障害者施策 遅れる入所施設整備 雇用率、全国平均下回る
天童市田鶴町3丁目の介護付き有料老人ホーム「ソーレ天童」。和やかな雰囲気の新しい施設に42人が暮らす。
生まれつき視力がほぼない松田吉男さん(76)もその1人だ。県立山形盲学校を卒業後、マッサージ師として北海道や宮城県の病院などに勤務。50代で天童市に鍼灸(しん・きゅう)の診療所を構えた。山形県視覚障害者福祉協会の副会長を務めるなど精力的に活動していたが、健常者の妻が認知症で別の施設に入り、自身も昨年に消化器を患ったことを機に、ソーレ天童に入所を決めた。
職員の配置も手厚く、「不自由のない生活ができる」と松田さん。入居費は家賃と食費などで月約15万円。介護費も別途必要だ。入居時の敷金などもあり、だれもが入れる施設ではない。松田さんも「財政的に余裕がある自分は恵まれている」と話す。
県内には、少ない負担で入れる視覚障害者向け福祉施設の整備を求める声が根強い。音声案内などを備えた「盲養護老人ホーム」や「盲特別養護老人ホーム」がないのは全国で山形を含む4県だけだ。
県はようやく今月、山形市に盲養護老人ホームを、朝日町に盲特別養護老人ホームを整備する方針を決めた。「これまで施設整備を申し出る市町村がなく、実現に時間がかかった」(長寿社会課)と釈明するが、県視覚障害者福祉協会の山内文夫会長は「県が先導しないと障害者に配慮した環境づくりは難しい。県は反応が鈍い」と指摘する。
障害者の雇用対策も急務の課題だ。
山形労働局によると、昨年6月現在、県内の障害者雇用率は1・64%で、全国平均の1・69%を下回る。景気悪化に伴って県内の中小企業が障害者を雇う体力をなくし、数値が伸び悩んでいるという。
法定雇用率(民間は1・8%)に達した企業は52・4%で全国平均(46・8%)は超えたものの、ほぼ半数にとどまる。4月に割合が2・0%に引き上げられるうえ、国は精神障害者の雇用義務化も実施する方針で、ハードルはさらに高くなりそうだ。
山形労働局の高木勉担当官は「雇用率を上げるには、知的障害者の雇用促進が重要」と強調する。企業が優先的に採りたがるのは業務や意思疎通に支障がない軽度の身体障害者で、知的障害者を積極的に受け入れている企業はごくわずかだという。
県は知的障害者の一般就労に向け、職業訓練制度の利用促進を掲げている。しかし障害者自立支援法をめぐる国の動きが二転三転していることもあり、職業訓練を手がける団体の昨年度の月平均利用者数は1団体当たり81人で目標の3割程度にとどまった。
県や市町村では、山形市が11年に知的障害者6人の雇用に踏み切るなどしたが、全県には広がっていない。高木担当官は「公的機関が率先して知的障害者の採用に踏み込んでいく姿勢が必要だ」と話している.
朝日新聞-2013年1月25日
天童市田鶴町3丁目の介護付き有料老人ホーム「ソーレ天童」。和やかな雰囲気の新しい施設に42人が暮らす。
生まれつき視力がほぼない松田吉男さん(76)もその1人だ。県立山形盲学校を卒業後、マッサージ師として北海道や宮城県の病院などに勤務。50代で天童市に鍼灸(しん・きゅう)の診療所を構えた。山形県視覚障害者福祉協会の副会長を務めるなど精力的に活動していたが、健常者の妻が認知症で別の施設に入り、自身も昨年に消化器を患ったことを機に、ソーレ天童に入所を決めた。
職員の配置も手厚く、「不自由のない生活ができる」と松田さん。入居費は家賃と食費などで月約15万円。介護費も別途必要だ。入居時の敷金などもあり、だれもが入れる施設ではない。松田さんも「財政的に余裕がある自分は恵まれている」と話す。
県内には、少ない負担で入れる視覚障害者向け福祉施設の整備を求める声が根強い。音声案内などを備えた「盲養護老人ホーム」や「盲特別養護老人ホーム」がないのは全国で山形を含む4県だけだ。
県はようやく今月、山形市に盲養護老人ホームを、朝日町に盲特別養護老人ホームを整備する方針を決めた。「これまで施設整備を申し出る市町村がなく、実現に時間がかかった」(長寿社会課)と釈明するが、県視覚障害者福祉協会の山内文夫会長は「県が先導しないと障害者に配慮した環境づくりは難しい。県は反応が鈍い」と指摘する。
障害者の雇用対策も急務の課題だ。
山形労働局によると、昨年6月現在、県内の障害者雇用率は1・64%で、全国平均の1・69%を下回る。景気悪化に伴って県内の中小企業が障害者を雇う体力をなくし、数値が伸び悩んでいるという。
法定雇用率(民間は1・8%)に達した企業は52・4%で全国平均(46・8%)は超えたものの、ほぼ半数にとどまる。4月に割合が2・0%に引き上げられるうえ、国は精神障害者の雇用義務化も実施する方針で、ハードルはさらに高くなりそうだ。
山形労働局の高木勉担当官は「雇用率を上げるには、知的障害者の雇用促進が重要」と強調する。企業が優先的に採りたがるのは業務や意思疎通に支障がない軽度の身体障害者で、知的障害者を積極的に受け入れている企業はごくわずかだという。
県は知的障害者の一般就労に向け、職業訓練制度の利用促進を掲げている。しかし障害者自立支援法をめぐる国の動きが二転三転していることもあり、職業訓練を手がける団体の昨年度の月平均利用者数は1団体当たり81人で目標の3割程度にとどまった。
県や市町村では、山形市が11年に知的障害者6人の雇用に踏み切るなどしたが、全県には広がっていない。高木担当官は「公的機関が率先して知的障害者の採用に踏み込んでいく姿勢が必要だ」と話している.
朝日新聞-2013年1月25日