◇朝日放送が阪神−中日戦で
視覚障害者向けに、プロ野球のテレビ中継で選手の動きやテロップの内容などを副音声で説明する「解説放送」を8日、朝日放送(ABC、大阪市福島区)が阪神−中日戦で行う。昨秋以降3回目で、ドラマやバラエティー番組での実施例はあるが、プロ野球の生中継での取り組みは全国初。視覚障害者からは「画面で何が伝えられているかが分かり、障害のない家族や友人とも一緒に楽しめる」と好評だ。
6月3日、阪神甲子園球場で行われた阪神−ロッテ戦。中継画面にはマウンド上の藤浪晋太郎投手が映し出され、左下にこの日の球種の割合が表示された。副音声で中邨(なかむら)雄二アナウンサー(53)が解説する。
「画面には藤浪投手の投球割合が出ています。ストレート57%、カット(ボール)26%、ツーシーム7%、カーブ7%、フォークは3%ということですね。(中略)投球7球目、右バッターの大嶺翔太に第7球を投げました。スライダー、見た、ボール。(中略)藤浪がちょっと苦しい表情。球数は次が75球目」
中邨アナは、外野の守備や打者の様子などもきめ細かく伝えた。
総務省は、東京や大阪などの広域局は2017年度までに放送番組の約1割で解説放送を行う、との目標を定めている。
同局は昨年9月の阪神戦で、生放送では同局初の解説放送を実施。主音声のアナらが話をやめた間に副音声のアナが話す方式だったが、坪沼晴海・テレビ編成部マネジャー(58)は「主音声のアナの話し出すタイミングが分からず大変だった」と振り返る。
このため、今年は副音声に主音声を入れず、副音声のアナが全て実況する形式に変えた。6月の放送では、視覚障害者を支援する社会福祉法人「日本ライトハウス情報文化センター」(同市西区)の職員、林田茂さん(40)が中邨アナのそばに座り助言した。
放送を聴いた視覚障害者の岡田太丞(たいすけ)さん(49)=兵庫県西宮市=は「どんな場面かが分かりやすく、視覚障害がない妻と一緒に楽しめた。解説放送は視力が衰えた高齢者なども楽しめるはず」と話す。
林田さんは「他のスポーツ中継のモデルになれば」と話し、広がりに期待する。
8日は午後6時16分から放送する。
毎日新聞 2015年07月07日