はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

10年物と20年物

2007年11月14日 | 日々のよしなしごと
 私は暑がりなので季節を問わず小ぶりのうちわを持ち歩いている(折りたたみできる扇子の方が見た目エレガントなんだろうけど、扇子の風では物足りない私(^_^;))。外気温に合わせて服を着ると、移動で早歩きをして屋内に入った時、思いの外暑かったりするからだ。

 愛用のうちわは10年程前の夏に沖縄に行った時にANAの機内で貰ったものだが、これがイマドキのサービス品のうちわとは違って骨が強固で、かなりしっかりした作りになっている。さすがに貼り紙部分は色褪せているが、年季が入っている割には現役バリバリの状態なのである。

 それを不覚にも今日映画館の座席に忘れてしまった。20分後にそのことに気付いて、「映画館に戻って取って来ようか」「でも他人から見たら、くたびれたサービス品だからもう捨てられているかもしれないな」と一瞬迷ったが、やはり愛着があるので映画館に戻ってみた。

 ロビーでキビキビと働いていた若い男性スタッフに声をかけると、彼の肩越しに入場口のボックスに立てかけられているうちわが見えた。
「通常なら捨てるのですが、このうちわを見るとたぶん大事に使っているんだろうなと思って取っておいたんですよ」
とその青年が笑いながら、私に返してくれた。他人から見たら古びたサービス品のうちわを取り戻しに来たことに気恥ずかしさを覚えながらも、彼の気遣いが嬉しかった。もしかしたら、うちわの図柄が若き日の本上まなみの写真なので、彼女の熱狂的ファンのお宝グッズだと思われたのかもしれない(笑)。

 
 小学生の時、雑誌主催の作文コンクールに入賞した副賞に万年筆を貰った。小学生からしたら万年筆は随分と大人びた筆記用具で、使い始めはドキドキしたものだ。しかし安手のものだったからか、或いは私の使い方が悪かったからなのか、数年でペン先が潰れてしまった。

 その後大人になってから、自らの就職祝いに、初めての給料でドイツ・モンブラン社製の万年筆を買った。当時で1万円以上はしたと思う。大人になった記念に、きちんとした物をと思って選んだ品だ。ということで、これは20年物。独身時代は愛用していたが、結婚後は道具箱にしまったままになっていた。それが映画「クローズドノート」で万年筆が小道具として登場したことに懐かしさを覚えて、久々に取り出してみた。インクはとっくになくなっている。ペン先はまだ健在に見えるが果たして使えるかどうか。丸善の万年筆コーナーでカートリッジ(←この型が20年経っても不変と言うのも嬉しい。商品としての完成度の高さの証だろう。これがブランドの持つ力か。商品によってはモデルチェンジで旧型が使えなくなることが少なくないので、これは消費者にとって嬉しいこと。他にヨーロッパの陶磁器ブランドなどが定番商品を長年に渡って作り続けているのも、セット購入で一部が破損しても、いつでも新たに買い足せると言う利便性の面で素晴らしいと思う)を買って来て取り付けてみたら、最初はなかなかインクが出て来なかったものの、しばらくペン先を走らせるうちにインクがペン先からしみ出て来た。久しぶりの万年筆。運筆がぎこちない。でもワクワクする。小学生の時に初めて万年筆を手にした時の興奮が思い出された。

 それぞれに長い付き合いがあり、愛着がある。そんな品物のひとつやふたつ、誰にでもあるのでしょうね。

 そう言えば、愛用のブリジストン社製ママチャリも14年目。価格的には買った当時3万円前後の中級品。その後に2万円弱で購入した同じブリジストン社製の夫の自転車が使用3~4年でハンドルが折れんばかりに錆びて使用不能になったのに、私のママチャリは(さすがに最近になってハンドル部分が錆び始めたものの)未だ現役である。理由は構造駆体がしっかりしているからだ。不思議なことにこの13年の間にちょこちょこ買い換えた部品~ベルやタイヤや鍵など~は持ちが悪くてすぐに壊れたり錆びたりしている。同じブリジストン社製でも、私のママチャリは日本の工場で作られた物だが、夫の安価な自転車や買い換えた部品(←店にそれしか置いていないのだ)はすべて中国の工場製品。今では自転車も4万円台後半以上の価格帯の商品でなければ、日本製にはお目にかかれないのだろう。

 ほんの10年前までは「安くて良い物」が当たり前のように手に入っていたはずなのに、今では「安かろう悪かろう」の日本になってしまった。モノ作りに誇りを持っていた日本が、他の国と同じになってしまった。日本が経済大国になり、高コスト国家になってしまったが故に、世界規模のコスト競争に勝ち抜くことに汲々として、モノ作りの原点がなおざりにされた結果なんだろう。
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