医学生理学賞に次いで物理学賞でも日本の科学者がノーベル賞の共同受賞者になった。そのニュースを伝える日本の新聞――といっても、年金生活に入った今では購読する新聞は朝日新聞だけになったので、具体的には朝日新聞の事だが――の記事には、がっかりさせられた。
たとえば、10月7日朝刊1面トップの受賞記事だが、リード部分で「スウェーデン王立科学アカデミーは6日、今年のノーベル物理学賞を東京大学宇宙線研究所の梶田隆章教授ら2氏に送ると発表した」とあるにもかかわらず、以後1面本記は梶田教授に関わる事ばかりを説明し、ようやく記事の終わりの部分で共同受賞者であるカナダ・クイーンズ大学名誉教授のアーサー・マクドナルド名誉教授の名前と業績が短く紹介されただけである(記事の行数にして7行ほど)。
つまり、日本人以外の人が受賞すれば新聞記事としての値打と扱いはこの程度ということなのであろう。それが、受賞者が日本人となれは、日本人が単独受賞したのかと錯覚するほど、記事が一気にインフレーションを起す。ちなみに、カナダの『トロント・スター』を電子版で読むと、こちらは逆に、マクドナルド教授におおいに焦点を当てた記事になっている(ただし、日本の朝日新聞ほど他の共同受賞者を無視しているわけではない)。日本人は日本人以外に興味がなく、カナダ人はカナダ人以外に興味がない、というのがこれらのメディアのスタンスなのであろう。
ノーベル賞もオリンピックと同じメダル争いだから当然のことなのであろうが。
そこで、受賞者の国籍に関係のない第3国の新聞――たまたまジャカルタの英語日刊紙『ジャカルタ・ポスト』――をそのサイトで見たのだが、記事はAPを使い、共同受賞した両氏の業績をバランスよく淡々と紹介していた。それで十分だ。
(2015.10.7 花崎泰雄)