■小林りん氏のこと
今年8月、軽井沢にInternational School of Asia,Karuizawa(ISAK、アイザック)が開校した。ここは日本で初めての全寮制のインターナショナル・スクールで、「世界の格差と貧困を是正するために、社会を変革するリーダーを育てたい」と言う理念の下、数年をかけて日本の実業界や個人から寄付を募り、その理念に賛同した優秀な教師が世界中から集まって出来た高校だ。生徒の国籍もアジアを中心に遠くは南米チリからと多彩。まだ開校間もなく実績はないに等しいが、可能性が大いに期待される学校である。そこの代表理事が小林りん氏(39)なのである。
昨夜、テレビ東京の「カンブリア宮殿」に小林りん氏が出演し、ISAK開校の経緯が、出資金集めに奔走する姿を描いたイラストを始め、複数の関係者へのインタビューや開校式の模様、そして最近の授業風景の映像を交えて紹介された。日本の教育の現状を憂う一人として、小林氏の崇高な理念と卓越した行動力に、私は心を打たれた。
小林氏は本人曰く、多摩ニュータウンのごく普通の家庭に生まれ育ち、東京学芸大付属高校に入学するも日本の教育に疑問を感じ、中退して、カナダのインターナショナル・スクールへ入学する。そこで出会ったメキシコ人の友人に誘われるまま、夏休みに友人の母国メキシコを訪ねて、小林氏は大きな衝撃を受ける。
メキシコシティ郊外にある友人の実家は、15畳ほどのスペースに大家族が暮らす貧しい家庭だった。奨学金を得てカナダに学ぶ友人と、優秀であるにも関わらず自動車整備工として働くその兄。日本では何不自由なく教育を受けられる一方で、世界では難しい現実があることを、小林氏は友人を通して初めて肌で感じだのだった。
(尤も、ビンボーな家庭で育ち、大学進学もままならなかった私から見れば、時代や地域の違いもあるのかもしれないが、高校で私費留学した小林氏は、日本でも比較的恵まれた家庭のお嬢さんだったのではと思う。だからこそメキシコでの体験が、より強烈に感じられたのではないか?
大学入学前に自発的にそれまでの学校教育とは異なった社会体験をすることで、自分が「なぜ、大学で学ぶのか」「大学で何を学ぶのか」を明確に意識し、大学入学へのモチベーションを高めると言う意味では、欧米諸国の大学にあるギャップ・イヤー制度<入学前に認められた1年間の遊学期間>と同様の効果を、留学経験で小林氏は得たのだろう。そして、自身の経験を、ISAKの教育の中でも実践しようと試みているようだ。)
後に小林氏は東大経済学部(開発経済研究の中西ゼミ)に進学し、卒業後は外資系証券会社勤務を経て、スタンフォード大学で(国際教育政策学)修士号を取得すると、30歳でユニセフ職員となり、フィリピンに赴任。そこでストリート・チルドレンに遭遇し、再び世界の貧困と格差に愕然としたのだった。
こうして高校時代、ユニセフ職員時代と、2度も世界の厳しい現実を目の当たりにした小林氏は、日本に帰国後、「世界の貧困と格差を是正する為には、社会を変化するリーダーの養成が必要だ」との考えに至り、インターナショナル・スクールの設立を決心するのである。
そして、ある企業から20億円の出資を取り付けた矢先、リーマン・ショックが世界経済を直撃し、資金計画はあえなく頓挫する(←これはもしかしたら、神によって、彼女の本気度が試されたのかもしれないね)。再び、資金集めにゼロからのスタートであったが、国内外で厳しい経済状況の中、その崇高な理念には賛同してくれても、何の実績もない彼女に出資してくれる企業は皆無だった。途中で妊娠・出産も経験しながら、彼女は資金集めに奔走する(なんと2,500人に寄付依頼したと言う)。
結局、転機は地道な努力から訪れた。起死回生の策で、ISAKの理念を浸透させるべく開催したサマースクールが、回を追うごとに参加した子供達や招かれた講師からも好評を博し、実績として評価されたのだ。以後はマスコミでも彼女の活動は大きく取り上げられ、企業が彼女を見る目も変わった。さらに学校経営を財政面からサポートしようと、彼女の心意気に惚れ込んだ経済・経営のプロ達が、無償でファイナンス委員会を立ち上げた。そして漸く、今夏の開校へとこぎ着けたのだ。
