オーグメンテーションとは、増強する、とか、増やすというような意味がありますが、僧帽弁手術におけるオーグメンテーション(Augumentation)とは、自己心膜を使用して、僧帽弁の弁尖の面積を増やすことによって前尖と後尖の接合をしやすくして、僧帽弁逆流を停止させる手術手技です。弁尖には異常がなく、左室拡大によって発生するTetheringの症例で、特に弁輪縫縮だけでは、後尖の左室方向に牽引される角度がより大きくなってしまい逆流が制御できない症例に特に適用されます。
このオーグメンテーション、一般には後尖の高さが低い症例に、その高さを増強するというコンセプトで実施されますが、そもそも僧帽弁後尖とは必要なのか、という議論があり、大きな前尖があれば僧帽弁の後尖は不要という考えもあります。すなわち、後尖にオーグメンテーションするよりも、前尖にオーグメンテーションするようが、確実にTetherinによる僧帽弁逆流は制御しやすいらしいです。学会でのレクチャーや書物には後尖のオーグメンテーションばかり紹介されている印象があり、まだ前尖のオーグメンテーションに関しては、認知度は低いと思います。