■ 働いている障害者は利用料を払わない運動をした――大谷のコメント(その2)
働いている障害者が働く事業所に利用料を払う仕組みについて、NPO法人「札幌・障害者活動支援センター・ライフ」の事業所で働いている障害者たちが、利用料を払わない運動を展開した。その発端とその後の経過については、このページでも紹介した(最初は「労働者でありながら1割負担は不当と支払い拒否に立ち上がった障害者たち」、その後は「働く場での利用料金不払いを継続する障害者たち」として)。
その後、ほぼ2年が経過したが、働いている障害者たちの求める見直しは行なわれなかった。やはり、上記の「事務局見解」でも書かれているとおり、厚生労働省や自治体行政は、障害者が労働者であることを認めない基本方針があるようだ。障害者自立支援法の条文では「自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう」さらに「障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことにできる地域社会の実現に寄与する」(ともに第1条)と、障害者が当たり前に地域で暮らせるように支援すると、条文では謳っている。
むしろ、矛盾を覆い隠すかのように、暫定支給期間を経ずに本支給決定を行なうという方法を採用してきた。下斗米さんが書いているとおり、「労働の暫定」(私の表現ではすぐ「暫定の労働」と思いつくが)という表現が当てはまる。まさに障害の有無に関係なく共に働いている事業所を法的にどう扱ってよいのか、厚生労働省も混乱していると同情する。
■ 自治体から中央政府の姿勢を変革していく試み――大谷のコメント(その3)
障害の有無には関わりなく共に働いて活動を継続していく社会的な営みを支援する制度は、自治体のほうから先行する。これはまさに中央政府を規制する差別禁止法が作られないときに、地方自治体から差別を禁止する条例が先に作られるのと軌を一にする。千葉県で「障害のある人もない人も暮らしやすい千葉県づくり条例」が多くの努力で作られたように。
中央政府を内外から挟み撃ちにする展望もみえる。国連で「障害者権利条約」が制定されたのとほぼ同じ時に、千葉県でも「障害者権利条例」が制定された。
社会的事業所についても、大阪府の箕面市、滋賀県、北海道の札幌市と日本の中で財政的には苦しい自治体で、いろいろと工夫されている。イタリアやヨーロッパ諸国でも社会的事業所や協同組合の経験が積み重ねられている。人びとに使いやすい新しい制度は、地方分権によって国内的にもすすめられている。また、国連やEUという国境を越えても、工夫が行なわれている。
その意味で、障害者自立支援法という現状の制度が、本来持っていると思われる理念とそれぞれの場所での工夫と矛盾していることを、具体的に指摘している当人たちの行動は、貴重なものである多分、こうした行動を支えている事業者からも、栄養分を得ているのであろう。そうした行動は、より各地に広がるであろうし、国際的にも支持を得ると思う。 終わり。
働いている障害者が働く事業所に利用料を払う仕組みについて、NPO法人「札幌・障害者活動支援センター・ライフ」の事業所で働いている障害者たちが、利用料を払わない運動を展開した。その発端とその後の経過については、このページでも紹介した(最初は「労働者でありながら1割負担は不当と支払い拒否に立ち上がった障害者たち」、その後は「働く場での利用料金不払いを継続する障害者たち」として)。
その後、ほぼ2年が経過したが、働いている障害者たちの求める見直しは行なわれなかった。やはり、上記の「事務局見解」でも書かれているとおり、厚生労働省や自治体行政は、障害者が労働者であることを認めない基本方針があるようだ。障害者自立支援法の条文では「自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう」さらに「障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことにできる地域社会の実現に寄与する」(ともに第1条)と、障害者が当たり前に地域で暮らせるように支援すると、条文では謳っている。
むしろ、矛盾を覆い隠すかのように、暫定支給期間を経ずに本支給決定を行なうという方法を採用してきた。下斗米さんが書いているとおり、「労働の暫定」(私の表現ではすぐ「暫定の労働」と思いつくが)という表現が当てはまる。まさに障害の有無に関係なく共に働いている事業所を法的にどう扱ってよいのか、厚生労働省も混乱していると同情する。
■ 自治体から中央政府の姿勢を変革していく試み――大谷のコメント(その3)
障害の有無には関わりなく共に働いて活動を継続していく社会的な営みを支援する制度は、自治体のほうから先行する。これはまさに中央政府を規制する差別禁止法が作られないときに、地方自治体から差別を禁止する条例が先に作られるのと軌を一にする。千葉県で「障害のある人もない人も暮らしやすい千葉県づくり条例」が多くの努力で作られたように。
中央政府を内外から挟み撃ちにする展望もみえる。国連で「障害者権利条約」が制定されたのとほぼ同じ時に、千葉県でも「障害者権利条例」が制定された。
社会的事業所についても、大阪府の箕面市、滋賀県、北海道の札幌市と日本の中で財政的には苦しい自治体で、いろいろと工夫されている。イタリアやヨーロッパ諸国でも社会的事業所や協同組合の経験が積み重ねられている。人びとに使いやすい新しい制度は、地方分権によって国内的にもすすめられている。また、国連やEUという国境を越えても、工夫が行なわれている。
その意味で、障害者自立支援法という現状の制度が、本来持っていると思われる理念とそれぞれの場所での工夫と矛盾していることを、具体的に指摘している当人たちの行動は、貴重なものである多分、こうした行動を支えている事業者からも、栄養分を得ているのであろう。そうした行動は、より各地に広がるであろうし、国際的にも支持を得ると思う。 終わり。