小林氏は言う。
「私はあくまでも裏方です。教育現場はやはり教師と生徒が主役。教師とは自身の経済的利益を度外視して、何より子ども達の成長を目の当たりにすることに感動を覚えられる人達です。そもそも働く目的が金儲けの人は、教師と言う職業を選ばないでしょう。しかもISAKは、教師が理想として思い描く学校の立ち上げにゼロから参加できるのが魅力だったようで、世界中から優秀な教師が集まってくれました」
実際、マレーシアから来た数学教師は「ISAKに赴任して収入は3割減となったが、悔いはない。(ISAKに来たことは)自分にとってはチャレンジだ」と話す。
出資者には何の見返りもないにも関わらず、サマースクール成功後の4年間で14億円の寄付が集まった。軽井沢の別荘地にある7,500坪もの広大な校地も、開校の理念に賛同した企業が格安で貸してくれたものだ。
「この学校は皆さんの貴重な寄付から成り立っている。ですから一円たりとも無駄にはできないのです。」番組中、小林氏はこの言葉を何度も繰り返していた。多くの人々の善意への感謝の思いと、その期待に全力で応えようとの覚悟が、彼女の笑顔の中にも凜とした佇まいから、こちらにも十分伝わって来た。
ISAKは奨学金制度もユニークだ。例えば、校舎の屋根一面に太陽光パネル(←これも寄付らしい)を設置し、それによって得た電力を売ることで、生徒1人分の奨学金を賄うと言う。学校のホームページでは「すべての生徒が、その経済環境に関わらず教育を受ける権利を守りたい」と宣言し、企業や個人からの奨学金を募っている。
小林氏が学校を立ち上げる直接のきっかけとなった国フィリピンから来た女子生徒も、奨学金を得ての入学だ。その女子生徒が「私はこうして学びの機会を与えられたから、まだ恵まれている方なの。いつか恩返しがしたいわ。その為に、この学校で、貧しい人達を救う、社会を変える方法を学びたいの」と、目を輝かせながら語る姿が印象的だった。
奨学金はそれぞれの生徒の必要に応じて支給され、返済の義務はないと言う。学費は年間350万円で、初年度は他に施設費、入学金で納付金は400万円を超え、けっして安くはないが、生徒の56%が奨学金制度を利用しているらしい。
番組では逐一、心に刺さる言葉が小林氏の口から発せられ、ここで実況中継したいくらいだ。
「英語力はもちろん大事なツールだが、それよりも"リーダーシップの能力"や"好奇心"、"多様性を受け入れる感受性"を見て、生徒を選考している」
「高校にしたのは、15,6歳までに母国語で本を読んだり文化に触れたりして、アイデンティティが固まった後に入学して貰い、生徒達には、そのアイデンティティのぶつかり合いの中で、多様性を学んで欲しいと考えたからだ。それを学ぶ絶妙なタイミングは、大学に入る前の高校をおいて他にない。」
「何世代にも渡る固定化した貧困と格差、そして汚職、さらに、そのことに何ら関心を持とうとしないごく一握りの富裕層を、フィリピンで目の当たりにして、貧困層教育と同時に、社会構造を根本から変えなくては、貧困や格差はいつまで経っても是正されないと確信した。その為には政界、財界の中にもチェンジメーカー(変革者)が必要だ。その育成が重要だと考えた」
「ISAKの教育の基本は、正解そのものを教えるのではなく、考える為の方法を教える。常に議論することを通して、さまざまな視点から、ひとつの事実を見るように仕向け、立場が変われば見方も変わることを体験的に学ばせたい。どの単元も『なぜ、勉強しているのか』分かるように、できるだけ身近なことに紐付けてゆくことが大事だと思う。そうした教育を実践するには、教師の力量が大きく問われるので、ISAKの教師達は(元々優秀な上に)物凄く勉強している。」
「このプロジェクトに関わる中で、出産を経験したことは自分にとって良かった。それまで自分の高校時代の原体験に近づけて考えていたことが、子供を持って以後は、「次世代」や「子ども達が大人になった時の社会はどうなっているのだろう」とシフトして行った。「次世代は」と言う言葉が物凄く実感を持って感じられるようになった」
