横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

急性大動脈解離から救命されたあとの人生

2020-12-10 05:42:20 | 大動脈疾患
 急性大動脈解離の緊急手術を受け、救命された患者さんが、その後の人生を孤児のお世話をすることで社会貢献していることを聞いて、感動しました。

 救ってもらった命を、他の人の為に使う、久しぶりに聞いた美しい話だと思いました。心臓血管外科医としてたくさんの命を救ってきた、と思うことがある反面、その救われた命を他の人に使うといった精神、現在の日本人には無くなってしまった感性かと思っていました。海外ではそうした精神が息づいていて、心臓移植を最初に受けた患者さんがその後の人生を心臓移植の普及に人生をかけた、というような偉大な功績をあげるといった美談を聞いたことがありますが、日本人ではそうした美談、あまりないように思いますが、いかがでしょうか。
 そうした美談、積極的に社会に紹介していく必要があるのではないかと思いました。

 そうした孤児の人数は横須賀市が異常に多いのだそうです。先々月の横須賀市の後方に大々的に大きな写真で特別養子縁組の宣伝をされていましたが、興味のある方は連絡ください、としか記載されておらず、具体的な実情は全くわかりませんでした。日常生活では全く接することがない、そうした子ども達、ドラマや映画の話、としか思っていない人、筆者も含めてほとんどの人だと思いますが、もう少しDisclosureしないと、こうした美談も生まれない社会がますます悪い方向へ行ってしまうのではないでしょうか・・・。
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新型コロナウィルスに関する心臓血管外科手術前の術前PCR検査

2020-12-09 09:56:23 | その他
 現在、新型コロナウィルスに関する心臓血管外科手術前の術前PCR検査は、入院手術する際には事前に全員実施しております。入院の2-4日前に実施していますが、主に唾液を患者さんにとってもらい、検査会社に提出して翌日結果が報告されます。唾液が十分出せない患者さんには、鼻咽頭から医師が採取しています。
 現在新型コロナウィルスのパンデミック影響で患者さんが増えているため、病院内への持ち込むのを防ぐ水際対策として実施しています。というのも、現在の新型コロナウィルス陽性者の4割は無症状だそうで、そうした無症状の患者さんが入院して、病院内で広めてしまう危険があるためです。
 多くの手術予定の患者さんはご高齢の方が多く、こうしたご高齢の人ほど、普段外出を控えているという人が殆どであるため、ウィルスを保有している可能性は低いと思いますが、皆さんが安心して治療を受けられる環境を作るために患者さんに協力してもらっています。

 唾液を出してもらう際になかなか出せない、という人のために、採取室には梅干しの絵がおいてありましたが、そんな梅干しの絵を見たところで唾液が出るとは思えません。唾液は出ませんでしたが、その代わり大きな笑いが出てしまいました。
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フードロス解消 = 横須賀の庶民の味方 = ミドボク

2020-12-08 13:33:04 | 心臓病の治療


横須賀で最も庶民の味方をしてくれるお店、ミドボク = 緑の牧場は、三笠商店街の中にあります。隣のDAINA(大菜)と並んで、横須賀の救世主です!!この二店舗を回るだけで、あり得ないくらいたくさんの食材を大量に、しかも激安で手に入れることが出来ます。写真の投げ売り商品は、テレビでCMもしているスパゲッティの冷凍食品、通常480円するものとなんと、80円!ほぼ9割引です。こんな投げ売り商品があって、こんな商品は瞬殺でなくなってしまいますので、ついつい一期一会、であったタイミングで買ってしまう商品がたくさんあります。
 最近は先にミドボクにいってから、隣のDAINAに行かないと、買った商品の量の関係で、動くのが大変になってしまいます。途中にある、浜勇って八百屋さんもかなりの実力者ですので、先にチェックしてから、主戦場に向かいます。

 この庶民の味方は、賞味期限の近いものが多く、フードロス解消に貢献していると思います。まさに、ミドボクは世界を救っています。

 埼玉県では、期限切れ近い商品だけでなく、期限が切れた、「きれたて」を売るお店もあるとか。これも世界貢献している企業と言えます。

最近はお肉も真空パックに入っているものが増えてきており、これにより見た目は少々悪いけれども工場で加工されたままの状態で販売されるため賞味期限が二倍に延長され、フードロスを減らすための一助になるという報道もありました。
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心臓血管外科領域で最もお金を持っているのは・・・ これによって治療方針も影響されている!

