◇安佐南区の男性 市「調査徹底させる」
災害時に自力で避難が困難な高齢者や障害者らを把握するため、自治体が作成する「避難行動要支援者名簿」に、広島市安佐南区役所が、要件を満たす区内の身体障害者の男性(62)を掲載していなかったことがわかった。区の調査不足が原因とみられ、区は男性に謝罪した。男性は8月の土砂災害発生時に不安を感じていた、といい、市は他区でも掲載漏れがないかどうか調査する。
名簿は災害対策基本法に基づき、市町村に作成が義務付けられている。広島市の掲載対象は1~3級の身体障害者手帳を持つ人か、要介護3以上の高齢者らで、原則として75歳未満の健常者と同居する人は除く。
市は対象になるとみられる人の情報を民生委員に提供し、担当者が戸別訪問して同居人の有無など生活実態を調査。本人の同意を得て名簿に掲載し、個別の避難支援計画を作る。
区地域起こし推進課によると、男性は1級の身体障害者手帳を持ち、一人暮らしで名簿の対象者だが、これまでは掲載されていなかった。区が同居人の有無などを本人に確認していなかったためとみられ、同課は「調査が不十分だった。申し訳ない」として掲載手続きを進めている。
土砂災害では、男性は自宅の被害を免れたが、不安を感じたため、市に後日、名簿を確認したところ、掲載漏れが判明したという。男性は「同じように掲載されていない被災者がいるかもしれない」と訴える。
市は、障害者らの状態や生活実態の変化などに対応するため、各区役所に年1回、名簿を更新するよう求めていたが、安佐南区は障害者手帳の新規取得などで新たに対象となった人や、障害の程度を示す等級が変わった人の調査しか行っておらず、男性の掲載漏れには気付かないままだった、という。市は「今後、調査を徹底させる」としている。