番組が用意した3人のリーダー像(スティーブ・ジョブズ、チェ・ゲバラ、ガンジー)のフリップを前に
「ISAKが育てたい人材とは、学校での3年間、自分自身と真摯に向き合うことを全ての学びの基礎として、『自分がアプローチしたい課題は何なんだろう?』『自分のどういうところ(力)を発揮して、どうやって解決して行くのか』考えて行った結果、将来的に三者の何れかにもなり得る人材だと考えている。リーダーとは結果的になるもの、ではないか?」
番組MCを務める作家の村上龍氏は「編集後記」として以下のように綴っている。
「教育」を考えると、途方に暮れることがある。
課題が多く、それらは複雑に絡み合っていて、
全体的な解は闇の彼方にあって見えない、
ときおりそんな気持ちになる。
小林さんは、
「やりたいこと」「やるべきこと」を、
貧困と格差を是正するためのリーダー育成という目標に絞り込み、
「やれること」を模索しながら、
ISAKという
きわめてユニークな教育機関を創設した。
開校したばかりなので、当然まだ実績のようなものはないが、
成功してほしいと強く願っている。
人材の輩出に限らず、
ISAKの「理念」と「ネットワーク」が広がっていって、
モデルが確立されていけば、
日本の教育への正のフィードバックが起こる
そう確信しているからだ。
ひとりの女性の熱意が多くの人々の共感を呼んで実現した、この生まれたばかりの学校は、日本の学校教育の在り方に一石を投じてくれそうだ。
小林りん氏はISAKの創設を通して、より良い社会を築きたいと言う私心のないポジティブな理念と、どんな困難にぶつかろうと理想に向かって進み続ける強い意志があれば、人は自ずとついて来る~そんなリーダーシップの理想的な在り方を体現したと言える。
彼女自身が、既に堂々たるチェンジ・メーカーである。
【2014.12.5 追記】
小林りん氏が、『日経ウーマン』誌が選ぶ「ウーマン・オブ・ザ・イヤー 2015」の大賞に選ばれました!この賞は社会で活躍する女性を顕彰するもので、今回で16回目を数える栄えある賞です。小林さん、おめでとうございます!
今年8月、軽井沢にInternational School of Asia,Karuizawa(ISAK、アイザック)が開校した。ここは日本で初めての全寮制のインターナショナル・スクールで、「世界の格差と貧困を是正するために、社会を変革するリーダーを育てたい」と言う理念の下、数年をかけて日本の実業界や個人から寄付を募り、その理念に賛同した優秀な教師が世界中から集まって出来た高校だ。生徒の国籍もアジアを中心に遠くは南米チリからと多彩。まだ開校間もなく実績はないに等しいが、可能性が大いに期待される学校である。そこの代表理事が小林りん氏(39)なのである。
昨夜、テレビ東京の「カンブリア宮殿」に小林りん氏が出演し、ISAK開校の経緯が、出資金集めに奔走する姿を描いたイラストを始め、複数の関係者へのインタビューや開校式の模様、そして最近の授業風景の映像を交えて紹介された。日本の教育の現状を憂う一人として、小林氏の崇高な理念と卓越した行動力に、私は心を打たれた。
小林氏は本人曰く、多摩ニュータウンのごく普通の家庭に生まれ育ち、東京学芸大付属高校に入学するも日本の教育に疑問を感じ、中退して、カナダのインターナショナル・スクールへ入学する。そこで出会ったメキシコ人の友人に誘われるまま、夏休みに友人の母国メキシコを訪ねて、小林氏は大きな衝撃を受ける。
メキシコシティ郊外にある友人の実家は、15畳ほどのスペースに大家族が暮らす貧しい家庭だった。奨学金を得てカナダに学ぶ友人と、優秀であるにも関わらず自動車整備工として働くその兄。日本では何不自由なく教育を受けられる一方で、世界では難しい現実があることを、小林氏は友人を通して初めて肌で感じだのだった。
(尤も、ビンボーな家庭で育ち、大学進学もままならなかった私から見れば、時代や地域の違いもあるのかもしれないが、高校で私費留学した小林氏は、日本でも比較的恵まれた家庭のお嬢さんだったのではと思う。だからこそメキシコでの体験が、より強烈に感じられたのではないか?
