神戸・新開地に2021年、兵庫県内の視覚障害者のトータルサポートを目指す施設が整備される。公益財団法人中山視覚障害者福祉財団(神戸市中央区)が建設。市や各種支援団体と協力し、生活訓練や交流の場をつくる。同財団は「京都、大阪に比べ支援の場が少ない兵庫に、生活相談の拠点をつくりたい」と意気込む。(上杉順子)
大阪や京都には視覚障害者に特化した大規模な拠点施設があるが、兵庫にはなく、県内在住者は相談のため遠出をせざるをえないという。同財団の現在の拠点で、支援団体なども入居する「中山記念会館」(同市中央区神若通)の約10倍の広さといい、湯川洵常務理事は「卓球場など交流の場も設けたい。県内の視覚障害者支援の象徴的な建物になればうれしい」としている。
地上6階地下1階、延べ床面積約4750平方メートルのビルを予定。建設地は神戸市立心身障害福祉センターの跡地(同市兵庫区水木通)で、建物が耐震性に欠けるため3月末で閉所し、他施設に機能を集約した。市は障害者福祉の拠点施設に限定して土地を取得する事業者を募集。同財団が5億円で買い取り、建物を解体し新ビルを建てることになった。
07年から使っている現会館は通所施設やボランティア連絡会など6団体が無償で入居しているが、オープン数年で手狭になり、7、8年前から新しい場所を探していたという。
5月に市と売買契約を締結。運営開始は21年2月頃の予定。
■相談や訓練、交流の場に
中山視覚障害者福祉財団によると、視覚障害者の大半は病気や高齢化が原因の中途失明者で、新拠点の利用者の中心となる。先天的障害者や幼少時に見えなくなった人は盲学校などで生活能力を身に付けるが、中途失明者は白杖(はくじょう)や音声ソフトの使い方を一からマンツーマンで学ぶため、相談には歩行訓練やパソコン置き場など、広い空間が必要という。
同財団の現在の拠点に入居する支援団体「神戸アイライト協会」には年間2千人から相談が寄せられる。森一成理事長(64)は「中途失明者は支援情報を持たず、社会から孤立している人も多い」と指摘する。
文字を約3~50倍に拡大できる読書器や音声時計など、日常生活を補う多様なサービスがある。白杖も障害の程度や体格、歩き方に応じて約100種類もあるが「視力が少しでも残っていると自分を障害者とは思わない。何も知らず、生活や仕事を諦めていく人がいる」と森さん。「新拠点として大きなビルが建てば、視覚障害への注目も高まる。支援に気付く人が増えればうれしい」と期待を寄せる。
神戸・新開地に整備される、視覚障害者の拠点施設のイメージパース図
パソコン画面を拡大し、音声で読み上げるソフトを併用する利用者
2018/6/6 神戸新聞NEXT