日本の大相撲ではいったん横綱になってしまえば、あとは引退するしかない。成績不良なら大関や関脇に番付をさげて捲土重来、というわけにはいかない。相撲の番付も横綱以外はプロテニスの世界ランキングのように上がったり下がったりするが、横綱になると、降格したくてもそれはできない相談なのだ。
アメリカの大統領も憲法によって一生に2期8年しか務めることができない。バラク・オバマ前大統領はトランプ現大統領より若くまだ50代だが、若くして米国大統領を2期8年務めたので、もはや大統領になる機会はない。
日本の安倍首相はかつて首相在任中に参院選での大敗と体調不良を理由に政権を投げ出したことがあるが、再チャレンジを合言葉にまた首相に返り咲いた。
ロシアのプーチン大統領は大統領の任期が一杯になると大統領をやめて首相になり、憲法を変えてまた大統領になった。
中国では国家主席の任期を「2期10年」と決めていたが、2018年の全人代が憲法からこの条文を削除したことで、理論上、習主席の終身国家主席の道が開けた。
一般庶民の再チャレンジはOKだが、権力のヒエラルキーの頂上付近にたむろする人々の再チャレンジにはうんざりする。政治権力については「長きを以て貴し」としない。安倍政権下の森友問題、加計問題、官僚の忖度・へつらいなど、弊害が多い。
ソロンはアテナイの政治改革を終えると、さっさと10年間の旅に出て、アテナイを留守にした、とヘロドトスは『歴史』に書いている。
(2019.1.16 花崎泰雄)