大学入学前に自発的にそれまでの学校教育とは異なった社会体験をすることで、自分が「なぜ、大学で学ぶのか」「大学で何を学ぶのか」を明確に意識し、大学入学へのモチベーションを高めると言う意味では、欧米諸国の大学にあるギャップ・イヤー制度<入学前に認められた1年間の遊学期間>と同様の効果を、留学経験で小林氏は得たのだろう。そして、自身の経験を、ISAKの教育の中でも実践しようと試みているようだ。)
後に小林氏は東大経済学部(開発経済研究の中西ゼミ)に進学し、卒業後は外資系証券会社勤務を経て、スタンフォード大学で(国際教育政策学)修士号を取得すると、30歳でユニセフ職員となり、フィリピンに赴任。そこでストリート・チルドレンに遭遇し、再び世界の貧困と格差に愕然としたのだった。
こうして高校時代、ユニセフ職員時代と、2度も世界の厳しい現実を目の当たりにした小林氏は、日本に帰国後、「世界の貧困と格差を是正する為には、社会を変化するリーダーの養成が必要だ」との考えに至り、インターナショナル・スクールの設立を決心するのである。
そして、ある企業から20億円の出資を取り付けた矢先、リーマン・ショックが世界経済を直撃し、資金計画はあえなく頓挫する(←これはもしかしたら、神によって、彼女の本気度が試されたのかもしれないね)。再び、資金集めにゼロからのスタートであったが、国内外で厳しい経済状況の中、その崇高な理念には賛同してくれても、何の実績もない彼女に出資してくれる企業は皆無だった。途中で妊娠・出産も経験しながら、彼女は資金集めに奔走する(なんと2,500人に寄付依頼したと言う)。
結局、転機は地道な努力から訪れた。起死回生の策で、ISAKの理念を浸透させるべく開催したサマースクールが、回を追うごとに参加した子供達や招かれた講師からも好評を博し、実績として評価されたのだ。以後はマスコミでも彼女の活動は大きく取り上げられ、企業が彼女を見る目も変わった。さらに学校経営を財政面からサポートしようと、彼女の心意気に惚れ込んだ経済・経営のプロ達が、無償でファイナンス委員会を立ち上げた。そして漸く、今夏の開校へとこぎ着けたのだ。
小林氏は言う。
「私はあくまでも裏方です。教育現場はやはり教師と生徒が主役。教師とは自身の経済的利益を度外視して、何より子ども達の成長を目の当たりにすることに感動を覚えられる人達です。そもそも働く目的が金儲けの人は、教師と言う職業を選ばないでしょう。しかもISAKは、教師が理想として思い描く学校の立ち上げにゼロから参加できるのが魅力だったようで、世界中から優秀な教師が集まってくれました」
実際、マレーシアから来た数学教師は「ISAKに赴任して収入は3割減となったが、悔いはない。(ISAKに来たことは)自分にとってはチャレンジだ」と話す。
出資者には何の見返りもないにも関わらず、サマースクール成功後の4年間で14億円の寄付が集まった。軽井沢の別荘地にある7,500坪もの広大な校地も、開校の理念に賛同した企業が格安で貸してくれたものだ。
「この学校は皆さんの貴重な寄付から成り立っている。ですから一円たりとも無駄にはできないのです。」番組中、小林氏はこの言葉を何度も繰り返していた。多くの人々の善意への感謝の思いと、その期待に全力で応えようとの覚悟が、彼女の笑顔の中にも凜とした佇まいから、こちらにも十分伝わって来た。
ISAKは奨学金制度もユニークだ。例えば、校舎の屋根一面に太陽光パネル(←これも寄付らしい)を設置し、それによって得た電力を売ることで、生徒1人分の奨学金を賄うと言う。学校のホームページでは「すべての生徒が、その経済環境に関わらず教育を受ける権利を守りたい」と宣言し、企業や個人からの奨学金を募っている。
小林氏が学校を立ち上げる直接のきっかけとなった国フィリピンから来た女子生徒も、奨学金を得ての入学だ。その女子生徒が「私はこうして学びの機会を与えられたから、まだ恵まれている方なの。いつか恩返しがしたいわ。その為に、この学校で、貧しい人達を救う、社会を変える方法を学びたいの」と、目を輝かせながら語る姿が印象的だった。
