日本精神神経学会が見解
日本精神神経学会の法委員会は、神奈川県相模原市の障害者支援施設の入所者殺傷事件に伴い、精神医療が「保安のための道具」になることを懸念する見解をホームページに掲載した。治安的な観点に基づく保護観察制度や強制通院制度の導入に「断固として反対」としている。
この殺傷事件については、厚生労働省が先月、検証・再発防止策検討チームを設置。事件の前に容疑者を入院させた「措置入院」の判断などを検証して課題を明らかにした上で、今秋にも再発防止策を取りまとめる方針を示している。
見解では、今回の事件によって精神保健福祉法が患者管理のための法律として強化されることを懸念。精神医療が特殊な医療に逆戻りすることや、精神障害者の差別が助長されることは「許されない」としている。
また、措置入院を含めた精神保健福祉法については「犯罪予防のためにあるのではないことを明確にしなければならない」と指摘。制度面で措置入院が解除されて数カ月後の犯罪を予測することまでは要求されていないことや、犯罪の予測は医学的に不可能なことを挙げ、「この事件が措置入院制度の不備によって起きたと断ずることはできない」と説明している。
措置入院の経験者についても「治安対策の対象者ではなく、地域社会の一員として平穏に生活する権利を持つ市民」と説明。「その支援策は治安的観点ではなく、医療による支援と住民福祉の考え方に基づいて講じられるべき」としている。
(2016年9月6日 新井哉・CBnews)