県内で障害者差別を禁止する条例を作ろうと、静岡障害者自立生活センターのスタッフ大川速巳(はやみ)さん(45)=静岡市=たちが動き出した。障害者も健常者も同じように暮らせるよう、2年後の制定を目指す。
大川さんは脊髄(せきずい)損傷のため、車いすで生活している。6月のある日、静岡市の飲食店に予約の電話を入れると「席が車いす対応でない」と断られた。大川さんは「バリアフリーは以前より進んだが、健常者と同じ機会を得られないことが今もある」と話す。
障害を理由にした差別的取り扱いの禁止や、障害者の日常生活を制限する社会的な壁を取り除く「合理的な配慮」を定めた障害者差別解消法が昨年6月、成立した。全国の自治体でも障害者への差別を禁止する条例が広がっている。
大川さんは、昨年10月、沖縄県議会で同じような条例が採決された場面に立ち会った。議長が「満場一致で議案は成立しました」と話した瞬間、傍聴していた仲間が感動で涙を流し、喜びあった。
「静岡でも同じことができるはず」。静岡に戻ると、県内に7カ所ある障害者自立生活センターのメンバーらとともに条例作りに向けて動き出した。
千葉県は条例に基づき、どんなときに差別を感じ、どうすれば解決できるのかを分析して公表している。県内でも実態に合った条例にしようと、大川さんたちが差別と感じる実例を集め始めた。「障害者用トイレの前にゴミ箱があって通れない。動かしてとお願いしているのに変わらない」など、すでに100件を超える報告が寄せられた。
23日午後1時半からは、静岡市葵区駿府町の県総合社会福祉会館シズウエルでワークショップを開く。来年1月には、300人規模のフォーラムを開き、「県障害者差別禁止条例づくりの会」として発足式を行う予定だ。
障害者だけでは今の状況は変わらない。大川さんは「条例作りを通じて健常者からも協力を得ながら社会の理解を深めたい」と話している。
〈沖縄県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例〉 障害のある人もない人も、すべての県民が等しく地域社会の一員としてあらゆる分野へ参加することを目指して制定された。「何人も障害のある人に障害を理由として、差別してはならない」と定め、福祉・医療の提供や公共交通機関の利用、不動産取引など具体的な場面での差別を想定し、禁止行為を定めている。差別解消の相談員を置くことも定めている。
2014年9月10日03時00分 朝日新聞デジタル