2020-12-06 12:01:10 | 心臓病の治療
 心臓血管外科領域で最もお金を持っていて影響力があるのは、何といっても人工弁を扱っている会社です。人工弁は特に最近は生体弁の使用が9割という現状で、人工弁が一つ100万円近くしますし、高齢化によってますます使用数が増加しています。最近は経カテーテル治療による大動脈弁設置術(TAVI=Transcatheter Aortic Valve Inmplantation)もあり、こちらのデバイス料金が480万円あまりと非常に高額です。どうしてもこうした商品を扱う弁会社にはお金が集まるので、医療関係へのスポンサーになっているという現実があり、これによって、医療者側の治療方針も影響されているというのが本音です(だれも口には出しませんが)。
 現在、世界の潮流としてかつての機械弁全盛時代から、生体弁全盛時代へと大きく変化したのは日本においても2008年ころに生体弁の使用数が機械弁の使用数を逆転して凌駕してからとしていいと思います。このころ、生体弁の会社の一大キャンペーンが毎年繰り広げられ、生体弁への移行に拍車がかかりました。その後、この10年、いつのまにか生体弁の使用率は9割を超え、より、若い人にも生体弁が使用されるようになり、同時にTAVIもより広範囲の人に適応される方向に今後向かうものと想像されます。

 医療費の抑制には、国が主導してコントロールする必要があり、医療者への人件費が少なく、高額のデバイス料金へお金が流れる現在の仕組みから、より安いデバイスを使うと医療者や医療施設へ多くお金が流れるシステムに変えていく必要があります。
 たとえば、現在矛盾があるのは人工弁置換よりも、より技術的に難易度が高い自己弁を温存する弁形成術の手技料が安くなっていることです。たとえば、人工弁置換するよりも自己弁を温存した方が手技料が50万円高く設定されれば、より自己弁を温存する症例が確実に増えます。たとえ手技料を50万円高くして、その手術に人工弁輪を使用しても、結果的に10万円以上、人工弁置換よりも総医療費は安く上がります。こうした国の施策が望ましいと考えます。
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坐骨動脈瘤は膝窩動脈瘤と同じく手術対象です!

2020-12-06 11:51:59 | その他
 坐骨動脈は坐骨神経に沿って走行する胎生期からの遺残動脈で、多くの人には生まれたときには退縮して、下肢の血流は外腸骨動脈から続く大腿動脈系に支配されていますが、坐骨動脈が遺残している場合は、この内腸骨動脈系の動脈が下肢血流を栄養し、大腿動脈は発達していません。
 この坐骨動脈には動脈瘤が出来ることがあり、この場合、瘤内に出来た血栓が下肢に塞栓症を起こしてしまい、一度塞栓を起こしてからは血行再建が難しく下肢切断になってしまう症例が多い為、予防的に手術をする必要があります。これは膝窩動脈瘤と同様で、見つけ次第、特に瘤内に血栓を伴っている場合は早期の手術が必要です。
 残念ながら最近は下肢の血流障害の診療は循環器内科医が行っていることが多い為、この啓蒙が不十分で、遺残坐骨動脈瘤と診断されてもそのまま放置され、症状が出たときには手遅れという症例が実際にあります。

 膝窩動脈瘤、坐骨動脈瘤、大腿動脈瘤、見つけ次第、血管外科医に相談してほしいです。
 手術は瘤の切除、空置などの処置をしたあとに、末梢側にバイパスを作成します。
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OZAKI手術=自己心膜による大動脈弁再建術をMICSで(MICS-OZAKI手術)

