視覚障害者のランナーをサポートする伴走に必要な知識や技術を学ぶ研修会(鳥取県障がい者スポーツ協会主催)が16日、鳥取市のコカ・コーラ陸上競技場で開かれた。「気持ち良かった」「誰かの役に立ちたい」-。視覚障害者と伴走者が一本のロープを手に、つながりを深めながらランニングを楽しんだ。
県内には伴走グループがなく、市民ランナーの池本智美さん(57)=鳥取市=と伴走者研修会に参加経験がある川口誠さん(63)=倉吉市=が同協会に相談し、初めて開催。約50人が参加した。
日本ブラインドマラソン協会常務理事の鈴木邦雄さんを講師に招き、視覚障害者の特性や伴走のいろはを教わった。鈴木さんは「見え方も人それぞれだが、見えない方にとって何が困るかを考えること」と、安全に走るための気配りの重要性を説いた。
1人で走る時の3倍の幅を意識し、木の枝や縁石、障害物、路面の凹凸などに気を配りながら走者に声を掛ける。ロープを持つ手の高さを合わせ、走者が手を体の中心で振れるようにする。鈴木さんは「いいタイムを出すことではなく、安心して一歩が出せることが大事」。不安から体が後ろに傾きやすくなり、伴走には「信頼関係が重要」と強調した。
病気が原因で失明した米子市の女性(39)は伴走者に寄り添われ、7年ぶりのランニングに笑顔を見せた。「慣れたつもりでも歩くのでさえ緊張する。走る前は不安だったが、気持ち良かった」
大学まで陸上部で、伴走に興味があったという鳥取市大覚寺の団体職員、正美健さん(31)は「歩調を合わせたり声を掛けたり。走るだけではなく難しかったが、得意なことで誰かの役に立てるなら続けたい」と話した。
研修会には定員を大きく上回る参加希望があったという。池本さんは「大会などで伴走のことが気になっている人は多いと思う。目が見えないことで閉じこもっている人がいれば、外に出て歩いたり走ったりするきっかけにしてもらいたい」と話す。今後、伴走グループを立ち上げ、練習会などの開催につなげていく考えだ。
アイマスクをした視覚障害者ランナー役に寄り添い、呼吸を合わせて走る伴走者
2018年6月17日 日本海新聞