横須賀うわまち病院心臓血管外科

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心不全に対する外科的治療の新たな動向:第1回心不全パンデミック講演会要旨

2020-01-29 13:39:05 | 心臓病の治療
進歩する心不全の「外科的治療」

 心臓血管外科の診療における手術の約半数は、「心不全」に対するものといえます。
 心不全の主な手術としては、虚血性心疾患の手術(冠動脈バイパス術、左室形成術、心筋梗塞合併症手術)、弁膜症手術、先天性心疾患の手術などがあります。
 虚血性心疾患の手術方法は、21世紀に入ってから進歩し、現在日本では人工心肺を使用しない「心拍動下冠動脈バイパス術(オフポンプ CABG)」が主流になっています。オフポンプ CABGは人工心肺を使用しないため、患者さんへの負担の少なさや、治療費の削減などに貢献しているといえます。
 また、手術手法も進歩しています。たとえば「左小開胸の冠動脈バイパス術」は、胸骨正中切開(胸の真ん中を縦に切開する方法)を行わないため、縦隔炎※6のリスクを抑えることや、早期に社会復帰ができることなどが期待されます。また弁膜症の新たな手術方法として「右小開胸での僧帽弁形成術」もあり、早期の社会復帰を目指せる手法と考えられています。当院では患者さんの状態に応じてよりよい治療を提供できるよう、こうした手術手法の検討も行います。

外科治療のこれからの課題とは
 心不全の外科手術における課題のひとつは「難治性で、治療法が心臓移植のみと考えられる方」への治療です。法律の改正によって移植数は増加していますが、現在でも移植の申請数が臓器提供数を上回っている状況は変わりません。
 近年海外では、心臓移植に代わる治療法として、長期の在宅治療を目的とした人工心臓治療(Destination Therapy:DT )が注目されるようになってきました。日本でも導入が目指されています。こうした新たな補助人工心臓の登場が心臓移植の対象となる患者さんにとって福音となることが望まれます。

※6 縦隔炎(じゅうかくえん):心臓の手術などの後に生じる感染性合併症のひとつ。手術部位の周囲に感染をおこして縦隔(じゅうかく:左右の肺のあいだの領域のこと)に膿(うみ)が溜まる症状のこと
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