障害のある人が65歳になると、障害福祉から介護保険のサービスに変わることで、サービスが減ったり負担額が増えたりするケースが各地で相次いでいる実態が、障害者団体の調査で明らかになりました。
調査を行ったのは、全国の障害者の作業所などで作る「きょうされん」です。
国は、65歳以上の障害者について、障害福祉サービスより介護保険サービスを優先すると定める一方、自治体に対しては利用者の状況に合わせて配慮するよう通知しています。
団体がことし5月、65歳以上の会員を対象に初めて実態調査を行ったところ、家事や介護などの訪問支援を受けていた289人のうち、21%の62人がサービスを打ち切られ、86%の249人が無料から新たに負担が生じたということです。
福岡県の女性のケースでは、入浴介助が週4回から3回に減ったうえ、新たに1万5000円の負担が生じ、貯金を取り崩す生活をしているということです。
きょうされん政策・調査委員会の小野浩委員長は、「国は実態調査をしたうえで改善すべきだ。65歳の区切りはなくして当事者が障害福祉と介護保険の両方からサービスを選べるようにし、どの自治体でも同じサービスを受けられるようにしてほしい」と話しています。
団体では厚生労働省に調査結果を伝え、改善を求めることにしています。
障害者「これから先が怖くて不安」
福岡県田川市で1人暮らしをしている稲田博美さん(67)は、脳性まひで体の自由がきかず、日常的に介護が必要です。
65歳までは、週4回入浴サービスを受けられましたが、介護保険サービスに切り替えられたあとは週3回に減りました。
また、家事支援サービスの時間も減ったため、食事はできあいの弁当やパンで済ませることが多くなりました。
このほか、主に利用するデイサービスが、障害者向けから高齢者が多い施設に変わり、障害者どうしで悩みを打ち明け合うこともできなくなったといいます。
こうしたサービスの低下に加えて、費用はそれまでの無料から新たに1万5000円の負担が生じ、貯金を取り崩す生活です。
稲田さんは、「いくつになっても障害者は障害者なのに、65歳を境に、それまでどおりのサービスを受けられなくなるので悲しいです。貯金も減り続け、これから先、自分がどうなるだろうと思うと怖くて不安です」と訴えています。
田川市長「現場の声聞いて法律作るべき」
福岡県田川市の伊藤信勝市長は、障害者に対して独自にサービスを上乗せするなど柔軟な対応に努めているとしています。
そのうえで、限界も認めていて、「市としてできる体力というものがあり、体力がなくなった場合には、そういったサービスすらできなくなる。地方分権と言われるが、財源がないなか、制度だけがどんどん新しくなり地方にその責任を転嫁するようなことがないよう財源と制度をきちんと議論すべきであり、現場の声を聞いて法律を作るべきだ」と話しています。
厚生労働省「結果踏まえて対応」
厚生労働省は、障害福祉サービスより介護保険サービスが優先されることについて、「自助、共助、公助と言われるように、みずからできることをしたうえで、公的サービスが適用されるという原則に基づいたもの」としています。
そのうえで、「ただ、その結果、問題が起きていることは、大きな課題の1つと認識しているので、現状を把握しながら、結果を踏まえて対応していきたい」とコメントしています。
2014年(平成26年)9月19日[金曜日] NHK