ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

台風10号被害 なぜ高齢者を守れなかったか

2016年09月03日 02時09分44秒 | 障害者の自立

 高齢者ら「災害弱者」を、いかに守るか。統計開始以来、初めて太平洋側から東北地方に上陸した台風10号は、重い教訓を残した。

 岩手県岩泉町では8月30日夜、小本川が氾濫し、グループホームで生活する認知症の高齢者9人が濁流にのまれて死亡した。

 岩泉町は30日午前、避難準備情報を出したが、施設側は入所者を避難誘導しなかった。その日の夕方、川の水位が急上昇した。施設は濁流に浸(つ)かり、自力では避難できない入所者が犠牲となった。

 施設は平屋建てで、すぐ隣には3階建ての別の施設がある。早い段階で避難していれば、難を逃れられたかもしれない。

 認知症の高齢者は、災害時に状況が理解出来なかったり、興奮したりして、避難が困難な場合がある、と専門家は指摘する。

 2011年の豪雨で、一帯が浸水被害に見舞われたにもかかわらず、施設は避難マニュアルを作成していなかった。避難に支援を要する高齢者が暮らす施設でありながら、危機意識があまりに甘かったと言わざるを得ない。

 そもそも、河川の脇に、施設を建設したこと自体に問題があったのではないか。氾濫すれば、すぐさま水が押し寄せることは、十分に予測できたはずだ。

 町の対応についても、検証が必要だ。避難準備情報を出した後、小本川の水位が上昇しても、避難勧告や避難指示に切り替えなかった。施設側に切迫した状況が伝わらなかった可能性がある。

 東日本大震災の教訓を踏まえ、13年に成立した改正災害対策基本法は、避難時の要支援者の名簿作成を市町村に義務付けた。改正法に基づく指針では、施設ごとに避難計画の策定も求めている。

 認知症高齢者が暮らすグループホームは、全国で1万3000か所に上る。特別養護老人ホームや障害者施設なども含め、避難計画の整備状況を総点検すべきだ。

 災害発生時には、地域住民の手助けも必要になるだろう。日頃の訓練などを通して、協力態勢を確認しておきたい。

 防災の日だった1日、36都道府県で約100万人が参加して様々な訓練が実施された。

 これに先立ち、秋田県や福島県などは、豪雨と大地震が重なる「複合災害」を想定した訓練を行った。洪水に加え、地震に伴う土砂崩れや津波被害が発生した際の救助の手順などを確認した。

 日本は災害列島だ。先例のない災害にも備えねばならない。

2016年09月02日     Copyright © The Yomiuri Shimbun

ダブルスタンダード

2016年09月03日 02時05分53秒 | 障害者の自立

米国の先住民族インディアン「ラコタ・スー」の人々の名前は変わっている。成長後、背が高い、足が不自由、目が見えない―といった身体的な特徴に対して、「雲をつかむ男」「木の足(義足)」「盲のふくろう」など新しい名前がつけられる。「世界の名前」(岩波書店辞典編集部編)に学んだ▼日本なら差別的だと批判されかねない。そんな表現が堂々と使われるのは、それらの特徴を卑下も蔑視もしていないからだという▼相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の殺傷事件で、警察は犠牲者の実名公表を見送った。障害者への差別や偏見に苦しむ遺族の要望を受けての異例の判断だ▼「命の重さに変わりはない」「どんな障害者も生きる権利がある」という怒り。「子供が障害者であることを知られたくない」という恐れ。その間で遺族はどれほど悩んだか。匿名発表の是非はともかくとして▼大切な子供を突然奪われただけでなく、一人の人間として名前も明らかにしてやれない二重の悲しみを、差別の残る社会は遺族に負わせた。「障害は個性」と言われる。しかし、誰もが本当にそう思っているのか。そこに命のダブルスタンダードはないか▼障害者は亡くなった後まで差別される。そんな社会をラコタ・スーならどう見るだろう。事件から1カ月余。あれほど騒がれたのに、いまはそれほど話題に上らない。それも気に掛かる。

2016・9・2   北海道新聞


感動の道具じゃない

2016年09月03日 01時59分16秒 | 障害者の自立

 「特別扱いするなよ」。小中学校の級友の言葉が胸に残る。彼は幼い頃の不慮の事故で片足を失い、義足だった。40年も前の義足は今ほど性能が良くなく、足をひきずって歩いた▲
 治療のために入学が数年遅れた年上の同級生。年下の級友たちは、しばらくどう接すればいいのか戸惑い、声すら掛けられずにいた。そんな気持ちを察して発せられた言葉。見えない「壁」を打ち砕き、かえって救われた気がした▲
 体育の長距離走では顔をゆがめることもあったが、皆じっと見守っていた。ただ走るのが苦手なだけで、そんな子どもはいくらでもいる。だから殊更に「頑張れ」なんて声援は送らない。ごく普通の友人として助け合いながら学校生活を送り、障害を気にとめることもなかった▲
 一方、世間では一部メディアなどによって「障害者が挑戦する姿は感動を呼ぶ」というイメージが広がる。そんな風潮に対し、先月末のNHKの情報番組で、障害者自らが「障害者は健常者を感動させる道具じゃない」と強く異議を唱えた▲
 誰もが事故に遭って、ハンディを負う可能性がある。突然「勇敢なヒーロー」に仕立てられては困惑もしよう。出演者の本音に共感しつつ、新たな「壁」をつくっていないか自問した▲
 来週、リオデジャネイロ・パラリンピックが開幕し、柔道に県人2人が出場する。一アスリートとしての活躍が、五輪と全く変わらない感動をもたらすはずだ。

