はぶて虫のささやき

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(旧:はぶて日記)

映画評1059 ~ 僕が愛したすべての君へ

2022-10-16 | 映画評
昨日は2本立てでした。

『2作を読むと互いの世界が絡み合っている様子が見えてくることで人気を集めた、乙野四方字による小説「僕が愛したすべての君へ」「君を愛したひとりの僕へ」を、2作同時にアニメーション映画化した』と紹介されていましたので、同日に見ることにしたわけです。

まずは「僕が愛したすべての君へ」です。

乙野四方字の小説「僕が愛したすべての君へ」を原作にしたアニメーション。主人公がクラスメイトから並行世界で恋人同士になっていることを告げられる。監督を手掛けるのは『劇場版 Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』などの松本淳。NHKの連続テレビ小説「ちむどんどん」などの宮沢氷魚が主人公・暦の声、『PARKS パークス』などの橋本愛がヒロインの声を務めている。


<ストーリー>
高校生の高崎暦は両親が離婚し、母親と暮らしていた。そんなある日、彼はクラスメイトの瀧川和音に声をかけられる。85番目の並行世界からこの世界にやって来た彼女は、向こうの世界で二人が恋人同士だと暦に告げる。


この作品は、後で鑑賞した「君が愛したひとりの僕へ」と対になっている、というか、同じ内容のものを別の角度から描いた作品である。

どちらから見るのかは、人によって違うと思うし、それによって感想も違ってくるはずだと思う。

こちらの方は、主人公暦と、そのクラスメイト和音の恋愛が主体となっている。

ややこしいのは、パラレルワールドを描いているので、その整合性がちゃんと取れているかどうかもポイントとなる。

結論から言うと、何が描かれているのかよくわからなかった。

しかも、最後の場面で栞という女の子が出てくるのだけど、それまでに何の説明もない(なかったはず?)なので、「何なんだ、あれは?」と思ってしまう。

しかも、その直後のシーンで、主人公を助けた女性から「名乗るほどの者ではありません」という言葉が意味ありげに出てくるのだけど、これについても「誰だ、この人は。もしかして劇中に出てきた?」とわけがわからない。

このシーンの意味がわかるのは、「君を愛したひとりの僕へ」を見てからなので、今作についてだけ言えば、あまりいい印象はない。

しかも、「君を愛したひとりの僕へ」の中のシーンが、こちらにも出てくるのだが、そのことを知らないために、象徴的なシーンであるにもかかわらず、ただの回想シーンの一つとしか思わなかった。


非常に細かいところについて言えば・・・

この一連の作品で扱われているパラレルワールドだけど、並行世界というものがあって、それは「人生のいろんな場面で選択肢が出てくる。右に行くか左に行くかで、その後の人生が大きく変わってくる」という前提の元、「もしもあの時、〇〇の方を選んでいたら」ということで、そちらの場合の人生も実は動いている、という理屈になっている。

つまり、あらすじにもある「85番目の並行世界」というのは、ある時点で別の選択肢を選んでいた場合、そこからさらに85回の選択を行った先の人生(世界)ということである。

だから、選択によっては、まったく別の人生を歩んできたにもかかわらず、実は非常に似ている状況になることもある・・・という説明もあった。

ただ、よく考えてほしい。

人生における選択の場面など、それこそ無限にある。

だから、ある選択をした場合、その次にも、さらにその次にも選択が迫られる場面が出てくるので、単純に「常に二択である」と仮定したとしても、その先は2の85乗になる。

つまり、ほぼ無限である。

だから、簡単に「85番目の並行世界」と言っているが、その「85番目の世界」が無限にあるのだから、そのうちのどの和音なのか、もう考えてもムダな話だ。

映画では、両親が離婚して、父親と母親のどちらについていくか、という「非常に重たい選択」を迫られているので、「もしもあの時、父親の方にいっていれば・・・」という2つの場面が描かれていても、特に違和感もなく「まあ、そうだったかも知れないよな」程度の感想になるのだけど、見終わった後で思い返してみると、「別に、ある条件下で選択を迫られた場合にのみ発生する世界、という設定ではないので、これって変じゃない?」と思うようになるわけだ。

こういう疑問に加えて、「あれは誰なんだ」という中途半端な終わり方(のように思えた)ので、全体として、あまり楽しむことができませんでした。

ということで、こちらの方の評価は「C」にします。

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