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ユネスコ分担金

2015-10-15 17:31:27 | Weblog

ユネスコが南京事件の資料を記憶遺産として登録すると決定したことで、日本国政府・与党の幹部が憤慨し、ユネスコへの分担金支払いを停止すべきだと、と言っている。

大人げない話である。

ユネスコの世界遺産リストに載った名前など、知っているのは当事国の人や一部好事家くらいだろう。指定されて、一定の時間が過ぎてからもなお喜び続けているのは、観光関連の仕事に携わっている人たちくらいであろう。

東寺百合文書が記憶遺産に登録されたが、日本人のうちどのくらいの人がこの古文書について知っていただろうか。その古文書を仕事に役立てている人にとっては、記憶遺産のお墨付きをもらったからといって、仕事のステータスが上がるわけでもないだろう。

ユネスコの遺産などその程度のものである。分担金支払いをやめるなら、合わせてこれまでに指定や登録を受けたユネスコの「遺産」をつき返して抗議する手もある。

小泉首相は2006年の南京大虐殺に関する答弁書で「千九百三十七年の旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害又は略奪行為等があったことは否定できないと考えている」と述べた。

「非戦闘員の殺害又は略奪行為等があった」のだが、南京事件の記録文書のユネスコ記憶遺産登録はけしからんと言っているのだ。

中国では30万人虐殺説が支持されている。日本ではそれは法外な数字だとされている。10万程度、数万程度、せいぜい数千、南京事件などなかった、などの諸説が日本では流通している。

日本国政府の最高責任者が国会の答弁書で「あったことは否定できない」と明言した一方で、現在の日本国政府が不満を表明するのは、その殺害・略奪等の規模が問題なのであろう。

恥辱の大きさは残虐行為の規模に比例するか?

アメリカ合衆国がベトナムで戦争を続けていた1968年に、W. カリー中尉が率いる米陸軍歩兵小隊が、ソンミ村の集落を襲い、住民500人余を殺した。この事件はやがて暴露され、ソンミ事件として、ベトナム戦争の推移に大きな影響を与える世界的なスキャンダルになった。19世紀の終わり、アメリカ合衆国の第7騎兵隊がウーンディッド・ニーでネイティブ・アメリカン(当時はインディアンとよばれていた)200-300人を殺した事件以来の米軍による大規模な非戦闘員の虐殺事件だった。

(2015.10.15 花崎泰雄)

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