2016年09月02日   愛媛新聞


<パラリンピアンの翼>(1) 車いす陸上・佐藤友祈

2016年09月03日 01時51分53秒 | 障害者の自立

 二十一歳の秋、高熱に襲われ意識を失った。思い返せば半年ほど前から、足や腰に力が入らないことはあったが、単なる疲れと思っていた。リオデジャネイロ・パラリンピック車いす陸上400メートル、1500メートル(T52クラス)に出場する佐藤友祈(ともき)(26)=静岡県藤枝市出身=は、いまも脊髄炎にかかった理由が思い当たらない。

 へそから下の不随と左腕の重いまひをもたらした原因を医師は「菌が脊髄に入り悪さをした」と診断した。

 小中学校では陸上中長距離に励み、高校生のころはキックボクシングのジムに通った。「体は丈夫と思っていたのに、なんで自分が…」。父隆(たかし)(54)におぶわれ退院した日から、家を出る気力が出なかった。一年十カ月後に二〇一二年のロンドン・パラリンピックをニュースで見るまでは。

 画面には「レーサー」と呼ばれる時速三十キロを超える車いすで走る陸上選手の姿。会場は熱気にあふれていた。障害者のイメージが変わった。二カ月後、地元の陸上選手を見つけてレーサーを使わせてもらうと、風が頬をなでた。久しぶりの感触だった。

 パラリンピック出場を目指すと決めた一四年、練習場が近い岡山県内の職業訓練・リハビリ施設に入所した。「パラリンピアン」という言葉を知らない人が多かったころから車いす陸上に懸け、ロンドン大会に出場したT53クラスの松永仁志(43)が、偶然にも岡山市に住んでいた。

 松永はかつての自分と佐藤を重ねた。高校二年のころのバイク事故で両脚が不随になった松永。〇四年のアテネ・パラリンピックへの出場を目指して果たせなかったことで、十年勤めた企業を辞め、フルタイムで働く「安定」を捨てた。非常勤の仕事をしながらスポンサーを探して回った。「ろくに力もないのに鼻っ柱が強く、反感を買うこともあった。支援してもらえるありがたさを知った」

 一四年からは、障害者が事務代行などをする会社「グロップサンセリテ」(岡山市)所属の選手として、正社員の身分で競技に専念している。翌一五年九月に招いた佐藤も正社員になった。

 だが、佐藤の練習時間は昔の松永のように午後五時半までのフルタイムの仕事を終えてから。その理由はこうだ。「二〇年の東京大会開催が決まり、企業から声が掛かる障害者アスリートは増えている。でも、二一年以降はどうなるか。友祈にはまず、地に足をつけて生きることを学んでほしい」

 リオは、障害者アスリートとして一歩を踏み出した佐藤にとって初めての大舞台。松永が導き、ともに羽ばたく。

 (文中敬称略)

 百六十カ国・地域以上の四千人を超える身体・知的障害者がメダルを競うもう一つの五輪、パラリンピックが七日、ブラジル・リオデジャネイロで開幕する。出場選手たちを地球の裏側まで運んだ「翼」を伝える。

日本勢の強化合宿で練習に励む佐藤友祈選手


多様な想定で 福祉施設の管理者ら学ぶ 相模原事件受け /香川

2016年09月03日 01時45分48秒 | 障害者の自立

 相模原市の障害者施設殺傷事件を受け、県内の社会福祉施設の管理者らを対象にした講習会が県庁で開かれた。県などが主催し、警察官が施設の防犯対策などを説明。約230人が聴き入った。

  県警生活安全企画課の山地秀一課長補佐は今回の事件について「これまでに無い事件。もし犯行が昼間だったら、もし放火目的だったらと、さまざまな対策の検討が必要」と指摘。その上で、施設の構造や入所者数に応じた防犯マニュアルの作成▽訓練の実施▽カメラやセンサーなど防犯用具の設置▽日ごろの警戒意識の向上−−などを呼びかけた。さすまたなどの防犯用具を使って実演し、「さすまたは侵入者の背後に壁がある時に使うと有効」などと説明した。

 高松市内の老人ホーム職員、川渕秀樹さん(46)は「事件は驚いた。マニュアルの作成などはすぐに取り組みたい」。同市内の介護施設に勤める岸本拓人さん(30)も「施設でも防犯の見直しを進めている。ただ、防犯意識を高めるだけでは、今回の事件の解決にはならない。障害者への理解が社会でより深まってほしい」と話していた。

 さすまたの使い方を説明する山地課長補佐
 
毎日新聞   2016年9月1日