2020-12-06 11:26:42 | 心臓病の治療
 自己心膜によって大動脈弁尖を再建することで、人工弁置換しなくてすむ手術は、東邦大学大橋病院 心臓血管外科教授の尾崎重之先生によって考案された手術です。既に尾崎先生によって1300例以上の執刀が行われていて、その成績、長期予後も良好と言われています。自己心膜をグルタールアルデヒド処理し、尾崎先生の考案したサイザー器具によって型どおりに弁尖を作り、型にあわせて大動脈弁輪にマーキングしたとおりに縫着して再建します。弁尖がより長持ちするように改良がくわえられてきましたが、人工弁のように心膜弁尖が裂開したりすることはほとんどなく、若干感染性心内膜炎の発生によって再手術が必要になった症例があるのみで、人工弁置換よりも成績が良好だそうです。
 人工弁の場合は固いステントポストに心膜弁を張り付けたりして、固い可動性がない組織に膜を張り付けるために、膜が動くたびに膜に負担がかかることが劣化の原因となるのに比較して、自分の弁輪に縫着することで、この圧を微妙に逃がして膜組織に負担がかからないことが長期にわたって膜が耐えられる理由ではないか、と尾崎先生が考察しています。

 今までも胸骨部分切開などにより小開胸アプローチでのOZAKI手術も試みられてきましたが、10月に尾崎教授が横須賀市立うわまち病院にStonehenge TechniqueによるMICS-AVR(小開胸アプローチによる大動脈弁置換術)を見学に来られ、その後、筆者が東邦大学大橋病院に伺って、MICSアプローチによるOZAKI手術のお手伝いをさせていただきました。手術は腋窩動脈送血での人工心肺セットアップになりましたが、無事に4時間ほどで1例目のMICS-OZAKI手術が完遂されました。その後も1例、同様の手術が行われ、今後、MICS-OZAKI手術が標準術式として行われていくことになるそうです。

 人工弁を使用しない大動脈弁再建術は、現在と特に小児心臓血管外科領域で注目されており、人工弁の適応するサイズがない小児において今後広まっていくものと思われます。現に尾崎教授が海外でも主に小児病院で同手術を執刀、指導に行かれているそうです。
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新型コロナウィルスパンデミックの心臓血管外科診療への影響

2020-12-05 12:26:17 | 心臓病の治療
 新型コロナウィルスパンデミックにより重症患者が増えるとICU管理が必要な患者さんが増加。これによって最も大きな影響を受ける診療科の一つは心臓血管外科です。ECMOといわれる人工心肺装置は、主に循環器の救急患者を救命するための装置です。循環器の救急を受けている施設や心臓血管外科を有する施設では必ず持っている装置ですが、COVID-19の呼吸不全患者さんに主に使われてしまうと、ICUもICUスタッフも占拠されて通常の心臓血管外科診療ができなくなります。
 緊急事態宣言をしている第一波のときには多くの病院で一般病棟を閉鎖して、その看護師などのスタッフを新型コロナウィルス患者に充てるなどの措置をしてしのぎました。そうした対応をすると、通常の患者さんが入院、治療しにくることがなくなるために、その分の収入が減ってしまい、かといって、新型コロナウィルス患者さんの多くは、手がかからない人も多く、またECMO以外は特殊な治療もしないため、病院への収入も大幅に減少します。
 前任地の自治医大さいたま医療センターでも一時ECMOが4台運転されており、これは全国のECMO患者さんの10%に相当する数だったようですが、この時は毎月億単位の減収となったようです。
 新型コロナウィルスで、心臓血管外科診療もできなくなり、病院も億単位の減収を迫られるという、非常に厳しい状況がまた起ころうとしています。
 なんとか、ここで食いとどまって、ワクチンができるまで持ちこたえてほしいです。
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静脈血栓症後の下肢浮腫

2020-12-05 12:22:48 | その他
 深部静脈血栓症は主に下肢の静脈に血栓をきたし、静脈の閉塞のために下肢がむくみます。足のむくむ病気の典型の一つです。この病態は、抗凝固療法などで徐々に血栓が溶解して血流が再開すると浮腫が軽快することがおおいのですが、実は浮腫が持続する患者さんが多くいます。これは、静脈起こしているときに、静脈弁が破壊されてしまうため、下肢の血液が静脈弁によって心臓まで上がっていくことができずに起こる浮腫です。これは静脈血栓症の後遺症ともいえます。
 静脈弁を再建することは難しいので、なかなか有効な治療がないのが実情です。
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心室中隔欠損症に対する右小開胸アプローチによる低侵襲手術

