関西の小劇場で活動する劇団「SE・TSU・NA」が7日、大阪・梅田のヘップホールで、サンタクロースの見習いらの聖夜を描いたファンタジー「サンタ×クロス」を視覚障害者向け音声ガイド付きで上演する。登場人物の動きや舞台セットなどを解説。映画ではしばしば実施されているが、演劇では珍しいという。
同劇団は1993年に主宰者の中神謙一さん(40)=大阪府枚方市=らが旗揚げし、現在3人で活動。客演を迎え、年2回ペースで上演している。
初めて音声ガイドを導入したのは2011年。全盲の少女が主人公の「語り部たちの夜~風(ふう)」を初演する際、中神さんが脚本づくりのため視覚障害がある女性を取材したことがきっかけだった。
中神さんは「映画も見るのよと言われ、音声ガイドを知った。海外では演劇にも導入されていると聞き、ぜひ本番を見てもらい感想を聞きたいと思った」と振り返る。
今作は、聖夜にサンタ見習いたちがある1軒の屋根の上で鉢合わせし、互いに自分の配達先だと譲らないという物語。音声ガイドでは、せりふの合間に解説を加える。例えば「舞台中央に屋根。奥から手前に向かって傾斜している」「舞台上手奥からトナカイが引っ張るそりに乗ったサンタ見習いが登場」という具合だ。
映画の音声ガイドでは録音されたものが使われる。公演ごとにテンポが変わる生の演劇では、テレビの副音声の経験者らが楽屋などで読み上げ、専用の送信機を通じて視覚障害者が装着したイヤホンに届く。
音声ガイド付きの上演は4度目。「できるだけ詳細な説明を」という視覚障害者の声や支援団体「日本ライトハウス」(大阪市)の監修を受け、内容を充実させてきた。当日は、視覚障害者が登場人物の足音や気配を感じられるよう最前列の席を確保。最初から登場人物を聞き分けられるよう、開演前にイヤホンで声を聞いてもらったり、終演後に出口で出演者の衣装などに触れてもらったりする工夫も好評という。
中神さんは「目から得る情報の多さや会場のバリアフリーなどを意識するようになり、発見ばかり。演劇づくりにも影響を受けている」と語る。
機材のレンタルやスタッフの増員などでコストはかさむが、「終演後、『私は障害で涙が出ないけれど泣いているのよ』と感動を伝えられたことが忘れられない。一緒に楽しめる環境を大切にしたい」と話している。
7日は正午、午後4時開演。同行のガイドヘルパー1人は無料。音声ガイドはないが、公演は5日午後7時、6日午後1時、同5時もある。前売り3千円、当日3500円、高校生以下2千円。スタッフステーションTEL06・6972・7300
2014/12/3 09:30 神戸新聞