奨学金はそれぞれの生徒の必要に応じて支給され、返済の義務はないと言う。学費は年間350万円で、初年度は他に施設費、入学金で納付金は400万円を超え、けっして安くはないが、生徒の56%が奨学金制度を利用しているらしい。
番組では逐一、心に刺さる言葉が小林氏の口から発せられ、ここで実況中継したいくらいだ。
「英語力はもちろん大事なツールだが、それよりも"リーダーシップの能力"や"好奇心"、"多様性を受け入れる感受性"を見て、生徒を選考している」
「高校にしたのは、15,6歳までに母国語で本を読んだり文化に触れたりして、アイデンティティが固まった後に入学して貰い、生徒達には、そのアイデンティティのぶつかり合いの中で、多様性を学んで欲しいと考えたからだ。それを学ぶ絶妙なタイミングは、大学に入る前の高校をおいて他にない。」
「何世代にも渡る固定化した貧困と格差、そして汚職、さらに、そのことに何ら関心を持とうとしないごく一握りの富裕層を、フィリピンで目の当たりにして、貧困層教育と同時に、社会構造を根本から変えなくては、貧困や格差はいつまで経っても是正されないと確信した。その為には政界、財界の中にもチェンジメーカー(変革者)が必要だ。その育成が重要だと考えた」
「ISAKの教育の基本は、正解そのものを教えるのではなく、考える為の方法を教える。常に議論することを通して、さまざまな視点から、ひとつの事実を見るように仕向け、立場が変われば見方も変わることを体験的に学ばせたい。どの単元も『なぜ、勉強しているのか』分かるように、できるだけ身近なことに紐付けてゆくことが大事だと思う。そうした教育を実践するには、教師の力量が大きく問われるので、ISAKの教師達は(元々優秀な上に)物凄く勉強している。」
「このプロジェクトに関わる中で、出産を経験したことは自分にとって良かった。それまで自分の高校時代の原体験に近づけて考えていたことが、子供を持って以後は、「次世代」や「子ども達が大人になった時の社会はどうなっているのだろう」とシフトして行った。「次世代は」と言う言葉が物凄く実感を持って感じられるようになった」
番組が用意した3人のリーダー像(スティーブ・ジョブズ、チェ・ゲバラ、ガンジー)のフリップを前に
「ISAKが育てたい人材とは、学校での3年間、自分自身と真摯に向き合うことを全ての学びの基礎として、『自分がアプローチしたい課題は何なんだろう?』『自分のどういうところ(力)を発揮して、どうやって解決して行くのか』考えて行った結果、将来的に三者の何れかにもなり得る人材だと考えている。リーダーとは結果的になるもの、ではないか?」
番組MCを務める作家の村上龍氏は「編集後記」として以下のように綴っている。
「教育」を考えると、途方に暮れることがある。
課題が多く、それらは複雑に絡み合っていて、
全体的な解は闇の彼方にあって見えない、
ときおりそんな気持ちになる。
小林さんは、
「やりたいこと」「やるべきこと」を、
貧困と格差を是正するためのリーダー育成という目標に絞り込み、
「やれること」を模索しながら、
ISAKという
きわめてユニークな教育機関を創設した。
開校したばかりなので、当然まだ実績のようなものはないが、
成功してほしいと強く願っている。
人材の輩出に限らず、
ISAKの「理念」と「ネットワーク」が広がっていって、
モデルが確立されていけば、
日本の教育への正のフィードバックが起こる
そう確信しているからだ。
ひとりの女性の熱意が多くの人々の共感を呼んで実現した、この生まれたばかりの学校は、日本の学校教育の在り方に一石を投じてくれそうだ。
小林りん氏はISAKの創設を通して、より良い社会を築きたいと言う私心のないポジティブな理念と、どんな困難にぶつかろうと理想に向かって進み続ける強い意志があれば、人は自ずとついて来る~そんなリーダーシップの理想的な在り方を体現したと言える。
彼女自身が、既に堂々たるチェンジ・メーカーである。
【2014.12.5 追記】
小林りん氏が、『日経ウーマン』誌が選ぶ「ウーマン・オブ・ザ・イヤー 2015」の大賞に選ばれました!この賞は社会で活躍する女性を顕彰するもので、今回で16回目を数える栄えある賞です。小林さん、おめでとうございます!