◇民間施設にも協力要請
東日本大震災の発生を受け、県は10月、東海・東南海・南海地震の新たな津波の想定を発表した。市域全体の約3分の1が海抜0メートル地帯の尼崎市では、津波で浸水する可能性がある「津波被害警戒区域」は82%にのぼる。新たな防災への取り組みが迫られている尼崎市の対応を探った。【生野由佳】
これまで、県はマグニチュード(M)8・4を前提に津波を算定。尼崎市の場合は2・9メートルの津波が、110分後に阪神間の沿岸部に到達し、防潮堤が十分に機能すれば被害はない、という想定だった。
しかし、M9・0級の地震を想定した今回の発表では、津波の高さを暫定的に往来の約2倍に設定し、被害状況を算出した。尼崎市は3パターンの被害を想定する。沿岸部の約30の防潮堤が、(1)完全に機能した(閉鎖した)場合、被害地域は約2%(2)開いたままの場合、同37%(3)倒壊するなど、全く機能しない場合、同82%--となる。
最悪のケースを考えた場合、この82%地域に住む尼崎の人口は約35万3000人に。東日本大震災後に同市はクリーンセンター第1、2工場(大高洲町、東海岸町)や教育・障害福祉センター(三反田町)など公共施設をはじめ、都ホテルニューアルカイック(昭和通2)、COCOEあまがさき緑遊新都心(潮江1)など民間の施設まで協力を呼びかけ、「津波等一時避難場所」に指定した。今年3月以降、23カ所約5万人の収容分を増やし、避難収容者数は計約7万6000人となったが、同市防災対策課は「十分とは言えず随時、安全な場所を確保していきたい」としており、民間の高層マンションなども視野に安全な避難場所を増やす予定だ。
防災への取り組みについて、同課の小椋修・参与は「現在のように、市民の一人一人が、津波や震災に関心を持ち続ける状況を維持することが大切」と話す。同課には震災以降に「防災出前講座」の依頼が急増しており、昨年度は3件だったが、今年度は既に40件を超えたという。
関心を途切れさせないように、同市防災対策課では、家庭でできる防災への備えを知ってもらおうとホームページで情報提供の充実も図っている。自宅では、タンスなどの家具を固定し、窓ガラスに飛散防止シートを張ること。非常時の持ち出し品として、保存食や飲料水、ラジオや予備の乾電池などを紹介し、運びやすいように男性は15キロ、女性は10キロ程度の重さに留めることなどをアドバイスしている。
今後は、子供からお年寄りまでが参加し、地域で実践的な避難訓練を行えるよう、行政がサポートする仕組みを考案中だ。津波や地震を想定し、それぞれ安全な経路を確認しながら、避難場所に集合するような、訓練を想定している。
出前講座の問い合わせは、市防災対策課(06・6489・6165)まで。地震や津波情報を一斉メールする、尼崎市防災ネット(amagasaki@bosai.netへ空メールを送信)への登録も呼びかけている。
毎日新聞 2011年11月13日 地方版
東日本大震災の発生を受け、県は10月、東海・東南海・南海地震の新たな津波の想定を発表した。市域全体の約3分の1が海抜0メートル地帯の尼崎市では、津波で浸水する可能性がある「津波被害警戒区域」は82%にのぼる。新たな防災への取り組みが迫られている尼崎市の対応を探った。【生野由佳】
これまで、県はマグニチュード(M)8・4を前提に津波を算定。尼崎市の場合は2・9メートルの津波が、110分後に阪神間の沿岸部に到達し、防潮堤が十分に機能すれば被害はない、という想定だった。
しかし、M9・0級の地震を想定した今回の発表では、津波の高さを暫定的に往来の約2倍に設定し、被害状況を算出した。尼崎市は3パターンの被害を想定する。沿岸部の約30の防潮堤が、(1)完全に機能した(閉鎖した)場合、被害地域は約2%(2)開いたままの場合、同37%(3)倒壊するなど、全く機能しない場合、同82%--となる。
最悪のケースを考えた場合、この82%地域に住む尼崎の人口は約35万3000人に。東日本大震災後に同市はクリーンセンター第1、2工場(大高洲町、東海岸町)や教育・障害福祉センター(三反田町)など公共施設をはじめ、都ホテルニューアルカイック(昭和通2)、COCOEあまがさき緑遊新都心(潮江1)など民間の施設まで協力を呼びかけ、「津波等一時避難場所」に指定した。今年3月以降、23カ所約5万人の収容分を増やし、避難収容者数は計約7万6000人となったが、同市防災対策課は「十分とは言えず随時、安全な場所を確保していきたい」としており、民間の高層マンションなども視野に安全な避難場所を増やす予定だ。
防災への取り組みについて、同課の小椋修・参与は「現在のように、市民の一人一人が、津波や震災に関心を持ち続ける状況を維持することが大切」と話す。同課には震災以降に「防災出前講座」の依頼が急増しており、昨年度は3件だったが、今年度は既に40件を超えたという。
関心を途切れさせないように、同市防災対策課では、家庭でできる防災への備えを知ってもらおうとホームページで情報提供の充実も図っている。自宅では、タンスなどの家具を固定し、窓ガラスに飛散防止シートを張ること。非常時の持ち出し品として、保存食や飲料水、ラジオや予備の乾電池などを紹介し、運びやすいように男性は15キロ、女性は10キロ程度の重さに留めることなどをアドバイスしている。
今後は、子供からお年寄りまでが参加し、地域で実践的な避難訓練を行えるよう、行政がサポートする仕組みを考案中だ。津波や地震を想定し、それぞれ安全な経路を確認しながら、避難場所に集合するような、訓練を想定している。
出前講座の問い合わせは、市防災対策課(06・6489・6165)まで。地震や津波情報を一斉メールする、尼崎市防災ネット(amagasaki@bosai.netへ空メールを送信)への登録も呼びかけている。
毎日新聞 2011年11月13日 地方版