阪神・淡路大震災での被災障害者支援を機に設立されたNPO法人「ゆめ風基金」(大阪市、牧口一二代表理事)が6月、発足20年を迎えた。この間、寄付金を基に国内外34の災害被災地に届けた救援金は3億4387万円に上る。生活の復興と自立を目指す障害者に寄り添ってきた。20年の活動で「災害弱者」を取り巻く環境は改善が進んだ一方、課題もなお多い。
1995年1月17日の震災では、多くの障害者事業所が被災。大阪を拠点に全国の仲間が次々と被災地入りし、安否確認に回り、物資を届けた。
「本格復興には時間がかかる」。救援活動を経て、障害者の生活再建を息長く支援しようと、同年6月にゆめ風基金が発足。被災地では支援されるだけでなく、自ら地域住民に救援物資を配ったり、炊き出しを振る舞ったりした障害者もおり、助け合いの思いが活動の原点にもなった。10億円の基金づくりを目標に、ミュージシャンの小室等さんや永六輔さんら著名人が呼びかけ人に名を連ねた。
当初は10年計画だったが、その後も国内外で災害が続発。スタッフはそのたび、厳しい環境に追いやられる障害者を見てきた。過酷な生活で体調を崩して亡くなる「関連死」も繰り返された。
活動は続き、新潟・中越、能登半島、中国四川省、トルコ、ハイチ、兵庫県佐用町など計34の被災地に救援金を届け、障害者への物資提供や事業所再建などを支援。障害者団体の設備・運転資金向け低利融資制度も創設し、59団体に総額2億3千万円を貸した。
「全国約50の障害者団体とネットワークをつくり、いざというときに備えている」と事務局長の橘高(きったか)千秋さん(63)。4年前の東日本大震災ではこのつながりが生き、直後にスタッフを派遣。岩手、宮城、福島各県で障害者の生活相談や自立支援をする拠点づくりにつなげた。
一方、福島の原発事故では多くの住民が避難する中、障害者は取り残され、支援が届かなかったケースも。東北の被災地ではヘルパーら障害者の生活を支える人材が不足しているという。
ゆめ風基金は、日ごろの防災支援にも力を入れる。橘高さんは「障害者施設での災害対応や避難の在り方などをさらに研究し、提言していきたい」と話す。
【災害弱者】 災害時に弱い立場に立たされる障害者や高齢者ら。避難できずに支援から取り残されたり、バリアフリーでない避難所での共同生活が難しかったりする。阪神・淡路大震災を踏まえ、国は生活しやすい「福祉避難所」の設置を促す。従来の避難所に「福祉スペース」を設ける動きもある。災害時の避難で支援が必要な人の名簿をあらかじめ作る取り組みも広がる。
20年記念コンサートの準備を進める(左から)「ゆめ風基金」副代表理事の河野秀忠さん、スタッフの福本千夏さん、
事務局長の橘高さん、理事の八幡隆司さん
2015/7/26 神戸新聞