障害者差別解消法が施行され2年が過ぎた。ただ法の定めは、障害がある人への“配慮”は公的機関が「義務」なのに対し、民間は「努力義務」。では、私立高校は障害がある子どもにどのように、そしてどこまで配慮すべきか――。そんな事例が佐賀県内でも起こった。
保護者「差別と感じた」
県内に住む重度難聴の生徒が公立中学校3年だった昨秋のこと。受験校の一つとして、県内の私立高の入試説明会を聞いた。英語関連のコースを考えていた。
この私立高側によると、同校の担当者がその後、生徒の中学校に出向き、生活学習状況を確認した。このとき、「大半の授業で先生1人が横について筆談で支援している」などの説明を受けた、としている。そこで私立高の担当者は生徒宅を訪問し、保護者に「同じように対応する力がない」と説明、謝罪したという。
保護者は「生活状況を理解するために来ると考えていた。求めていないのに、一方的に『対応できない』と言われた。受験拒否と同じ。差別と感じた」。他の私立高は受験できて、入学を阻まれるようなことはなかったという。生徒は今春から県内の公立高校に通っている。
私立高側は朝日新聞の取材に対し「恥ずかしいことだが、中学校と同じように対応する力がない。率直に申し訳ない」と釈明。「以前は生徒が1200人いたが、今は400人を切っている」などと財政上の問題も挙げ、「いち私学の力量の限界」と説明している。今後も同じような難聴者が入学を希望しても、対応は変わらないという。
公的機関は義務 民間は努力義務
県などによると、2016年4月施行の障害者差別解消法は、障害を理由に差別することを禁じている。また障害者の要望があったとき、負担が重すぎない範囲で配慮するよう求めている。
ただ、この配慮は公的機関は義務なのに対し、私立高など民間は努力義務という。
文部科学省の通知では、学校法人は、受けた要望が「過度の負担になる」と判断した場合、分かりやすく説明し、実現可能な代替案を示すなど対話をして、共通理解を図ることを求めている。
県私立中高・専修学校支援室は、私立高から報告を受けたが、「法に違反しているか判断する立場にない」として、保護者から話は聞いていない。担当者は「できるだけ相互理解を図ることができればよかったと考えている。施設や設備、外部人材活用の経費の補助金もあり、説明していきたい。法の趣旨も伝えていきたい」と話している。
佐賀県は障害者差別解消法について解説したハンドブックを出している。表紙で「障害のある人もない人もみんなが暮らしやすいまちに」と訴え、中身の事例で「学校の受験や入学を拒否する」を「×」としている
2018年6月13日 朝日新聞社