神西湖の畔にあるうなぎ処鈴屋
ツレアイと一緒です。
木造の一軒家、民家へお邪魔するような感覚だ。
うどんなら末広、蕎麦屋は更科か砂場、鰻は「出雲屋」が代表的な屋号。
つまり鰻だけは出雲産が日本一だった。
今では高級料理になったが、たまにはちょっと贅沢。
鰻重をいただく
やさしい三杯酢のうざく
キュウリが見えないほどうなぎが贅沢に盛ってある。
鰻重は鰻の上半身の切り身と下半身の切り身を並べて置くわけだが、その置き方に法則がある。
重箱の上段に下半身、下段に上半身。
上段の下半身は尻尾が右、下段の上半身は頭がついていたほうが左。
だからどこから食べ始めるかということは、上半身から食べ始めるか下半身から食べ始めるかという問題にもなる。
いつものように重箱の左下から箸を入れる
つまり上半身の頭から食べ始め、次に真上に向かう。
上に向かって食べていった結果、重箱の左側にきっちりとした一列のスキマができた。
そうやって二列目、三列目と食べ続けるのだが鰻重は鰻丼に比べ底が浅い。
ご飯の層の深さがあまりに違うので、箸の先が十分に深く入らないから、十分な量のご飯が掬い取れない。
その結果、ご飯も鰻も箸先からこぼれ落ちて、あたりが散らかってしまう。
食事の中盤を過ぎ後半にさしかかり、あと三口ぐらいという段階になると、重箱の中は廃棄物処理場の様相をなしてくるのであった。
重箱の底全域に展開している廃棄物を少しづつ根気よく搔き集め、重箱の角のところにため込み、これを一挙に口に入れようとしたい。
それをするためには重箱を手に持ち、逆さに高く掲げ重箱の角のところに口を当て、箸で掻きこみ、また掻きこみ掻きこみつつもこの姿、人に見られたくないなと思うのであった。