医薬品、電気・ガス、保険が上位
続いて業種別の集計を紹介しよう。こちらは11年度の障害者雇用率を開示している897社が対象。全体の平均は1.67%で2013年3月までの法定雇用率1.8%を下回る。今回の集計対象はCSR活動に積極的な企業が多いと考えられるが、それでも全体では法定雇用率には達していない。
業種別で雇用率が高いのは、医薬品2.04%(20社)、電気・ガス業1.95%(11社)、保険業1.98%(11社)など。一方で低いのは、証券、商品先物取引業1.12%(9社)、不動産業1.22%(23社)、倉庫・運輸関連業1.35%(10社)などだ。
特に証券、商品先物取引業、倉庫・運輸関連業はランキング100位に1社も入っておらす、業界全体での取り組みも必要となりそうだ。
障害者雇用は法律で定められているため、日本企業はこれまで人数確保を優先してきた。そのため、本業とまったく関係ない「テープ起こし」などの仕事を新たに作ることなども行われてきた。こうした取り組みに批判的な向きもある。ただ、障害者が多く働く授産施設などでは月に1万数千円程度しか収入がないが、企業に勤めていればもっと多くの金額を給料として受け取ることができる。障害者の経済面での自立の第一歩として企業が果たしてきた役割は高く評価するべきだ。
しかし、多様な人材を活用するダイバーシティという面から見ると、そろそろ次の段階に移行する必要がありそうだ。実際にそうした動きも出始めている。
新たなステージに進む先進企業も
ランキング7位のユー・エス・ジェイは障害者雇用の取り組みについて「新しい職域の開拓および企業実習の受け入れを進めている」と回答。
45位のダイキン工業も障害者の職域の拡大・レベルアップに取り組んでいる。リフト運転技能やガス溶接技能の講習実施など業務拡大に伴う必要資格取得を進め、障害者自身のレベルアップを応援している。
このように単に障害者が働く場所を提供するだけでなく、本業の戦力として雇用する段階を目指す企業が出始めている。
「障害者雇用は新たな段階に進むべき」。障害者の特性やニーズを知る研修などを行うインクルーシブデザイン・ソリューションズ(東京都千代田区)で、全盲の視覚障害者でありながら取締役として活躍する松村道生氏も主張する。
「私はコンビニのお茶のペットボトルは表面がざらざらしていると茶筒を連想し、思わず手にしてしまう。こうした障害者ならではの視点は数多く存在する。商品開発などで健常者以外の多様な力を入れることで、“新たな価値”を創造することができるのではないか」と言う。
これまでに愛媛県今治市のタオルメーカーと共同で視覚障害者の視点を取り入れた手触りのよいタオルを開発。売り上げにも貢献した実績を持つ松村氏。「企業は障害者の高い能力をもっと本業で活用したほうがよい。そうすることで、企業の力もアップするはず」と考える。
確かに世の中のニーズはさまざまだ。健常者だけでなく、障害者の視点も入れば、よりよい商品やサービスとなる可能性は高そうだ。結果的に売上増となれば、義務による障害者雇用ではなく、多様性を生かした企業力アップによるダイバーシティ経営といえるだろう。
実際、障害者ならではの強みがあることは多くの企業担当者も知っている。ただ、それを引き出すためには、施設や体制などの準備が必要だ。これまでと異なるやり方に躊躇する企業も少なくない。しかし、それを企業が一歩進めて、成功例が出てくれば障害者雇用は新たなステージに進むはずだ。
今回紹介したランキング上位企業は、人数や比率ですでに成果を上げている障害者雇用の先進企業。こうした企業が次の段階へ挑戦していくことで、日本全体がさらに前に進んでいくことを期待したい。
岸本 吉浩:東洋経済(CSR調査、企業評価担当)2013年09月
続いて業種別の集計を紹介しよう。こちらは11年度の障害者雇用率を開示している897社が対象。全体の平均は1.67%で2013年3月までの法定雇用率1.8%を下回る。今回の集計対象はCSR活動に積極的な企業が多いと考えられるが、それでも全体では法定雇用率には達していない。
業種別で雇用率が高いのは、医薬品2.04%(20社)、電気・ガス業1.95%(11社)、保険業1.98%(11社)など。一方で低いのは、証券、商品先物取引業1.12%(9社)、不動産業1.22%(23社)、倉庫・運輸関連業1.35%(10社)などだ。
特に証券、商品先物取引業、倉庫・運輸関連業はランキング100位に1社も入っておらす、業界全体での取り組みも必要となりそうだ。
障害者雇用は法律で定められているため、日本企業はこれまで人数確保を優先してきた。そのため、本業とまったく関係ない「テープ起こし」などの仕事を新たに作ることなども行われてきた。こうした取り組みに批判的な向きもある。ただ、障害者が多く働く授産施設などでは月に1万数千円程度しか収入がないが、企業に勤めていればもっと多くの金額を給料として受け取ることができる。障害者の経済面での自立の第一歩として企業が果たしてきた役割は高く評価するべきだ。
しかし、多様な人材を活用するダイバーシティという面から見ると、そろそろ次の段階に移行する必要がありそうだ。実際にそうした動きも出始めている。
新たなステージに進む先進企業も
ランキング7位のユー・エス・ジェイは障害者雇用の取り組みについて「新しい職域の開拓および企業実習の受け入れを進めている」と回答。
45位のダイキン工業も障害者の職域の拡大・レベルアップに取り組んでいる。リフト運転技能やガス溶接技能の講習実施など業務拡大に伴う必要資格取得を進め、障害者自身のレベルアップを応援している。
このように単に障害者が働く場所を提供するだけでなく、本業の戦力として雇用する段階を目指す企業が出始めている。
「障害者雇用は新たな段階に進むべき」。障害者の特性やニーズを知る研修などを行うインクルーシブデザイン・ソリューションズ(東京都千代田区)で、全盲の視覚障害者でありながら取締役として活躍する松村道生氏も主張する。
「私はコンビニのお茶のペットボトルは表面がざらざらしていると茶筒を連想し、思わず手にしてしまう。こうした障害者ならではの視点は数多く存在する。商品開発などで健常者以外の多様な力を入れることで、“新たな価値”を創造することができるのではないか」と言う。
これまでに愛媛県今治市のタオルメーカーと共同で視覚障害者の視点を取り入れた手触りのよいタオルを開発。売り上げにも貢献した実績を持つ松村氏。「企業は障害者の高い能力をもっと本業で活用したほうがよい。そうすることで、企業の力もアップするはず」と考える。
確かに世の中のニーズはさまざまだ。健常者だけでなく、障害者の視点も入れば、よりよい商品やサービスとなる可能性は高そうだ。結果的に売上増となれば、義務による障害者雇用ではなく、多様性を生かした企業力アップによるダイバーシティ経営といえるだろう。
実際、障害者ならではの強みがあることは多くの企業担当者も知っている。ただ、それを引き出すためには、施設や体制などの準備が必要だ。これまでと異なるやり方に躊躇する企業も少なくない。しかし、それを企業が一歩進めて、成功例が出てくれば障害者雇用は新たなステージに進むはずだ。
今回紹介したランキング上位企業は、人数や比率ですでに成果を上げている障害者雇用の先進企業。こうした企業が次の段階へ挑戦していくことで、日本全体がさらに前に進んでいくことを期待したい。
岸本 吉浩:東洋経済(CSR調査、企業評価担当)2013年09月