2020-12-05 12:08:58 | 心臓病の治療
 心室中隔欠損症は、どの位置に存在するかによって、アプローチが違うため術前の詳細な手術プランの検討が必要です。超音波検査がもっとも有力な検査ツールであることは間違いありませんが、穴の正確な位置、弁など他の構造物との関係を評価するのには造影CTやMRIが有力な武器になります。
 横須賀市立うわまち病院では、小開胸アプローチによる低侵襲心臓手術(MICS =Minimally Invasive Cardiac Surgery)を基本にしているため、心室中隔欠損症においても右小開胸アプローチが可能かどうかの観点から術前評価を行っております。
 心室中隔欠損症のタイプとして最も多いのは膜様部欠損です。これは主に三尖弁中隔尖の直下に存在するため、右房からのアプローチが一般的です。右房切開して三尖弁の中隔尖をけん引して欠損孔を露出、閉鎖しますが、中隔尖に遮られてうまく見えない症例が多いので、当施設では中隔尖を弁輪近くで切開してアプローチしています。これにより視野は抜群に改善します。切離した三尖弁中隔尖はその後、縫合し、多くの場合は三尖弁逆流の予防のために人工弁輪を縫着しています。これらの膜様部欠損に対しては右小開胸アプローチでのアプローチが可能です。左心系と交通しているため必ず大動脈遮断して心筋保護液で心停止下に行います。中隔欠損部が袋状になっていて、それがまるで心室中隔瘤のように見える場合も同様ですが、瘤を残さず、パッチ縫着点をいろいろな角度から見たい場合は、従来の正中切開アプローチで大動脈を切開し、右房側からと大動脈側と両方から観察して手術する場合もあります。
 肺動脈弁直下型の場合は肺動脈切開からアプローチするため右開胸からは不可能であり、この症例も従来の正中アプローチが必要です。
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うわまち病院救急部 本田部長 総務大臣表彰!

2020-12-01 14:51:20 | その他


横須賀市立うわまち病院は国立横須賀病院が横須賀市に移管されて生まれた公設民営の病院です。開設当初から循環器を中心とする救急疾患への対応に力を入れてきており、特に救急部を立ち上げ、さらには救命センターを開設して市民の救急対応にあたってきました。年間の救急車受け入れ台数は6000台で多くの患者さんの命を救ってきました。この長年の努力が、今回、救急部部長の本田Drに総務大臣表彰という形で認められました。
 今後もうわまち病院救急部はより質の高い医療対応を目指していくことになりますが、心臓血管外科もその一翼を担うべく精進していく所存です。
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脳虚血のある急性大動脈解離に対する対処方針

2020-12-01 14:50:10 | 大動脈疾患
 脳虚血に関しては、人工血管置換術を行うことで脳の障害が悪化する可能性がありますので慎重に判断する必要があると思います。すでに不可逆的な脳の障害があり、この脳の状態が致命的な場合は手術適応なしと判断することがありますが、通常は心タンポナーデの解除、弓部分枝入口部の狭窄の解除などで生命を保存する必要がある場合はCentral Operationを行います。ただこの場合は、一刻も早く脳の血流を確保することが優先されますので、胸骨正中切開を虚血のある側の頸部に延長して総頚動脈を露出し、人工心肺開始と同時に頸動脈から直接送血を行っています。救急外来でPCPSを設置してこの処置を試みている施設もありますが、これは主にすぐに手術室に入れない状況で行っているもので、施設の事情次第と思います。頸動脈の血行再建は、Central Operationと同時にこの頸部に人工血管を吻合して再建しています。そのため、脳虚血がある症例はCentral Operationと頸部の血行再建を同時に行っている、と言えると思います。
(血管外科学会総会発表に対する質問への回答)
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