久しぶりに機内食というものを食べた。
数ある食事形式の中でも、機内食はかなり特殊である。
とにもかくにも飛行機に乗らなければならない。
駅弁なんかは、デパートの「全国駅弁祭り」などで買ってきて、家のコタツで食べてもそれなりの気分は出るが、機内食のほうはどうだろう。
「全国機内食祭り」なんてイベントがあるだろうか。
アメリカ西海岸行き、飛行時間10時間などという便に乗って1回目に出る食事は嬉しい。
ワーイ、きたきた、と嬉しい。
最初に「和食か洋食か」と聞かれける。
大いに悩んで洋食に決定するのだが、どちらを選んでも結局後悔することになる。
通路側の人が洋食で、洋食が配られる
チラリと見て、「うんうん美味しそう、正解正解」と嬉しい。
すぐ右の人が和食で、これがなかなかのものだ
海苔巻きがあり、蕎麦があり、厚い卵焼き、それに小さいながらもステーキ風のものもついている。
「しまった」と必ず思う。
隣のトレイの内容が実によく見えるんですね。
機内は狭いから、隣の食事があまりにも近接していてよく見える。
こんなに隣の食事内容がはっきりわかる食事はめったにない。
多少の落胆と共に我が食事にとりかかる。
こんなに食卓がお腹にくっついた食事もめったにない。
お腹にくっついているがゆえに、全食事内容を真上から見下ろすことになる。
こんなにも真上から見下ろしながらする食事もめったにない。
機内食はおびえつつする食事でもある。
飛行機は時に大きく揺れる。
揺れて蕎麦を頭からかぶることもある。
こぼさない、はずさない、倒さない(ビン類)、たらさない、ということに精力の70%を費やし、残りの30%の余力でする食事。
それが機内食なのだ。
航空会社の機内食担当は、客がシートベルトで縛りつけられて身動きできないのをいいことに、客を短時間でなんとか大きく太らせようとしている。
20㎡に10人の客では採算がとれないので、ウチの会社でのエコノミークラスは40人です。
などと養鶏場並みに詰め込んで、次から次へとエサを運んでくる。
到着前の軽食とフルーツ
まだフライト半ばの軽食として、ハーゲンダッツのバニラアイスも登場した。
食事が終わってしばらくたつと、窓を全部閉めて機内を真っ暗にする。
すると客は一人眠り、二人眠り、ついに全員が眠りにつく。
そういう中を、スチュワーデスがゆっくりと見回っている。
スチュワーデスのおねえさんは何故かニンマリしていて、「よしよし、そうやって早く大きく太るんだよ」
なんて思っているに違いない。