7日開幕のリオデジャネイロ・パラリンピックで、視覚障害のある選手がプレーするゴールボールの女子日本代表チームが連覇に挑む。堅い守備が、前回ロンドン大会金メダルの原動力となったが、この4年でライバルからは研究されてきた。それをはね返そうと、主将の浦田理恵選手(39)らは今夏、ある特訓に取り組んだ。
勢いのある球が大きく弾みながらゴールに向かってくる。音や振動で瞬時にコースを判断し、体を投げ出してブロックする。球を止めると、すぐに相手側に投げ返して攻撃に転じる。
福岡市西区の体育館で8月上旬、浦田選手や小宮正江選手(41)が、実戦を想定した練習を繰り返した。
普段の練習では、2人が所属する障害者スポーツ選手雇用センター「シーズアスリート」(福岡市)の仲間が主に相手を務める。だが、この日、コートの相手側に立ったのは、市内の専門学校「コンピュータ教育学院(CKG)」硬式野球部の男子学生たちだ。
ゴールボールはバレーボールと同じ広さのコートで1チーム3人で対戦。鈴入りの球を転がし、幅9メートル、高さ1・3メートルのゴールに入れて得点を競う。球はバスケットボールとほぼ同じ大きさだが、重さは約2倍の1・25キロ。
球はボウリングのように転がす。日本は失点を抑えて少ない得点を守りきり、メダルを獲得してきた。だが、体格やパワーでまさる外国チームには近年、大きくバウンドする強烈な球を繰り出す選手が目立ってきた。球が浮き、投げ出した体の上を越えたりすり抜けたりするため、守備がいっそう難しくなった。
視力の程度に関係なく同じ条件でプレーできるように、選手はアイシェード(目隠し)を装着する。浦田選手らが対策を探っていた昨年、視覚障害の有無にかかわらず参加できる大会が福岡であり、CKG野球部が参加した。投手の竹馬敦進(ちくばたいしん)さん(20)の力強い球に「世界レベルの威力。ぜひ練習を手伝ってほしい」と白羽の矢が立った。
今夏3回にわたった特訓では、野球部員10人ほどが交代でコートに立ち、浦田選手らと向かい合って球を投じた。強い球に慣れるだけでなく、普段と違う練習相手と組むことで、さまざまなクセの球に対応する練習にもなった。
竹馬さんは浦田選手らの姿に「素早い反応やチームプレーなど、野球にも参考になった」。向(むこう)孝則さん(20)は「メダル獲得に少しでも役立てば、うれしい」と話した。
小宮選手は、マッサージの資格を取ろうと通った国立福岡視力障害センターでゴールボールと出会った。今回が4大会連続のパラリンピック出場となり、2012年のロンドン大会では主将を務めた。浦田選手は、04年のアテネ大会で銅メダルを取った小宮選手らの活躍を知ってゴールボールを始めた。前回大会では金メダルに貢献した。
浦田選手は「私たちだけでなく、支えてくれたすべての人の力を一つにしたオールジャパンで連覇をめざします」と力を込めた。
体を投げ出して球をブロックする浦田選手(左)と小宮選手=8月、福岡市西区
2016年9月6日 朝日新聞