大阪市のJR京橋駅で、車いすの利用者がホーム間移動にエレベーター(EV)5基を乗り継がなければならないのは「必要なEVの設置を怠り、移動の自由の侵害だ」として、大阪府大東市の男性(51)が8日、JR西日本に3基のEV新設などを求め大阪地裁に提訴する。
1日26万人、3番目の巨大ターミナル駅…「最低限の整備、放置…法の趣旨を踏みにじって…」
代理人の池田直樹弁護士は「段差のない経路が一つでも確保されていればよいとする考えでは不十分だ。健常者と同じ利便性と公平さを求める」と話している。
原告の男性は脳性まひがあり、日常的に車いすを使用。京橋駅の大阪環状線外回りホームから片町線(学研都市線)の四条畷方面ホームへ移るには、EVを5基乗り継がなければならない上、大きく迂回を強いられ、最低でも10分以上かかる。一方で双方のホーム間には階段があり、健常者は1分かからず移動が可能。訴訟ではこの地点を含む3基の新設を求める。
バリアフリー法は鉄道事業者らに対し、駅や車両の構造を障害者や高齢者が円滑に移動できる基準に適合させ、維持しなければならないと明記。関連の法令では円滑に移動できる経路をホームごとに一つ(ワンルート)以上確保するよう求めている。
原告側は「JRは最低限の整備しかやっていない。健常者と比べて車いすの利用者に過度の負担がかかっている状況を放置しており、法の趣旨を踏みにじっている」と批判している。
JR西によると、同駅は乗降客数が府内のJRで大阪駅、天王寺駅に次いで3番目に多く、1日当たり約26万人。京阪本線や大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線が接続する。
JR西広報部は「既に同法に基づいて段差を解消した」との認識を示した上で「一部経路で不便をお掛けしているのは事実。駅の構造や費用対効果の検討も必要で、関係自治体と協議しながら対応したい」
京橋駅のエレベーター新設などを求め、大阪地裁に提訴する車いす利用の男性=大阪市城東区、都島区
JRの京橋駅の構内図。大阪環状線の外回りホームから片町線への乗り換えは、車いす利用の場合、バリアフリールート(図中で赤色)を通り、エレベーター5基を経由し10分以上かかるという(「JRおでかけネット」から https://www.jr-odekake.net)
2016.9.9 産経ニュース