この文章は、私がいつも転載させて頂いているNPO法人の「札幌・障害者活動支援センターライフ」の機関誌『アドボケイト』(第104号、2009年03月10日)に掲載された文章「事務局見解・障害者自立支援法見直しでも何も変わらない就労継続支援A型」を、編集者の了解を得たので、私が改行や中見出しを変更するともに、私の感想をつけて転載したものである。この機関誌も編集委員会方式をとり、どの号も実際に働いている多くの人たちが自分たちの思いや気づきを書いている。とくに、本号では障害者自立支援法における「暫定支給決定」に関連して「労働の暫定??」という下斗米貫行さんの文章も興味深い。さらに札幌市の「障害者交通費助成制度」について交わされた議論やNHK受信料免除に関連して「書類至上主義」について書かれた文章など、制度論についても詳しく載っている。制度についての話に興味を持った人など、ぜひ一読してほしい。障害者(この機関誌では一貫して「障がい者」と表現している。私は以下も含めて「障害者」と表現する)にかかわる事柄について、意見が率直に表現されている。
■ 障害労働者は「利用者」の位置づけで変化なし
「(就労継続支援)A型利用者(雇用有)は、労働基準法上の労働者であることから、雇用するにあたっては、労働基準関係法令を遵守すること」。この文章は、2008年7月1日、厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長名によって出された文章です。この文章には矛盾を覆い隠そうとする厚労省の稚拙な意図があります。
A型事業所に雇用された障害者が、労働基準法上の労働者であれば、「利用者」という規定は成り立たないはずです。通常の企業であれば、「利用者」という「労働者」の概念はありません。あるとすれば、業務委託契約者だったり、企業内の施設のなかで利用料を払って請負の仕事などをおこなう個人事業主等です。この場合、当然ですが「労働基準法上の労働者」ではありません。
すなわち、就労継続支援A型事業所に働く障害労働者には、「利用者と労働者の二重仮面」をかぶせるという、労働基準法をも超越した「超法規的措置」なんだということです。この点は、「利用料の不払い」という障害者の行動によってその問題点が明らかになってきています。「措置から契約へ」を謳った社会福祉基礎構造改革、その流れに沿って出てきたと思われる「障害者自立支援法」の理念そのものに反する「超法規的措置」だと思います。
■ 障害者を労働者とみなさない中央政府に従う自治体
そして2009年2月24日、厚労省通達にのっとり、札幌市は各障害福祉サービス事業所代表者宛てに下記のような文章を発行してきました。見出しは「就労移行支援(養成施設)及び就労継続支援A型(雇用有)に係る暫定支給決定の取り扱いについて」として、「標記の件について、共同生活援助を除く訓練等給付については、支給決定に当たり、当該サービスの利用が適当かどうかを判断するための期間として最大2カ月の暫定支給決定期間を設定し、訓練等を判断した後、本支給決定を行っております。この度、本市においては就労移行支援事業(養成施設)及び就労継続支援A型事業(雇用有)に係る支給決定については、下記のとおり暫定支給決定を経ずに本支給決定を行える取り扱いといたしますので、通知いたします」というものです。
すなわち、厚労省や札幌市によれば、暫定支給決定期間は、A型といえども、雇用期間ではなく訓練期間という認識のようです。であれば、その期間は、雇用契約は存在しないことになり、A型(雇用有)ではなく就労移行支援(養成施設)事業になるはずです。特例としてA型(雇用有)の暫定支給期間は、移行支援事業とするのであれば、まだ納得できるのですが、一方では、ハローワーク通じて雇用契約を結び、雇用契約に基づいて障害者は労働を提供し、事業主は賃金を支払うという関係を遵守させておきながら、その期間は労働契約としては認めないと厚労省は認識しているようです。
私たちは、使える制度を活用しながら障害のある人、ない人が共に働く場の創出を模索してきました。当然、雇用契約を結び、最低賃金や有給休暇も保障しあいながら事業を続けています。その制度の一つに、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」というものがあります。それは、「高年齢者、障害者等の就職が特に困難な者をハローワーク(公共職業安定所)又は職業安定局長の定める項目に同意し、本助成金に係る取扱いを行う旨を示す標識の交付を受けている有料・無料職業紹介事業者の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して、賃金の一部を助成するもので、これらの者の雇用機会の増大を図ることを目的としています」というものです。 つづく
■ 障害労働者は「利用者」の位置づけで変化なし
「(就労継続支援)A型利用者(雇用有)は、労働基準法上の労働者であることから、雇用するにあたっては、労働基準関係法令を遵守すること」。この文章は、2008年7月1日、厚労省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長名によって出された文章です。この文章には矛盾を覆い隠そうとする厚労省の稚拙な意図があります。
A型事業所に雇用された障害者が、労働基準法上の労働者であれば、「利用者」という規定は成り立たないはずです。通常の企業であれば、「利用者」という「労働者」の概念はありません。あるとすれば、業務委託契約者だったり、企業内の施設のなかで利用料を払って請負の仕事などをおこなう個人事業主等です。この場合、当然ですが「労働基準法上の労働者」ではありません。
すなわち、就労継続支援A型事業所に働く障害労働者には、「利用者と労働者の二重仮面」をかぶせるという、労働基準法をも超越した「超法規的措置」なんだということです。この点は、「利用料の不払い」という障害者の行動によってその問題点が明らかになってきています。「措置から契約へ」を謳った社会福祉基礎構造改革、その流れに沿って出てきたと思われる「障害者自立支援法」の理念そのものに反する「超法規的措置」だと思います。
■ 障害者を労働者とみなさない中央政府に従う自治体
そして2009年2月24日、厚労省通達にのっとり、札幌市は各障害福祉サービス事業所代表者宛てに下記のような文章を発行してきました。見出しは「就労移行支援(養成施設)及び就労継続支援A型(雇用有)に係る暫定支給決定の取り扱いについて」として、「標記の件について、共同生活援助を除く訓練等給付については、支給決定に当たり、当該サービスの利用が適当かどうかを判断するための期間として最大2カ月の暫定支給決定期間を設定し、訓練等を判断した後、本支給決定を行っております。この度、本市においては就労移行支援事業(養成施設)及び就労継続支援A型事業(雇用有)に係る支給決定については、下記のとおり暫定支給決定を経ずに本支給決定を行える取り扱いといたしますので、通知いたします」というものです。
すなわち、厚労省や札幌市によれば、暫定支給決定期間は、A型といえども、雇用期間ではなく訓練期間という認識のようです。であれば、その期間は、雇用契約は存在しないことになり、A型(雇用有)ではなく就労移行支援(養成施設)事業になるはずです。特例としてA型(雇用有)の暫定支給期間は、移行支援事業とするのであれば、まだ納得できるのですが、一方では、ハローワーク通じて雇用契約を結び、雇用契約に基づいて障害者は労働を提供し、事業主は賃金を支払うという関係を遵守させておきながら、その期間は労働契約としては認めないと厚労省は認識しているようです。
私たちは、使える制度を活用しながら障害のある人、ない人が共に働く場の創出を模索してきました。当然、雇用契約を結び、最低賃金や有給休暇も保障しあいながら事業を続けています。その制度の一つに、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」というものがあります。それは、「高年齢者、障害者等の就職が特に困難な者をハローワーク(公共職業安定所)又は職業安定局長の定める項目に同意し、本助成金に係る取扱いを行う旨を示す標識の交付を受けている有料・無料職業紹介事業者の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して、賃金の一部を助成するもので、これらの者の雇用機会の増大を図ることを目的としています」というものです。 つづく