主に母乳を介して感染し、白血病や脊髄症などを引き起こす成人T細胞白血病ウイルス(HTLV1)。九州・沖縄地方の風土病とされたが、近年は全国に広がりつつある。予防ワクチンがなく、母乳による母子感染を断つことが最も効果的な予防策。県内では、母子感染予防を図るため、全ての妊婦を対象にした公費負担の抗体検査をしている。国が対策強化を打ち出す中、県も啓発活動や相談体制の拡充に力を入れる。
HTLV1は白血球の一種であるリンパ球に感染するウイルスで、国内の感染者数は推定108万人。根本的な治療法が確立していない成人T細胞白血病(ATL)や、歩行障害などが出る脊髄症(HAM)を発症する恐れがある。
主な感染ルートは母乳による母子感染とされるが、感染しても、発症するのは国内で年間千人に1人程度。潜伏期間が長いのが特徴で乳児期に感染した場合、ATLを発症するのは40歳以降という。
健診で感染者を見つけ、授乳方法を工夫すれば感染率を下げることができるため、県は昨年4月、国に先駆けて妊婦抗体検査の公費負担をスタート。政府も昨年9月、特命チームを設置し、全国で公費負担による妊婦抗体検査を始めた。
県健康対策課によると、県内では20~30代の妊婦の0・5%がウイルスを持つ「キャリアー」とされる。藤内修二課長は「母親がキャリアーの場合、母子感染を防ぐには母乳をやめ、(粉ミルクなどの)人工栄養にするのが最も確実」と強調。抗体検査とその後の精密検査で陽性反応が出た場合、産科医らが母子感染を防ぐため授乳指導などの相談に応じるという。
県内では1987年から、産婦人科や小児科の医師らが母子感染を防ぐ対策に乗り出し、抗体検査の方法などをまとめたテキストを発刊、妊婦にも正しい知識の普及・啓発をしている。
医師でもある藤内課長は「県内では年間40~50人がATLを発症して亡くなっている。母子感染を阻止できれば、50~60年後のATL死亡者を減らすことができる」と話している。
ポイント
HTLV1 かつては九州・沖縄地方の感染率が特に高かったが、都市部への人口流入などに伴い、全国に拡大。厚生労働省研究班の調査によると、関東地方で感染者の増加が顕著。同省は今年7月、感染した全国3千人の妊婦を追跡し、授乳方法によって子どもへの感染率や発育にどう影響するかを調べる研究を始める方針を示した。
厚生労働省が発行したHTLV1ウイルスに関するリーフレット。県も正しい知識の普及・啓発に力を入れている
[2011年11月06日 09:55] 大分合同新聞
HTLV1は白血球の一種であるリンパ球に感染するウイルスで、国内の感染者数は推定108万人。根本的な治療法が確立していない成人T細胞白血病(ATL)や、歩行障害などが出る脊髄症(HAM)を発症する恐れがある。
主な感染ルートは母乳による母子感染とされるが、感染しても、発症するのは国内で年間千人に1人程度。潜伏期間が長いのが特徴で乳児期に感染した場合、ATLを発症するのは40歳以降という。
健診で感染者を見つけ、授乳方法を工夫すれば感染率を下げることができるため、県は昨年4月、国に先駆けて妊婦抗体検査の公費負担をスタート。政府も昨年9月、特命チームを設置し、全国で公費負担による妊婦抗体検査を始めた。
県健康対策課によると、県内では20~30代の妊婦の0・5%がウイルスを持つ「キャリアー」とされる。藤内修二課長は「母親がキャリアーの場合、母子感染を防ぐには母乳をやめ、(粉ミルクなどの)人工栄養にするのが最も確実」と強調。抗体検査とその後の精密検査で陽性反応が出た場合、産科医らが母子感染を防ぐため授乳指導などの相談に応じるという。
県内では1987年から、産婦人科や小児科の医師らが母子感染を防ぐ対策に乗り出し、抗体検査の方法などをまとめたテキストを発刊、妊婦にも正しい知識の普及・啓発をしている。
医師でもある藤内課長は「県内では年間40~50人がATLを発症して亡くなっている。母子感染を阻止できれば、50~60年後のATL死亡者を減らすことができる」と話している。
ポイント
HTLV1 かつては九州・沖縄地方の感染率が特に高かったが、都市部への人口流入などに伴い、全国に拡大。厚生労働省研究班の調査によると、関東地方で感染者の増加が顕著。同省は今年7月、感染した全国3千人の妊婦を追跡し、授乳方法によって子どもへの感染率や発育にどう影響するかを調べる研究を始める方針を示した。
厚生労働省が発行したHTLV1ウイルスに関するリーフレット。県も正しい知識の普及・啓発に力を入れている
[2011年11月06日 09:55] 大分合同新聞