食事というものは、時間がない場合以外はゆっくり落ち着いて気持ちも穏やかに食べるものなのだが、焼肉に限ってはそうはいかない。
時間が十分ありすぎるほどあっても、必ず忙しいことになる。
最初のうちこそ落ちついて、そろそろ焼けたかな
なんて一、二片をひっくり返して調べてみたりしているが、これは嵐の前の静けさといっていい。
同時に火の上に置いた五つの肉片は、あたりまえの話だが同時に焼きあがる。
焼肉は焼きすぎると途端に不味くなるし、熱いうちがおいしい。
とりあえず一片を取りあげ、ジュウジュウいってるのを、タレにつけてアグリと一口。
ウムウム、肉と脂と甘辛いタレの味が、ウムウム、香ばしくおいしい、おぉーアチィ、ビールビール…
とやっているうちにも、火の上の残りの四片は焼けていくから、とりあえずあまり熱くない岸の方へと緊急避難させる。
避難はさせても、肉に火は通っていくから早く食べなければならない。
急いで二片ほど取りあげ、これでゴハンを食べ、キムチも食べたくなってキムチも食べ、キムチは辛いからビールが欲しくなりまたビールをゴクゴク。
ゴクゴクやりながらも肉は早くも焦げはじめ、しかし肉ばかりではなくこのへんでチシャ菜も口に入れてみたい。
そうはいっても焦げはじめた肉が先。
そこへまた新たに違う部位の肉を投入する。
と、このようにして食事は加速度がつき始めるのでした。