日本列島はいま鬱陶しい空気に覆われている。
コロナの暗雲、梅雨のじとじと、堪えがたい毎日。
日本には季節ものという一群の食べ物がある。
春は山菜、夏は西瓜、秋はサンマ、冬はおでん。
こう見ると梅雨にはこれ
という食べ物がない。
今からでも遅くはない、決めようではありませんか。
どうでしょうか、「梅雨の食べ物は冷やし中華」というのは。
冷やし中華は真夏に食べるより、今(梅雨の真っただ中)のほうが美味しい。
カッと照りつける真夏の暑い日より、ちょうど今のような少しジメジメしていて蒸し暑い日に食べると美味しい。
酢の刺激的な味と匂いが、湿った空気を振り払ってくれるのかもしれない。
冷やし中華には、これがほんまもんの冷やし中華だ、という基本形が曖昧だ。
本業のラーメンのほうは、スープは九州のどこそこの鰹節とアゴ出しで、昆布は日高で麺は北海道の小麦粉を使って、というような論議がされるが、冷やし中華ではそういうような話は一切出てこない。
冷やし中華で問題になってくるのは、具の盛りつけ方である。
デパ地下の冷やし中華
盛りつけの基本はハムを一本一本、きゅうりを一本一本隙間なく丁寧に並べ、富士山に模したものだ。
冷やし中華界に新風をもたらしたのがコンビニの冷やし中華だ。
コンビニの冷やし中華は基本的に具は別盛りだ。
プラスチックの丼状の容器にツユの袋と麺が入っていて、その上にフタ状の容器がかぶせてあって、そのフタの凹凸の一つ一つに具が入っている。
その上に本物のフタという仕組み。
これを食べるとき、みんなはどういうふうにして食べているのだろう。
具入れの皿をそのままわきに置いて別盛りで食べるか、ゴチャゴチャ雑然盛りでいくか。
いつも一分くらい悩んでしまう。
冷やし中華をそのまま食べるのではなくそこに新工夫。
冷やし中華に梅干しを加える、というのはどうでしょうか。
細かく千切った梅干しを振りかけて食べる。
口の中ますますさっぱり、すっきり、爽やか。
コロナもじとじともこれで解決。
梅雨という文字をよく見ると、「梅」の字があることを発見して、誰もが「冷やし中華には梅」ということに大きく頷くことになるのでした。