おととし(2013年)、障害者雇用促進法が改正された。ポイントは全従業員に占める障害者の比率(法定雇用率)をこれまでの1・8%から2%に引き上げたこと、達成しないと納付金を支払わなければならないとしたことの2点だ。さらに、この4月(2015年)からは納付金を支払わなければならない企業の範囲が拡大された。
しかし、法定雇用率を達成している企業の割合はいまだに44・7パーセントで、とくに中小企業の雇用が進んでいない。課題は中小企業がいかに障害者を雇用していくかだ。
「できないこと」ではなく「できること」に注目
中小企業からは「これ以上は雇えない」という声が聞こえてくる。あの運輸会社はすでに8人の障害者を雇っていて、決して障害者雇用に消極的ではないが、全従業員数から換算すると、あと2人雇わなければ法定雇用率に達しない。社長は言う。「頭では理解できてるけど、実際となると現場もね。業績については事業部長にシビアに言いますので、となると事業部長も余分には雇えませんし・・・」
一方で、わずか1年で雇用率8パーセントを達成した企業グループがある。広島県尾道市の水産加工会社「カタオカ」だ。去年、ハローワークに求人を出し障害者7人を雇い入れた。彼らが担当しているのは原料の小魚に混じる危険物や異物を取り除く作業だ。高い集中力と根気が求められるもので、入社当初は選別の要領をいくら言葉で教えても覚えてもらえなかった。そこで考えたのが写真だ。取り除くべき異物の写真を作業場の壁に張り出して「可視化」したところ、作業効率が5倍に高まった。
常務取締役の片岡彰一郎さんは「まだまだ障害者雇用を増やして、前を向いて行きたいと思っています」と話す。
キャリア形成が専門で、障害者雇用にも詳しい法政大の眞保智子教授はこう言う。「中小企業の経営者たちはみなさん障害者たちを雇いたいんだけど、自分のところには障害者たちを雇用できる仕事はないんだとお考えになる方が多いんでしょうね。今の工程のままで仕事をみてしまうと、どうしても『できないこと』に注目してしまうんではないかと思います。でも、大切なのは『できること』に注目することではないでしょうか」
2015/6/30 J-CASTニュース