兵庫県立ピッコロ劇団は8月9日、尼崎市南塚口町3のピッコロシアターである公演で、視覚障害者向けの音声ガイドを初めて導入する。専用の受信機を通じて役者の表情や衣装などを“実況中継”し、鑑賞をサポート。全国でも珍しい取り組みで、同劇団によると、県内では初めてという。
障害者への差別的な扱いを禁じる「障害者差別解消法」が来年4月に施行されるのを前に、視覚に障害があっても客席で共に演劇を楽しんでほしいと同劇団が企画した。
音声ガイドは「状況放送」とも呼ばれ、視覚障害者は専用の受信機のイヤホンを付けて観劇。舞台セットや照明の様子のほか、登場人物の動き、衣装、表情などを解説者がそのつど音声で流す。
上演するのはファミリー劇場「さらっていってよピーターパン」。1997年の初演以来、同劇団が繰り返し上演している自信作。大人になって、少々くたびれた主人公のピーターパンが再び愉快な冒険活劇を繰り広げる。劇作家別役実さんの書き下ろしで、歌って踊って迫力ある舞台だ。
初の取り組みに向け、音声ガイドについて入念な打ち合わせが進む。解説の声がセリフにかぶらないタイミングや照明の具合、場面転換などを事前に把握し、芝居を損ねないよう工夫する。
同様の取り組みは国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)=堺市南区=が昨年、音声ガイド付きミュージカルを公演。しかし、映画上映に副音声ガイドが広がりつつあるのに比べ、演劇では全国的にもほとんどないのが実情という。
ピッコロ劇団は「これを機会にもっと気軽に劇場に足を運んでもらいたい」と話している。
音声ガイド付き公演は9日午前11時開演。受信機の貸し出しは無料だが、7月31日までに申し込みが必要。一般2500円、中学生以下1500円(一般と中学生以下のセット券もある)。
同劇団TEL06・6426・1940
公演の一場面。登場人物の衣装や表情も音声で解説される(県立ピッコロ劇団提供)
2015/7/28 神戸新聞