近年は、民間企業でも枢要な区画や建物全体を電子扉等によって局外者を隔離していることも増えているが、中で勤務する社員にも電子扉(秘密取扱資格)を付けている会社は多くないだろうと思っている。
政府の考える「機密資格」が「どのようなものになるのか」、「どれほどの範囲」に設けるのは、今後の調査・検証・検討に俟つとされているが、「スパイ天国」の汚名返上のためにも実効性のあるものにして貰いたいものである。
一般的な資格審査について考えれば、報じられているように係累、親族、交友関係、金銭感覚、飲酒嗜好・・等にも及ぶ幅広い身体検査となるのだろうと思える。
早速にも「プライバシーの侵害」「個人情報の窃取」「思想・信条の自由侵害」・・・の声も聞こえるが、それらの諸々が国益に優先するものではなく、逆に言えば「それらは国家が存立してこそ保証されるもの」である。もし、それらの要因が国益に優先すると考えるならば、機密資格が要らない職業と生き方を選択すれば良いだけのことである。
訪問・愛読するブロガーは、これらに対する欲求の高い人を「獅子身中の虫」と記されるが、国家機密の中枢から「獅子身中の虫」を排除することが強靭な国家建設と日本的文明維持には不可欠であることを思えば、機密資格の法制化はそれらのための第一歩であると考える。
しかしながら、厳格な法制下にあっても、ゾルゲ事件は起き、プロヒューモ事件は起き、スノーデン情報漏洩事件は起きたことを思えば、一般市民も、中国人に水源地を売らない、慰安婦強制連行の火付け役にはならない程度の節度を身に着けることが必要であるように思う。