大規模地震を想定した県総合防災訓練が6日、太田市原宿町の渡良瀬スポーツ広場であり、聴覚障害がある市民3人が初めて参加した。手話通訳者の助けを借り、避難するときの行動を確認。正しい情報伝達が欠かせない災害時の課題も見つかった。
「太田市に避難勧告が出ました。避難してください」。会場にアナウンスが響いた。訓練では午前八時四十分ごろ、県南東部を震源とするマグニチュード7・1の直下型地震が発生し、太田市で最大震度6強の強い揺れを観測したと想定した。
三人は、市障がい福祉課の荒木明美さん(53)らの手話でアナウンスを知り、住民約五十人とともに避難所に移動した。実際の災害発生時には、自分たちで手話通訳者を依頼するため、市社会福祉協議会を拠点とするボランティアセンターでの手順も確かめた。
松本英明さん(61)は「周りの人たちのまねをして行動した。耳が聞こえないことを自分から意思表示した方がいい」と話す。高山三夫さん(60)は「広報が聞こえないので、紙に大きな字で書いて示してほしい」と求めた。
災害対策基本法の改正で今年四月から、避難行動要支援者の名簿づくりが市町村に義務付けられた。自力避難が難しい重度の障害者、介護の必要な高齢者らが対象。「災害弱者」の支援が明確になったため、今回、聴覚障害者が訓練に参加することになった。
太田市内には、五百人ほどの聴覚障害者がいるが、ボランティア登録をしている手話通訳者は七人にすぎない。荒木さんは「通訳者は足りず、ずっと付き添うこともできない。聴覚障害者だと分かったら、周りの人も身ぶりや文字で情報を知らせてほしい」と、地域住民の協力を期待していた。