日本人にとってワカメはなくてはならない食べ物として存在している。
梅干し、タクアン、海苔、油揚げ、塩鮭などの系譜の中心的存在。
ただ海に漂っているだけ、海の底に生えているだけ、という人もいる。
空気のような存在という言い方があるが、みそ汁にとってワカメは空気。
みそ汁の中に入っていて当然
みそ汁とワカメは一体化していて、みそ汁の具という気がしない。
ワカメはみそ汁の具としては気の毒な立場にある。
豆腐とワカメ、茄子とワカメ、油揚げとワカメ、というふうにワカメは常に「と」と共にある。
即ちみそ汁の主役の具の家来的立場でお椀の中にいる。
ワカメがいつもお椀の底のほうで沈んでいるのは、そういう立場を心得ているからだと思われる。
豆腐とワカメのみそ汁で考えると、豆腐はハッキリと「豆腐を食べよう」と決断してすくい上げられる。
それに対しワカメのほうは、何かの拍子に箸にひっかかってきたので食べる、ということが多い。
ワカメ料理はたくさんあるように思われるが、意外に少ない。
主流はやはりみそ汁といっても過言ではない。
もしみそ汁というものが無かったら、ワカメの今日はないということになる。
日本人とみそ汁、みそ汁とワカメ、この結びつけがワカメの今日をもたらしたのだ。
もしこの結びつけがなかったら、ワカメは「海底に生えているただの草」として、いまだに海の中で揺れているだけのものになっていたに違いない。