【リオデジャネイロ=大野潤三】10日午前(日本時間10日夜)に始まったパラリンピック・リオデジャネイロ大会の柔道男子100キロ超級に、前回ロンドン大会の覇者・正木健人(けんと)選手(29)(エイベックス)が出場した。曲折を経てたどりついた大舞台。2勝して進んだ準決勝で一本負けを喫したが、3位決定戦で2大会連続のメダルを目指す。
兵庫・淡路島の出身。中学時代に柔道を始め、五輪選手を輩出してきた強豪・天理大に進んだ。しかし、生まれつき弱かった視力はさらに低下し、2011年に視覚障害者柔道に転向。同年の世界選手権、12年のロンドン大会を制し、世界に名をとどろかせた。
その後は、マッサージ師の国家資格を取得するための勉強に忙殺された。14年に現在の所属先に入社し、国際大会にも復帰したが、優勝を逃した。本格的な練習から離れ、回り道をしている間に、世界のレベルは一気に上がっていた。
頼ったのは、元五輪選手で天理大柔道部監督の穴井隆将さん(32)。体作りからやり直し、後輩の学生たちとひたすら組み合った。180キロまで増えていた体重は、4年前のロンドン当時とほぼ同じ約150キロまで絞った。
だが、かつて痛めた右膝への不安から、本来の動きはなかなか取り戻せなかった。今年7月の直前合宿。「恐怖心を克服しろ」。温和な穴井さんの厳しい一言に、迷いを断ち切った。
「1戦1勝。しっかり戦えば、お前は勝てる」。穴井さんは、そう送り出してくれたという。「『やっぱり正木は強かった』と世界に思い知らせたい」。その決意を、3位決定戦にぶつける。
男子100キロ超級、準々決勝で一本勝ちした正木健人選手(10日)
2016年9月11日 読売新聞