共同事業化で工賃増額
東京電力福島第一原発事故で移転するなどした障害者の作業所13か所が、かばんやお菓子などを分業で完成させて販売する共同事業に取り組んでいる。作業を小分けにし、ミシンやオーブンの有無など作業所ごとの環境に合わせて分担。箱詰めだけなど、下請け的な関わり方に比べて収入アップが期待できるといい、障害者への工賃を増やせた作業所も出ているという。
◆かばんやお菓子 製造販売
原発事故では、多くの障害者も影響を受けた。共同事業に参加する13作業所のうち、元々の活動エリアが避難指示区域となり、区域外に移転したのは7事業所。2事業所は避難で受け皿を失った障害者のために新たに設立された。四つは避難者が多い郡山市に元々あった事業所だという。
郡山市の「ふたば製作所」は浪江町や富岡町、葛尾村などから避難している障害者向けに2013年4月に設立され、現在は15人が通う。手提げかばんの共同事業では、作業は〈1〉生地の裁断とほつれどめのミシンがけ〈2〉生地の洗濯〈3〉かばんのひもなどや裏地づくり、アイロンがけ〈4〉縫製〈5〉包装〈6〉発送――の六つ。ふたば製作所ではひもなどや裏地づくりを担当している。
利用者の一人で、葛尾村から三春町の仮設住宅に避難した聴覚障害者の石田健太郎さん(20)は「ミシンを使ったのは高校以来で面白い。いろんなものづくりに挑戦したい」と筆談で答え、笑顔を見せた。
共同事業の事務局を担う郡山市のNPO法人しんせいによると、この取り組みが始まったのは12年冬。最初は使わなくなった布を裂いて材料にした、かばんづくりだった。14年には秋から翌春までの期間限定で焼き菓子作りを開始。焼き菓子作りと箱作り、箱詰めを分担している。
焼き菓子の共同事業では15年4月までに、約400万円の売り上げがあったという。各作業所は、共同事業の分配金を障害者に渡す工賃に充てているが、ふたば製作所では、1日あたり350円だった工賃を14年春から1000円に増額できたという。
共同事業では、4月から新たに、ネクタイの生地を再利用したピンバッジ作りに取り組む予定だという。同NPO理事の富永美保さん(51)は「商品作りと販売を通じて、連携の輪を広げたい」と話している。